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第五話 違和感

餐界って何なんでしょうね

次回は多分戦闘です

―惑星海皇都、横瀬区。

市街地から離れた沿岸部には、倉庫や宇宙港などの軍事施設が立ち並んでいる。その一角に統合司令部はあった。軍事施設というよりも庁舎のような外観をしたその建物の6階に、ほとんど総司令の私室と化している執務室はあった。


「…やっぱり、嫌な感じだな」

式典からの帰路の途中で届いていた、乙七任務部隊からの戦闘報告書に目を走らせながら、アスーイはそう漏らす。

「というと?」

執務机の正面、応接用に向かい合うように置かれた2台のソファ。その奥側、つまりアスーイの顔が見える位置に腰かけていた天翔が先を促す。

人間の直感や違和感を言語化し、再現性のある推論にするのも彼女たちサブフレームの役割だ。少なくとも天翔自身はそう認識している。

「…これまで連中の辞書には『撤退』という文字が存在していなかった。単純に群れで行動し見えるものを食い尽くそうとするだけで、そもそも生存を前提にしていたかすら怪しかった。」

端末から目を離し、前髪を弄りながら整理するようにアスーイは言葉をつなぐ。

「はい。これまでの詳報を整理する限り、それで間違いないかと」

天翔が静かに相槌を打つ。

「ただここ最近は違う。この詳報もそうだが、最近の連中の動きがおかしい。ちょっと戦ってすぐに逃げる、これを繰り返している…」

アスーイはいったん言葉を切り、視線を上へ向ける。

「威力偵察か…?」

「…現在確認されているデータでは、餐界に戦略性は確認されていません。」

天翔は一旦否定した後に、言葉を続ける。

「確かに相手によって戦い方を変えることはあるようですが、それは狩りの本能的なものであり、高度な思考は不可能である。というのがエルディア側含めた見解です」

餐界の情報の大半は、戦い続けていたエルディアからもたらされたものだ。

エストライがこれまで大きな損害を受けることはなかったのは、エルディア軍が血で書き残した記録のおかげである。


「ただな…」

アスーイは視線を天井と壁の境目に投げたまま、続ける。

「エルディアも餐界のことを全部知っていたわけではないはずだ」

「餐界が学習する…ということですか?」

「群れが学習している、というわけではないと思う」

短く首を振りながら、天翔の方に目線を向けて予測を述べる。

「背後に俺たちも、エルディアも知らない個体がいる可能性がある」

そう言って彼は椅子に座り直し、深く息をつく。

「中枢個体、あるいはブレインが存在するかもしれない、ということですか…」

天翔は推論と計算をしながら言葉を続ける。

「そう考えると確かにエルディア側の交戦記録を見る限り、最初期から目標をエルディア帝都に定めていたように思えます。本能だけというよりも、指揮を行う個体がいるというのはあり得るかと…」

彼女も総司令の方に目線を合わせる。

「仮に、本当に存在するなら…」

総司令はそう前置きした後に、仕事を始める。

「最初に接敵するのは第七だ、一転突破か陽動か、どちらにせよ警戒するに越したことはない。即応できる部隊のリストはあるか?」


天翔は一瞬目線をずらして、すぐに返す。

「今端末に送信しました、ひとまず付近の星系港で、即応待機中になっている部隊を中心にまとめてあります。」

その瞬間に手元の端末が通知音を鳴らす。確認すると、かご座方面の星系港に待機中の戦隊や任務部隊、あるいはその付近で移動中、演習中の部隊までまとめられていた。

「ありがとう、受け取った。追加で第二からいくつか涼雨(すずさめ)型を第七に回してほしい、第25と26巡洋戦隊を派遣させるように連絡してくれないか?護衛に三個駆逐隊も」

涼雨は砲戦火力を重視した重巡である。機動力も申し分なく、第二打撃艦隊の遊撃戦力として重宝されている。二個巡洋戦隊、8隻と護衛の三個駆逐隊12隻でもそこそこの制圧力を発揮してくれるだろう。

「了解しました。黒鯨(こくげい)に通達しておきます」

「もし陽動があるとするなら…」


アスーイがそこまで口に出したとき、突然机の内線電話が鳴った。受話器を取り、

「はい、こちら執務室、アスーイ」

と応じる。

「こちら司令部です。総司令、第七遊撃艦隊の蒼城から至急電です。ジルヨ星系で餐界の大部隊を確認、これより任務部隊を統合して迎撃に向かうそうです」

目つきが鋭くなり、受話器を握る手に力がこもる。

「わかった。すぐ司令部に降りる、ちょっと待っててくれ」

受話器を置き、天翔の方に向き直る。

「天翔、司令部に降りるぞ。第七が接敵したらしい、嫌な予感ほど当たるもんだな…」

と言いながら制帽をかぶり直す。

「了解しました。黒鯨にはもう連絡を入れましたが、行き先をジルヨ星系に変えておいた方がよさそうですね」

「任せる」

執務室を出て、エレベーターに向かいながらそんな会話をする。チンという音と共に扉が開く。

司令部は1階だ、一転突破か陽動なのか、はたまたただの気まぐれか、今はまだ判断がつかない。

ただ少なくとも今までの駆除とは違う、そんな漠然とした不安だけが残っていた。


オマケ


艦艇解説

涼雨《すずさめ》型砲撃重巡洋艦

全長:270m

武装:22cm三連装実体弾兼用集束炸裂型陽電子砲塔

   4基12門 (上部前方2基 後部1基 下部1基)

   垂直ミサイル発射管 計48セル

   (上部と下部に24セルずつ)

   80cm銛雷発射管 計12門

   (四連装旋回式発射管3基12門)

   13.2cm広角型連装集束徹甲式陽電子球状砲塔 

   両舷各1基2門

   多目的投射機 8基

   28mm連装対空間防御レーザー砲塔 16基

   艦載機搭載数1機

同型艦:16隻


砲戦火力を重視して設計された重巡洋艦

主に第二打撃艦隊に配属されており遊撃戦力としての働きを期待されている


主砲は戦艦級には貫徹力で劣る一方で

三連装砲の高い発射レートを生かした多数の目標に対する制圧力を持っており

軽装甲の敵に対してはかなりの打撃力を発揮する



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