3.ライバル
いつも夕暮れになると、校舎のグランドには、修一の姿があった。
黒髪を短く刈り上げ、無表情の精悍な顔。陸上部のエース、短距離走のスター。全国大会で連覇し、将来はオリンピック代表候補とまで言われている。
友也がグラウンドの掃除やタイム計測を手伝ううちに、修一がぽつりと「ありがとう」と声をかけてきた。
修一は友也が渡したスポーツドリンクを受け取るとき、わずかに目を細めて「助かる」と言う。そのストイックに、ひたすら走り込む姿に、友也は心底、感心し応援していた。
「すげえよ、修一。毎日あんな走り込んで」
友也は毎日のように、プロテインドリンク、冷却スプレー、エナジーバーの差し入れをしていた。修一は頭を下げて受け取り、たまに「悪いな」とだけ返す。
そんな二人の様子を、エリックは二階の教室の窓から見ていた。
金色の髪を揺らし、グラウンドを眺める。胸の奥が、焼き付くように熱くなる。きつく目を細める。
放課後の教室で、エリックは待ち構えていた。友也が修一にドリンクを渡して戻ってきたとこだ。
「……友也」
声は低く、かすかに震えていた。
友也が笑顔で近づく。
「よっ。今日も修一、タイムがまた更新――」
「目立つからって、近づくなよ」
エリックは友也の言葉を遮り、鋭く言った。
友也が目を丸くする。
「は?」
「お前、そういうとこあるよね。かっこいいとか、すごいとか思ったら、すぐ寄っていって……ただのミーハーでしょ?」
エリックの声が、少しずつ大きくなっていく。
「オリンピック候補で……だからって、ドリンク持ってったり、応援したり……そんなの、彼は嬉しくないよ」
友也は眉を寄せた。
「……違うよ。俺、修一の努力が本気で尊敬できるんだ。毎日あんなに自分を追い込んでる姿見てると、応援したくなる」
エリックは唇を噛んだ。
「やきもちか?」友也が、からかうように言った。「邪魔するなよ、エリック。俺たち、ただの友達だろ」
「……違う」
エリックは目を伏せ、呟いた。
友達、その言葉が、胸を突き刺した。
「ああ……やきもちだよ」
エリックは顔を上げ、潤んだ目で友也を見た。
「友也が、あいつの話ばっかりするの……嫌だ」
友也は一瞬、黙った。
「……エリック?」
エリックは振り切るように目を逸らした。
「なんでもない。忘れて」
教室を出て行く。
友也は立ち尽くしたまま、背中を見送った。
(エリックが……俺に、やきもち?)
____
昼休み。友也はエリックとの昼食を早々に切り上げて、修一の練習を見守っていた。
教室は神妙な空気に包まれていた。
昼食を終えて、エリックが落ち込んだ様子で教室に戻ってきたからだ。
「友也くん、エリックくんにひどいこと言ったの?」
「友也、最近修一って人とばっか仲良くしてるし、浮気みたいじゃん」
女子たちはエリックを囲み、優しく声をかけながら、友也を遠巻きに睨んでいる。
エリックは席に座ったまま、俯いて黙っていた。金色の髪が少し乱れ、いつもより儚げに見える。
「エリックくん、大丈夫? 友也くん、ひどいよね」
「エリック王子に優しくしろって言ってあげなきゃ!」
男子たちも加わって、友也の席の方にブーイングが飛ぶ。
「おい友也! エリック泣かせんなよ!」
「浮気すんなよ!贅沢もん」
友也は周囲を睨み返した。
「……は? 俺が何したってんだよ」
「修一って人より、エリック王子の方がずっと可愛いのに」とか「友也は調子に乗ってる」といった声が飛び交う。
そのとき、廊下を通りかかった、修一が教室に入ってきた。
友也の席に近づき、修一は友也の隣に立つと、ぽつりと「昨日のは、助かった」と呟いた。差し入れのお礼だろう。
その瞬間、エリックが立ち上がった。
金色の髪を振り乱し、修一を露骨に睨みつける。
「……お前なんかより!」
エリックは自分の机の引き出しから、束になったラブレターを取り出した。ピンクやハート柄の封筒が、数十通。
それを、修一の足元にばさっと投げつけた。
「僕の方が、こんなに人気あるんだよ。友也に近づかないで」
封筒が床に散らばり、周囲がどよめく。
修一は無表情のまま、散らばった手紙を見下ろし、何も言わずに踵を返して教室を出て行った。
友也は立ち上がり、エリックの腕を掴んだ。
「何やってんだよ! ラブレター、雑にするなよ! みんなの気持ち、踏みにじるのか?」
エリックは友也の手を振り払い、目を潤ませた。
「……だって、友也があいつと……」
「だからって、こんなことする理由にはなんないだろ! お前、いつも優しいって思われてんのに……こんな幼稚な真似、すんなよ」
友也は床に散らばった手紙を拾い始めた。
エリックは唇を噛み、俯いた。
周囲の女子たちは、ラブレターを投げつける姿を見て、少し引いていた。
「エリックくん……ちょっと、やりすぎかも……」
「手紙、かわいそう……」
友也は拾い終えた手紙をエリックの机に戻し、言った。
「ちゃんと謝れ。修一にも、みんなにも」
エリックは涙を浮かべながら、友也を見上げた。
「……友也は、僕のこと、嫌いになった?」
友也はため息をつき、エリックの頭を軽く叩いた。
「バカ。お前が、嫌いになるわけねえだろ」
その声は少し疲れていた。
教室の空気は、重いままで昼休みが終わった。
読んでくださり、ありがとうございます。
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投稿作品が爆増しているとか。生成AIで、書かれてるんでしょうね。いくらでも量産できそう。そして、投稿の頻度がかなり早くできそう。




