9.初めての夜
最初は、ただ手を繋ぐことさえ照れくさかった。
学校の帰り道、人の少ない路地で指を絡めるだけ。エリックは顔を赤くして俯く。
やがて、キスが日常になった。
朝、教室に入る前に廊下の死角で。
休み時間、屋上の階段の陰で。
放課後、エリックの家に着くなり、玄関で。
唇が触れるたび、最初は優しく、探るように。
それから、少しずつ熱を帯びて、深くなって、息が続かなくなるまで。
友也はいつも、エリックの頰を両手で包んで、瞳を覗き込んだ。
「大丈夫か?」
エリックは小さく頷いて、目を細める。
「もっと……いいよ」
そう言われると、友也はもう我慢できなくなる。
壁に押しつけるように抱きしめて、首筋に唇を這わせ、耳元で名前を呼ぶ。
エリックは甘い吐息を漏らして、友也の背中に爪を立てる。
でも、友也はそこでいつも止めた。
「まだ……ダメだ」
額を合わせて、荒い息を整えながら呟く。
「お前を、大事にしたいから」
エリックは悔しそうに、でも幸せそうに笑った。
「……ずるいよ、友也」
春が終わり、梅雨が来て、夏が訪れた。
二人は修一の次の大会も一緒に応援に行った。
今度は、修一が優勝したあと、ちゃんと三人で写真を撮った。
でも、帰りは、二人きり。
エリックの家に着くと、友也はもう我慢できなかった。
部屋に入るなり、エリックを抱き上げてベッドに押し倒す。
「今日は……いいか?」
掠れた声で尋ねる。
エリックは、目を潤ませながら、ゆっくりと頷いた。
「うん……もう、待てない」
友也はエリックのシャツのボタンを、一つ一つ丁寧に外していった。
白い肌が露わになって、息を呑む。
「綺麗だ……」
呟くと、エリックは恥ずかしそうに顔を背けた。
「やめてよ……恥ずかしい」
友也は笑って、エリックの首筋にキスを落とす。
「全部、好きだ」
その夜、二人は初めて、すべてを重ねた。
ゆっくりと、慎重に。
痛みよりも、愛しさが先に立った。
エリックは友也の名前を何度も呼び、友也はエリックの髪を優しく撫で続けた。
朝、目が覚めると、二人はまだ抱き合ったままだった。
カーテンの隙間から朝陽が差し込み、エリックの寝顔を照らす。
友也はそっと、エリックの額にキスをした。
「……おはよう」
エリックが目を細めて、眠そうに笑う。
「おはよう……友也」
友也はエリックの手を握り、エリックはそれを強く握り返した。
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あと、1話、続きます。




