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サムライ魔法学園

作者: 成若小意

よろしくお願いします。


息抜きに勢いで書きました。

よければ長編などの合間の箸休めとしてお読みください。

『サムライ魔法学園 寺子屋』で、若ざむらい達が文机の前に座って墨をすっていた。


「精神を統一して墨をすることで、より魔力が込められる。」

教師が後ろに手を組みながら、生徒(若ざむらい)たちの間を練り歩く。


主人公は梅太郎。ちょんまげ頭も初々しい、新人ざむらいであった。


梅太郎は8人ほどの生徒に混ざって、ともに魔法陣を描く。


まず、針と紐と筆を使って、円を描く。

この円が肝。

これが歪むと、まず何も起きない。


次に魔法陣の文言(もんごん)。円が描けていれば、光が発せられるが、文言が間違っていると変なことばかり起きる。この前はカエルが百匹でてきた。


しかし、細筆で狭い円の中に文字を書くというのは、随分と骨の折れる作業であった。しかも曲線に合わせる。


梅太郎はなかなかこの作業ができなかった。


何度書いてもできない。


そのため、そのうち教師の目を盗んで犬や猫の落書きばかりしていた。これはなかなか上手い。



梅太郎には優秀な兄がいた。背が高く、見目の良い兄。同じサムライ魔法学園寺子屋に通っているが、既に役人からその優秀さに目をつけられて、あちこち現場に招かれていた。


そんな優秀な松太郎に比べて、小柄で童顔な梅太郎。彼は腕も頭もぱっとしない。そんな状況にいじけて、梅太郎は今日も落書きをする。



その日の授業は召喚獣を召喚すること。

まず教師が見本で召喚をおこなった。

現れたのは、熊のような召喚獣。


「さては御大高貴な御方とお見受け候。」

その後も何やら教師は宣うが、召喚獣としてはサムライ言葉が難しくて、聞き取れない。


さらに、周りを見渡しても見慣れぬ風景に戸惑う召喚獣。

木と紙で作られた家はあまり見たことがない。石とガラスで作られた家なら馴染みがある。ここはどこ。


ここがどこか聞こうにも、目の前の変な髪型の人物はへんてこな話し方なので、何を言っているのかよくわからない。


「…もう少し、わかりやすい言葉で…」そう召喚獣がお願いする。



「あいや、失礼つかまつった。先度、我らが先生が海を超え遠くの国にまで、その学問を追求する心を持って方々を周り、そしてついに持ち帰った知識、『魔法陣!』。某はその魔法陣!を、我ら志を一にする者達で学び使っていこうという学びの場、サムライ魔法学園寺子屋の塾長で御座候。」



あっけにとられる召喚獣。

「そ、そうであったか。ご苦労で、そ、そうろう。」


その後は生徒達が次々に召喚していく。

そしてやはり、梅太郎はよくできない。


先生に叱られて、外に飛び出し、集まってきた犬を撫でていた。

「私のことをわかってくれるのはお前たちだけだよ。」としょんぼりする。




役人たちと一緒に、捕物の現場から帰ってくる松太郎。

「日本刀から雷が飛ぶのはいいでござるな!」

松太郎の周りにいる若い役人が興奮気味に松太郎に話しかける。

疾風雷電切しっぷうらいでんぎりとかかっこいいでござるな!」

何でも、『怪しげな奴でもひとまず殺さずに捕縛できていい』とのことで、好評だった。


松太郎は日本刀に魔法陣を書き込む技法を確立。それを普及させていた。


先月は殿様からの無理難題も魔法陣で解決。

先日も幼い姫に季節外の桜吹雪をみせて喜んでもらった。

「サムライ魔法学園寺子屋に松太郎あり。」と、俄に有名人となっていた。






今寺子屋で流行っているのは、浮遊魔法。


「先生の先生が書いてくださった書物には、『ふらい』と書いてありました。」

勉強熱心なメガネの若ざむらいが皆に教える。

「『ふらい』ですか?そのような料理があると聞いたことがあります!」

「いやいや、ちがうのです。これは『浮遊』という意味、それは恐らく、『揚げる』という意味ですね。」

そのような会話をしながら、次々と皆その魔法陣作成に取り掛かる。


皆才能があるのか、それとも魔法陣が簡単なのか、どんどんと成功させて浮かび上がる若ざむらい達。


最初は皆喜んだ。


しかし。


床に魔法陣を敷いて、そこに正座で乗り、魔法を発動させているので、皆が正座で浮かんでいる。なんか変な光景だねと口々に言う。


サムライであるからには、やはり格好良さがないと!と、皆姿勢の研究にはいる。


立ち姿で浮かぶ。直立不動なのでやはり変。

抜刀姿勢もおかしいだろう。その姿勢のままスライドしていった。


そこで何かに乗ることを提案するものがいた。


「それはいい。」と喜ぶ面々。なにがいいか。


座布団ではあまり格好良くなかったので、だめだった。

布団で浮かぶのはどうか、との案がでたが、他の誰かが『みっともない。』と言うと、皆口々にそうだなとうなずく。

「畳ならば良いかもしれぬ…。」と誰かが呟いた。


「…それだ!」


そして、サムライ魔法学園寺子屋から、畳に乗った若ざむらい達が町へ飛び出してきたので、何だなんだと町民たちが集まってきた。面白い物好きな町民たちが、それに食いついて、町全体で流行るのはすぐのことだった。





