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ねこねこあるある ネコとの暮らし

扉の向こうに何がある?ちびねこぷーちゃん、ちっさな大冒険の巻

作者: 池畑瑠七

 とうとう。とうとう彼は、秘密の扉を開けてしまった!その先にあるのは未知の世界。


 開かずの扉。立ち入り厳禁、キープアウト!

 ここから先は、決して入ってはいけないよ…


 我が家には、そんな扉がある。

 そう、ぷーちゃんにとってだ。



 1階と2階でほぼ完全分離の2世帯住居である我が家。共有玄関から階段で子世帯の2階に上がる造りになっている。


 1階に住むうちのばーちゃん、実はネコが苦手だ。


 小さい頃野犬に追いかけられて、スゴイ怖い思いをした事があるらしい。それがトラウマになって、以来四つ足の動物全てが苦手となってしまったんだそうだ。

 犬猫はもちろん兎もネズミも、何しろ小鳥以外は全部アウトっていうから筋金入りだ。おそらく動物園とかも行ったことないんじゃないかなーきいてみたことないけど(笑)。


 そんなわけで先代ネコを我が家に迎えた時に、彼が1階に下りて行かないよう階段の降り口にDIYで簡易扉を取り付けることになった。半透明プラダンでできたスライド式のドア、というかパーテーションだ。

 仮設だから、力を加えると少したわんで隙間ができる程度のものだ。


 先代ネコは、家族が出入りするスライド扉のむこうの世界が気になって気になって、何とか隙を見ては突破しようとチャレンジし続けていた。


 あるとき、家族がちょっぴり閉め損ねていた扉をみつけ、何とか開かないものかと「ばしゃん!ばしゃん!」と叩き続けた所、とうとう隙間を広げることに成功して突破してしまった。

 「しめた!」となってすかさず階段を下り、興味深々だった未知の世界へ足を踏み入れたのだった。


 「ありゃ!だめじゃーん!」その時は気づいてすぐに2階へ連れ戻したが、一度味わった成功体験を忘れるような彼ではなかった。

 その後も度々突破に成功し、とうとうこちらも根負け。

 彼はそうして新たな世界、玄関ホールへの出入り自由を手に入れたのだった。ただし、玄関ホールから繋がる親世帯へのドアは絶対に開放しない、という条件で。

 

 最初ネコ嫌いだったばあちゃんは、この家で長く一緒に住むうち徐々に親近感を持つようにはなってくれた。食事などで2階に上がってきてネコの姿を見れば「かわいいね」といってくれるまでにはなった。

 でも、どうしても触ることは無理だった。万が一親世帯に侵入しちゃったら。どこに飛び乗っても潜っても、捕まえられない彼女に為す術なしってことになる。それはネコ自身も危険だし親世帯子世帯双方にとって望ましくない。

 なので、親世帯にだけは入らないように。そのラインは彼の存命中、どうにか死守してきたのだ。


 猫遮断用としては有名無実化していた簡易扉でもずっと使い続けていたのは、冷暖房効果が全然違うから、だった。でも先代を見送りぷーちゃんがやってきてから、このスライドドアは再び元来の意味でちゃんと役立っていた。


 好奇心旺盛な割にめっちゃビビりなぷーちゃんは、これまで先代ほどにはドアの向こうの世界に興味をみせなかった。


 それが、である。年末年始にかけて体調を崩したり、足を痛めて何度か通院を繰り返したのだが、キャリーに入れられて階段を上り下り・玄関を出入りしたこともあってか、急に階段と下の世界に興味を持ちだした。


 「このドアの向こうに、なんか楽しそうな世界があるみたいだ!!行きたい行きたーい!」


 家族が開けそうなタイミングを見計らって、人待ち顔でドアの前で待っている。足元をすり抜け階段を降りようと待ち構えてるのだ。


 そうかと思えば、ドアをスライドさせる音と、そのあとにぴしゃっと閉める音。いつもセットになって居る訳だけどその音の違いを遠くからでもしっかりと聴き分けている。

 わずかに閉めそびれている時の音を聴き分け、「チャンス!」とばかりに駆け付けてドアにアタックを開始するようになっていた。


 そうして傷めていた脚がすっかり良くなって、元のようにゴキゲンさんでヘソ天もしはじめ元気復活してきた今日。

 とうとう、彼も「やってくれた」。


 朝のお掃除が終わる頃、いつもはぷーちゃん日向ぼっこの時間。あれっ?陽だまりにもお気に入りのタワーや椅子の上にも、姿がない。

「ん?ぷーちゃんいない」


 何処だ?と頭の隅で思いつつ、さて玄関掃除をしなきゃと階段を降りて行ったら・・・そこには!

 目を真ん丸にしてシッポをピーンとたてながら、朝陽の当たる玄関ホールでぴきん!と固まってこちらを見つめるぷーちゃんの姿が!


「あっ、やば、見つかっちゃった…」


 って漫画の吹き出しが頭の上にぷかぷか浮いてそうな。イタズラが見つかっちゃったちびっ子、まさにそんな顔だ。

 僅かに閉めそびれてた扉をすり抜け、とうとう玄関ホールに到達して新世界をおっかなびっくり探検していたのだった。


「こらこらあ~!だめよ~もどりなさーい!」


 声を掛けるが早いか、見つかったとわかった途端に踵を返し、すったたたたた……とあっという間に階段を駆けあがって2階へ戻っていった。


 禁忌を犯した自覚十分、すたこら逃げ戻る様子に笑ってしまった。


 いやぁ~ホントはダメなんだけどさ。好奇心爆発、お目めキラキラなあんな嬉しそうな顔をみたらさ、怒りきれんよ。


 またひとつ、知恵比べせねばならない要素が増えてしまったな(笑)。


 一度味わった成功体験は絶対に忘れない子。きっと明日もチャレンジするだろう。



 年も新たまったところでまた一つ未踏の世界へ。新たな冒険の扉を開け、ワクワクが止まらないぷーちゃんなのであった。








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