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第一話 祝賀会の裏切り

「――喰らえ、奥義《ソウルキャリバー》ッ!!」


勇者・赤羽活流が振るった聖剣が、魔王の胸を貫く。


次の瞬間、魔王城全体を揺るがす轟音と共に、魔王の巨体は黒い粒子となって崩れ去った。


静寂が訪れる。


そして――。


「勝った……。」


聖女・目黒恵美がその場に座り込み、大粒の涙を流す。


「やっと終わったな。」


剣聖・渋谷武史は大剣を地面へ突き立て、大きく息を吐いた。


「これで故郷へ帰れるかもしれませんね。」


賢者・池袋進も安堵の表情を浮かべる。


誰もが疲れ切っていた。


だが、その中で一人だけ、冷静に戦場を見渡す青年がいた。


サポーター佐伯悠真。


「みんな、お疲れ。」


その一言に、四人は笑顔を見せる。


彼らは知らない。


この戦いで最も危険だったのは魔王ではなく、この青年だったことを。


悠真の固有スキル《千差万別》。


他者の能力、魔法、剣技、固有スキルまでも完全にコピーし、自分のものとして扱える世界唯一の能力。


さらに女神の加護によって、その力に限界はない。


勇者の聖剣技。


剣聖の剣術。


賢者の超位魔法。


聖女の神聖魔法。


そのすべてを悠真は使える。


だからこそ――。


本当は、悠真一人でも魔王は倒せた。


しかし彼は仲間の功績を奪わなかった。


「みんなで勝った方が嬉しいから。」


それが佐伯悠真という人間だった。


◇◇◇


魔王討伐から七日後。


王都アストリア。


世界中の王族、貴族、騎士団長、教会関係者が集まる盛大な祝賀会が開かれていた。


「勇者様、万歳ッ!!」


「英雄様だッ!!」


「世界を救ってくださりありがとうございますッ!!」


城中が歓声に包まれる。


活流たちは次々と祝福を受けていた。


悠真も多くの人から感謝される。


「ようやく終わったな。」


悠真はワイングラスを片手に、小さく笑う。


「日本に帰れるかな……。」


そんな未来を信じていた。


だが、その頃。


王城地下。


巨大な魔法陣の前で、王と各国首脳、教皇が集まっていた。


「準備は整いました。」


「古代封印魔法陣も完成しております。」


「対象を中心へ誘導してください。」


王が静かに頷く。


「世界のためだ。」


教皇も目を閉じる。


「あの男は強すぎる。」


「いずれ第二の魔王となる。」


誰も反対しなかった。


その場には、勇者たち四人の姿もあった。


活流は苦しそうに拳を握る。


「……本当にこれしかないんですか。」


「世界を守るためだ。」


王の言葉に、誰も何も言えなかった。


◇◇◇


「悠真、ちょっと来てくれ。」


活流に呼ばれ、悠真は地下へ向かう。


「どうした?」


「王様から褒美があるらしい。」


「そうなんだ。」


疑う理由など、一つもなかった。


目の前にいるのは、命を預け合った仲間なのだから。


部屋の中央。


そこには美しい紋様が描かれた巨大な魔法陣。


「ここに立ってくれ。」


「これが褒美?」


「……ああ。」


悠真は笑顔で魔法陣へ足を踏み入れた。


その瞬間。


ギィィィィィンッ!!


黄金色の光が天井まで伸びる。


「なっ!?」


魔法陣が起動した。


幾重にも重なる鎖が悠真の全身へ巻き付く。


「封印開始。」


王の声が響く。


「《千差万別》を封印。」


「女神の加護を封印。」


「使い魔を封印。」


「記憶封印。」


「能力値低下呪詛。」


「魔力枯渇。」


「生命力減衰。」


次々と術式が発動する。


「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」


全身を焼かれるような激痛。


体中から力が抜けていく。


「活流……?」


震える声で親友を見る。


勇者は目を逸らした。


恵美は涙を流している。


武史は歯を食いしばり。


進は何も言わない。


「……どうして。」


返事はない。


王が冷たく告げる。


「佐伯悠真。」


「貴様は危険すぎる。」


「世界平和のため、永久追放とする。」


「そんな……。」


「安心したまえ。君だけ送るわけじゃない!危険人物は魔界によく送っているのだよ!」


巨大な転移魔法陣が展開される。


悠真は力なく笑った。


「俺……世界を救ったんだよな……。」


誰も答えない。


光が視界を覆う。


意識が薄れていく。


最後に見えたのは。


泣き崩れる恵美と、最後まで目を合わせなかった親友・赤羽活流の姿だった。


――そして本当の英雄は、世界から消えた。


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