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第三話 静かだった巡回

今回は哨戒任務のお話です

サブフレームは結構フリーダムに動きますね

こちらとしてもセリフを考えてるうちに勝手に想像が膨らむので便利なものです


ーー海皇都から遥か4000光年

エストライの国境より銀河外縁部側

かご座方向よりやや北部方面

第三警戒ライン ジルヨ星系


多数の衛星を従えた巨大ガス惑星、ジルヨⅣを背景に二隻の小型艦が進んでいく。

「暇〜」

そのうちの一隻、駆逐艦深霧の艦橋に少女の声が響く。

「せめて1時間は我慢しろ、偵察始めて30分も経ってないぞ。」

しょうがない奴だなと、艦長席の男性が声をかける。

「だって何にもないじゃんここ~」

この艦のサブフレーム、深霧は頭の後ろで手を組んで口をとがらせながら文句を言う。

特に駆逐艦のサブフレームは関わる人数が少なく関係が密なのか、かなり感情豊かな個体が多い。

「なんかあったらまずいからこうやって見てるんだよ…」

センサー関係の設定を弄りながら、戦術士が呆れ顔で答える。

「まあ深霧の言いたいこともわかるけどな〜 偵察というか巡回みたいなもんだし」

航海長は操縦桿を握ったままそう言った。

ある程度航路は決まっているので操艦は楽なものだ。

「…もうすぐで星系外縁に到着します」

とりあえず会話を静観していたレーダー手が報告する。

そろそろ針路を変える頃合いだ、いつの間にかあの巨大なガス惑星はかなり小さくなっていた。

「僚艦の花霧に連絡、回頭、底舵40 外縁部を周回して戻るぞ。」

艦長はブリーフィングで決まった航路に従って、進路を変えるように指示を出す。

「ヨーソロー」

航海長が底舵を取る、星々が下から上へ流れていくように見えた。

「深霧から花霧へ 逐次回頭 底舵40、グルーっと回って帰るって」

深霧が斜め後ろの僚艦に連絡する。

サブフレーム同士の通信だと気楽なものだ。特に近距離であれば本当に会話のようにやり取りできる。

『了解』

花霧からの返答が帰ってくる、と同時に花霧も舵を下げて追従してきた。

「通信長、分艦隊と定期連絡を取ってくれ。」

回頭が終わると艦長が通信長に言った。

「了解。深霧より白霧、深霧より白霧、こちらは星系外縁部に到達し旋回済み、異常は見受けられない、そちらの状況を報告されたし。」

長距離の通信であればサブフレーム同士の、ほぼ会話のような手段は使えない。

相変わらず周波数を変えながら、いろいろ通信をするというのは人の仕事として残っている。

『こちら第721駆逐隊分艦隊、白霧。こちらもまもなく星系外縁部に到達する、今のところ異常なし。以上。』

白霧の通信士から返信が来る、向こうも特に変化はないようだ。

「何もないのが一番だけど、ないとないでなんか嫌な感じだよね…」

深霧がため息をつきながら漏らす。

「お前はいったいどうしたいんだよ」

航海長が苦笑しながら突っ込む。

サブフレームとの関係は艦隊や個人個人によって違うものの、

同僚あるいは友人、場合によってはほとんど身内のように接している人間も多い。


定期的に分艦隊との連絡を取り合いつつ星系の外周をしばらく回っていたころ、

艦長はなんとなく違和感を感じていた。

「「静かすぎる」」

ほとんど無意識的に出たつぶやきが、深霧と重なる。

「あまりにも動きがなさすぎる。レーダー手、観測範囲内に生体反応はあるか?」

「いえ…ありません」

艦長が真剣な表情で尋ねると、レーダー手はいくつかセンサーの種類を切り替えたのちにそう答えた。

確かに全方位を観測できるレーダーには、生体反応はおろか艦艇のように自由に移動できる物体は映っていない。

「通信長、分艦隊に連絡取れるか?あっちはどうだ」

「了解です。深霧より白霧、深霧より白霧、状況を報告されたし」

