1.通学風景
朝の通学電車は、いつものように混雑していた。
金色の髪が朝陽に輝くエリックは、窓際の手すりに掴まりながら、本を読んでいた。長い睫毛、透き通るような白い肌、北欧系の整った顔立ち。外交官の父親を待つハーフだ。
乗客の視線が、自然と彼に集まる。
突然、後ろから手が伸びてきた。尻をさすり上げるような動き。
エリックはびくりと肩を震わせ、本を抱きしめた。
「……っ」
エリックは唇を噛み、身体を硬くする。
次の瞬間。
「てめぇ、何してんだよ」
低い声が響き、後ろの男の手首が掴まれた。
振り返ると、そこにいたのは幼馴染の友也。
黒髪に少し鋭い目つき、背が高くてがっしりした体格。
男は友也の威圧に怯え、慌てて手を引いた。
「す、すみません……」
友也は男を睨みつけ、エリックを自分の前に引き寄せた。エリックを自分の身体で覆うように守る。
「……友也、ありがとう」
エリックは呟き、友也の制服の袖をそっと掴んだ。名門私立高校の青紫色をしたブレザーだ。
友也はぶっきらぼうに言った。
「お前、毎朝のように狙われてんだから、もっと警戒しろよ」
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二人が学校に着くと、すぐに女子たちがエリックを取り囲んだ。
「今日の放課後、空いてる?」
「合コンするんだけど、エリック王子に来てほしいってみんな言ってるの!」
エリックは困ったように微笑んだ。
「え、っと……僕、そういうの、苦手なんだけど……」
「だめ? お願い! エリックがいれば、絶対盛り上がるから!」
女子たちはエリックの腕に抱きついてくる。エリックは後ずさる。
その様子を、少し離れたところから友也が見ていた。
「……またかよ」
友也はため息をつき、歩み寄った。
「おい、エリック。放課後、俺と図書室で勉強するって約束したよな?」
女子たちが不満げに友也を睨む。
「友也っち、邪魔しないでよー」
エリックは友也を見て、ほっとしたように微笑んだ。
「……ごめんね、みんな。友也と約束しちゃってるから」
「しょうがないな……」
女子たちは渋々引き下がった。
エリックが体育の授業を終えて、着替えて教室に戻ってきた。制服の胸元の金ボタンが一つなくなっていた。
「……また、か」
エリックはため息をついた。
昼休み、友也と連れ立って屋上に行く。
友也は弁当を広げながら、エリックの胸元を見て眉をひそめた。
「お前、またボタン取られたのか?」
「うん。きっと、誰かが記念に……」
「お前、お人好しすぎるよ。担任に言えよ」
友也は自分の弁当から卵焼きをエリックの弁当に移しながら、言った。
エリックは少し寂しげに笑った。
「喜んでくれるなら……いいかなって」
友也は箸を止め、エリックをまっすぐ見た。
「……俺は、お前がそんな風に嫌な思いしてるの、見たくない」
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放課後、二人は図書室で並んで座っていた。
エリックは本を読んでいるふりをしながら、隣の友也の横顔を盗み見る。
友也はエリックの視線に気づき、ふと顔を向けた。ノートを書くシャーペンを止める。
「……どうした?」
「な、何でもないよ」
エリックは慌てて目を逸らした。
友也は少し困ったように笑い、エリックの頭を軽く撫でた。
「変な奴」
エリックは胸を片手で押さえ、小さく息を吐いた。
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