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『異世界ダイナリー〜創造神に選ばれた僕は、婚約破棄された公爵令嬢リリスを全力で幸せにします〜』  作者: ゆう
第三章 揺らぎ出す王都と、ひとつの恋心

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第四章・第1話 憧れの先輩たち

第四章・第1話 憧れの先輩たち


朝の校舎前は、春の匂いと新しい靴の音が混じり合い、いつもより少しだけ騒がしかった。

制服の襟を直したり、案内板を見上げたり、右往左往する新入生たちの姿は、どこか初々しい。


「……あれ、ルカじゃない?」


リリスが指さした先で、ルカが数人の新入生に囲まれていた。

彼はユウやリリスと同じ三年生だが、一般クラスに所属している。

それでも落ち着いた声で説明する姿は、妙に頼りがいがあった。


「講堂は正門をまっすぐ。分かれ道を右に行けばすぐだよ」


新入生たちは真剣に頷いている。


「今日は案内役?」

ユウが軽く声をかける。


「うん。講堂の場所だけだけどね」

ルカは肩をすくめた。


その瞬間、新入生たちの表情が一変した。


「……ユウ様……?」

「ヴァルロード伯爵家の……」

「男爵家の当主でもあるって……本当かよ……」


ざわり、と空気が揺れる。


「しかも、Sクラス……」

「入学前から名前、何度も聞いた……」


ひそひそとした声が、新入生たちの間を行き交っていた。


そして、ユウの隣に立つ少女に気づいた瞬間、ざわめきはさらに大きくなる。


「リリス様……?」

「グレイハルト公爵家の令嬢……!」

「本当に……婚約されてるんだ……」


リリスは微笑み、軽く会釈した。

その気品は、公爵家の令嬢としての格を、言葉なく示している。


そして――

ユウの後ろに控える黒髪の女性に、新入生の視線が吸い寄せられる。


「……あの人……」

「ヴァルロード家のメイド……マリアさん……?」

「本物だ……噂通りの黒髪……」


マリアは、艶やかな黒髪を揺らしながら静かに一礼した。

その佇まいは、ただそこに立つだけで“名門メイド”の名にふさわしい気品を放っていた。


さらに、リリスの後ろで控えめに一礼する少女にも気づく。


「ティナさん……?」

「公爵家の専属メイド……」

「すご……本物の貴族の世界だ……」


新入生たちは完全に圧倒されていた。


そこへ、さらに小さな囁きが広がる。


「……リリス様って……王太子殿下に婚約破棄されたって噂……」

「でも今はユウ様と婚約してるんだよね……?」

「え、じゃあこの二人って……」


ユウとリリスは、そんな噂を気にする様子もなく並んで立っていた。

その距離感は自然で、むしろ落ち着いた信頼が滲んでいる。


ユウは新入生へ向き直り、穏やかに声をかけた。


「おはよう。今日から入学だね」


その一言で、新入生たちはさらに固まった。


「あ、あの……!」

一人が意を決して前に出た。


「入学試験のとき……ユウ様が……教官の剣を受けて……そのまま倒したって……!」


ユウは少しだけ目を伏せ、淡々と答えた。


「倒したってほどじゃないよ。

教官の剣に合わせていただけだ」


「合わせただけで……倒れるんですか……?」


新入生たちがざわつく。


次にリリスへ視線が向けられた。


「リリス様は……難しい詠唱を、一度も噛まずに成功させたって……!」


リリスは小さく微笑んだ。


「ええ、あれは確かに難しい詠唱でしたわ。

でも、練習すればできますの。

わたくしは、ただ間違えなかっただけですわ」


「間違えなかっただけで……?」

「いや、それ絶対難しいやつ……」


新入生たちは完全に混乱していた。

噂で聞いていた“規格外の二人”が、目の前であまりにも自然体で話している。


ユウは軽く息をつく。


「試験は試験だよ。

やるべきことをやっただけだ」


リリスも優しく続ける。


「皆さんも、すぐに慣れますわ。

焦らず、一つずつ積み重ねていけばよろしいのです」


新入生たちは、伝説級の二人があまりにも気さくで、逆に言葉を失っていた。


ルカがその様子を見て、小さく頷く。


「じゃあ、講堂まで案内するよ。

二人はここまでで大丈夫」


「任せるよ」

ユウが言う。


「頼りにしていますわ」

リリスも続ける。


マリアは静かにユウの後ろへ控え、優雅に一礼した。

ティナもリリスの後ろで丁寧に頭を下げる。


歩き出す新入生たちの背中を見送りながら、ティナがぽつりと呟く。


「……なんか、ルカくん、すっかり“頼れる三年生”って感じですね」


「ええ。それに……」

マリアが微笑む。

「新入生の皆さん、とても可愛らしいですわ」


ユウは、校舎へ向かう新入生たちの背中を見つめながら、静かに息を吐いた。


――今年もまた、新しい一年が始まる。


胸の奥に、ほんの少しだけ懐かしさと期待が混じった。

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