しばし待てども応答はなく、ノイズだけが返ってくる。

先ほどの定期連絡からは数分しかたっておらず、圏外に行ってしまった訳がない、

ワープ中ならありえる話だがどのみち巡回中にワープする時点で異常事態なのは変わらない。

つい先ほどまでのんきなものだった艦橋の空気が張り詰める。

「深霧、念の為花霧からも呼びかけさせろ。

通信長、第七の本隊に連絡、『分隊艦と通信不通、航路を変更し合流に向かう』 航海長。」

「了解。送ります」

通信長は手早く、近くの星系で即応待機している第七遊撃艦隊本隊を呼び出す。

航海長はひとまず白霧たち分艦隊が巡回することになっていた航路に針路を合わせる。

「一斉回頭、天舵70取舵150」

「花霧!白霧と通信繋がる? ダメだったらFCS同期準備!」

『…こちらも通信繋がりません。FCS同期良し、データ送ります』

花霧からもすぐに連絡が入る、花霧の艦橋も今頃忙しくなっているだろう。

「僚艦花霧からデータ来ました!FCS同期開始、精密測定開始します。」

レーダー手が前方の空間を集中的に走査する、これで何か分かればその後のことも判断しやすい。

戦術士はミサイルの配置と数を確認しつつ、火器管制装置を起動する。

まだ戦闘配置こそ発令されていないものの、艦橋は既に臨戦態勢に入っていた。


しばらくレーダーをにらんでいたレーダー手が報告する。

「艦影多数確認!照合結果、白霧と若霧両艦ともに反応あり、ですが反応は微弱、戦闘中の可能性大!」

「オルムか?」

艦長の確認にレーダー手はIFFを一瞥して答える。

「反応的に間違いありません、当該空間にワープアウト反応が続いています。概数約120、さらに増加中!」

通信がつながらなかったのはそのせいだろう。ワープ―空間跳躍は付近の空間に揺らぎを生む、

特に中長距離通信ではそれが強いノイズとなって不通となることはよくある話だ。

餐界の場合は特にそれが顕著であり、厄介さを増している。

航海長はその報告を聞いて既に舵を当てている。

深霧も花霧に連絡を入れている、花霧が増速したのがレーダー上でもわかる。

「航海長、第二戦速から第三戦速へ、救援に向かう。通信長!」

機関の音が大きくなったのを感じる、同時に微かに後ろに引っ張られる。

「了解です。第721駆逐隊指揮艦深霧から、第七遊撃艦隊旗艦蒼城へ。

分艦隊が餐界と交戦中、我援護へ向かう。増援求む。」

『花霧から深霧へ、こちらの戦闘準備は完了しました。いつでもいけます。』

花霧から通信が入る。

「全艦第一種戦闘配置!」

艦長の声が響くと同時に、艦内に非常ベルが鳴り響いた。


おまけ


艦艇解説

朝霧型駆逐艦

全長:127m

武装:13.2cm連装集束徹甲式陽電子砲 3基6門

   (上部前部1基 後部1基 下部前方1基)

   垂直ミサイル発射管 計24セル

   (前部6セル 後部8セル 底部10セル)

   前方銛雷(せんらい)発射管 6門

   後方銛雷(せんらい)発射管 4門

   旋回式三連装銛雷(せんらい)発射管 計2基6門

   15mm対空間防護レーザー砲塔 三連装4基

   多目的連絡機 1機

同型艦:朝霧以下28隻


駆逐艦の中でも索敵能力と少数艦での作戦遂行能力を重視した艦級

偵察や哨戒能力を期待されて、第七遊撃艦隊や第三遠洋艦隊を中心にいくつかの艦隊に編成されている

武装に関しては駆逐艦としては平均的かやや少なめとなっており

基本的には交戦を避けて情報を持ち帰るという運用を想定されている

一方で迅速に撤退するために最高速力は高めに設定されており

機動性も悪くはないため 練度の高い駆逐隊は威力偵察を兼ねることもある

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