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ブルーギルの思い出

作者: カカ

あの日のことは、今でもはっきりと思い出せる。小学生の僕たちは、毎週のように集まっては、ハンバーグ専門店の裏にあるあの池に行った。池は緑青色に濁り、表面には泡が浮かんでいて、どこか不気味な印象があった。でも、僕たちにはそれが魅力的だった。


池のそばにある釣り具屋で、50匹くらい入ったミミズを300円くらいで買うと、僕たちはワクワクしながら道を歩いた。釣り具屋の店主はいつも無愛想で、でも僕たちはその顔を見て、さらに気持ちが盛り上がった。釣り具屋の棚には、安っぽい釣り竿や浮きが並んでいたけれど、何よりもミミズが一番の楽しみだった。


池に到着すると、まずは釣り糸を池に垂らす。ブルーギルを釣るために必要な道具は、釣り針と糸とミミズだけ。それだけで、あの池にいるブルーギルたちが次々と食いついてくるのが信じられなかった。引きが強くて、釣り竿がしなるたびに、胸が高鳴った。釣りの楽しさは、ただ釣れることだけではなく、その瞬間のドキドキ感にあった。


ブルーギルを釣り上げるたびに、みんなで「うわっ、大きい!」とか「すごい!」と歓声を上げ、釣ったブルーギルは必ず池に戻した。キャッチ&リリースが、僕たちのルールだった。それはただの遊びだったけれど、自然と命を大切にする気持ちが育まれていた気がする。


ブルーギルが釣れるたびに、僕たちの顔には満面の笑みが浮かんだ。池のそばで過ごす時間は、何も考えず、ただ釣りに夢中になれる貴重な時間だった。時々、釣りに失敗することもあったけれど、それでも誰もが楽しんでいた。僕たちは釣りをしながら、ただお互いに競い合い、笑い合い、無邪気な日々を送った。


あの池は今でも思い出の中に鮮明に残っている。緑青色の水面に浮かぶ小さなブルーギルたち、その姿を思い浮かべるたびに、あの頃の無邪気で純粋な気持ちが蘇る。僕たちの楽しみは、釣り糸を垂らすことだけではなく、ただ一緒に過ごす時間そのものだったのかもしれない。


大人になった今、あの池の場所はもうわからない。もしかしたら、ブルーギルたちも別の場所に移ってしまったかもしれない。でも、あの日々の記憶は色あせることなく、僕の中で大切な宝物として残り続けている。あの池で釣ったブルーギルたちと過ごした時間が、釣りの楽しみを教えてくれた、最初の思い出となっている。

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