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第二話 帰路

翻訳に関して

本作品はもともとエストライの言語で話されている内容を、日本語に訳して作成しています。

作中で使われている慣用句や固有名詞などは一番妥当と思える用語を当てた結果です。

ご了承ください。

閉会式も終わり、空の主役である太陽が舞台を降りその座を星々へと譲り渡す。

少しずつ色が近づいていく空と海を眺めながら、

滑るように街を進む移送車の中で長い溜息を吐く。

「なんとかなったか…」

まさか演説を即興でやる羽目になるとは… 完全に忘れていた自分の落ち度とはいえ肝が冷えた。

移送車の後部座席で隣に座っていた天翔が、

「…アドリブでしたか…」

とやや呆れの混じった声を出す。

どうやら声に出てしまっていたらしい。

「…お前も人間らしくなったな、誰に似たんだか…」

誤魔化すついでに話を逸らす、下手をすれば乗艦から説教を食らう羽目になる。

「司令はこういうタイプが好きだと聞きましたので」

幸いにも天翔は乗ってきた、そもそも追及する気もなかったらしい。

というか「こういうタイプ」ってどういうタイプだ、好きって何のことだ。

そもそも…

「…誰から」

正直そんなことを言いそうな奴には見当がついているが、一応聞いてはみる。

「守秘義務がありますので」

天翔はこちらを見ながら少しおどけて言う、少しカマをかけてみるとしようか

「…おおかたロミアだろうな」

窓の外に視線をやったまま軽く話す。

正直あと一人位しか思いつかない…

そもそも候補が二人いる時点でどうかとも思うがそんなことはまあいい。

「なんのことだか分かりかねます」

天翔はすぐにそう答えた。

かかったな、と軽く笑いながら返す。

「流石に隠し事は苦手か? お前は違うなら違うと言うはずだ。」

一瞬天翔の表情が固まる。が、すぐにジト目で口を尖らせるような表情をしてきた。

ー本当に人間に似てきている。

「前より感情の表現が豊かになってきたな、いい兆候じゃないか、想いのある艦は良い艦だ。」

車窓から天翔の方へ体の向きを変えると、天翔は少し驚いたように目を見開いていた。

「…司令が他者を率直に褒めるなんて… 特異な例として記憶しておきます。」

「…本当に人間に似てきたな…」

こいつは人のことをなんだと思っているのだろうか、

まるで素直になれない思春期男児のような扱いをしてくるが。

「お褒めに預かり光栄です。」

「褒めてない。」

さっきのは誉め言葉だが今のは皮肉が入っている、ということに天翔が気が付かない訳がない、

その辺の軽口などはいったいどこから仕入れてくるのやら…


薄い茜色と深い藍色のグラデーションが綺麗な空と海の間を、

移送車は微かな駆動音を出しながら進んでいく。

街に灯りがともり凪いだ海面に鏡写しの街が写る。


暗くなった窓に映る天翔の姿を見る、総旗艦の代弁者であり同時に、

自分の秘書のようになっている彼女。

機械であるはずなのに人と話しているように会話し軽口を叩く、

彼女たちはどこまでが模倣でどこから自我となるのだろうか。

ふとそんな考えが頭をよぎる。


「司令」

天翔が目線を前に向けて動かさないまま声をかけてくる。

通信を受け取った際の彼女のいつもの癖だ、

多分大体の艦長が一度は考えたことがあるだろう哲学的な思考を切り替える。

「火急か?」

いつものように尋ねる。

「いえ、乙七任務部隊、第73戦隊の春薙から戦闘終了の報告書が上がったそうです。確認されますか?」

乙七ということはかご座方面の、銀河外縁部方向哨戒の部隊である、

第七遊撃艦隊所属艦艇中心に編成された小規模部隊だったか。

最近、外縁部から銀河中心方面へ進出しようとする餐界の動きが激しい、

と偵察部隊から報告が上がってきていた。

もともとの星系駐屯部隊のほかにいくつか任務部隊を回しておいて正解だった。

「着いてからちゃんと読むことにするよ、酔うからな、損害は?」

「…小破3 中大破無し、修理は終わってるようです」

「ひとまずは安心か」

ただ本当に「ひとまず」に過ぎない、ただの威力偵察でじきに本隊が来るのかもしれない。

あるいは戦力の陽動の可能性もある、連中がどこまで戦略を理解しているのかはわからない、

だからと言って放置は得策ではないだろう。

敵は有能で士気も練度も高い大軍である、と考えておいたほうが対応が後手後手に回らずに済む。

「増援に迎える即応戦力をリストアップしておきます。」

「頼む。それと星間護衛総隊と星間交通省に話を通しておいてくれ、かご座方面の銀路網に影響が出るかもしれんからな。」

「了解。」

言わなくても伝わると言うのは便利なようで、内心を読まれているようで不安になることがある。

これも経験からくるデータの蓄積なんだろうか、とまた流れそうになる思考を切り替えて

端末を操作する彼女を横目に連中が動き出した訳を考えることにした。

災害とは言ったものの、奴らはそもそもどこから来てどこで生まれたのか、

何を考えているのか、考える脳があるのかすらまだわかっていない。

肘をつき、前髪をいじりながら思考を回す。

統合司令部の入っている庁舎は徐々に大きくなってきていた。

おまけ


艦艇解説

天翔型戦略指揮艦 天翔(あまがけ)

全長:755m

武装:46.3cm三連装実体弾兼用集束炸裂型陽電子砲塔

   5基15門

   (上部前方2基 後方1基 下部2基)

   垂直ミサイル発射管計72セル

   (両翼面各12セル 上面24セル 底部24セル 

   両側面6セル)

   20.4cm連装広角型集束炸裂型陽電子球状砲塔 

   両舷各3基6門

   (合計6基12門)

   28mm対空間防御レーザー砲塔 

   連装12基 三連装16基

   艦首固定式85cm高圧収束式投射砲 1門

   外部投射式空間防壁管制装置 3台

   艦載機搭載数36機

同型艦無し


エストライ国防艦隊総旗艦を担う艦艇

国防艦隊全体の指揮というよりも単艦の戦闘能力に優れているようにみえるのは 「第十艦隊構想」の名残である

第二打撃艦隊よりも重火力を 第七遊撃艦隊より優れた汎用性を持って運用する というコンセプトだったものの

急速な入植による人手不足や財務省の強い反発 更に推進派が政争に敗れたことで廃案となった

すでに第十艦隊の旗艦として計画されていた 天翔はすでに起工されており船体がほぼ完成していた

そのため途中で一部設計を変更し 国防艦隊総旗艦としての役割を果たせるだけの演算能力と指揮機能を持てるようにされた

一方で武装艤装に関してはすでに発注されていたため大半が元の設計のまま搭載されている

ただ総旗艦への設計変更に伴い主砲塔1基 副砲塔4基が削減されており また対空間近接防御兵装にも不安が残るとされている




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