「まさか、あの遊び道具だと思っていた、浮遊畳(ふらいじょう)を医療用に転用するとは、見事でござる。」

松太郎を囲んで、役人や町長がそう話す。


サムライ魔法学園寺子屋で流行っていた浮遊畳(ふらいじょう)。先日出先から寺子屋に戻った松太郎は、それを見るなり、『これは使える…』とつぶやき、そこにいる生徒たちに色々聞き取りを行った上ですぐに役所に行って、この浮遊畳(ふらいじょう)を町中の病人運搬用に運用できるよう掛け合ったのだった。


松太郎が思ったとおり、この浮遊畳(ふらいじょう)の運用は大成功。医者や患者と家族だけでなく、浮浪者などの溜まる裏道や遊郭周りの人々の収容にも役に立った。


それを見て、人々は言う。

『松太郎は人が集まるな。梅太郎は犬猫が集まっておる。』


そう言われた梅太郎の周りには、確かに犬や猫がよく集まってくる。


そんな中、腹を空かせていればせっせと餌をやり、怪我をしていれば治癒魔法をかけてやる。


犬猫(わんにゃん)が集まってくることに、梅太郎は満足しているようだった。





ある時梅太郎が、相変わらずうまくいかない召喚獣の魔法陣を描いていると、墨が一滴落ちてしまった。そのまま召喚すると、恐ろしい様相の召喚獣が現れた。


その召喚獣は即座にサムライ魔法学園寺子屋を飛び出し、町中へ駆けて行ってしまった。


慌てて追いかける梅太郎だが、相当足が早いようで、もう見えない。


だが、少し遠くの方で悲鳴が聞こえてくる。


「大変だ…。なんとかしなきゃ!」




町中では、異変を聞きつけた警邏隊けいらたいが、魔法陣部隊を伴って、暴れる凶悪な召喚獣にあたっていた。


魔法陣部隊では、兄の松太郎が指揮をとっている。

若ざむらいが召喚獣を囲い込み、一斉に『疾風雷電切しっぷうらいでんぎり!』と唱えると、それぞれの日本刀の先から雷が走り、召喚獣を痺れさせる。


苦しみ倒れる召喚獣。


退治できたと思い、確認のために先陣を切って松太郎が近づくが、何とまだ動けるようで、すんでのところで反撃される。


「松太郎兄ちゃん!」


兄の危機に駆けつける弟。

サムライ魔法学園寺子屋を出てくるときに集めたありったけの魔法陣を松太郎に渡す。


怒涛の勢いで魔法を繰り出すが、どんどん耐性がついているのか、魔法が効かなくなり、兄弟そろってなすすべなくやられてしまう。


全身傷だらけで、同じように傷だらけの兄の横に倒れ込みながら梅太郎は言う。

「兄上のようになりたかった」

「わたしのように?なれるわけがない。」


そう言う兄の言葉に、顔を伏せる。


「お前はお前、私は私だ。」

兄がそう言ったので、梅太郎はがばりと起き上がって兄を見る。

「私が二人いてもつまらん。」そう言って、にっと笑う兄。


また攻撃を繰り出してくる召喚獣から弟をかばい、覆いかぶさる松太郎。



しかし、とどめを刺される直前、梅太郎が世話を焼いてきた犬猫わんにゃん達が駆けつける。


「お前たち!助けに来てくれたのか。でも危ない!にげるんだ!」


梅太郎がそう叫ぶが、引くことなく召喚獣に飛びかかる犬猫わんにゃん


周りが見ている中、もう終わりかと思った途端に大型の魔獣と化す犬猫わんにゃん


鋭い犬歯で召喚獣を噛み砕き、あっけなく倒してしまった。


驚きながらも、犬猫を心配して近寄る梅太郎。

「どういうことなんだ?お前たちは魔法使いだったのか?」

と問いかけると、口々にこたえる。

「あなたがあたえてくれたのではありませんか。」

「ご飯をくれ、傷を治す。」

「その時に、私達に魔力が積もっていったのです。」

「これで恩が少しでも返せたのなら嬉しいです。」

そういうと、また元の姿に戻っていった。


それを遠目に見ていた、何もしていない殿が、言う。

「あっぱれ!」






後に松太郎はサムライ魔法学園寺子屋の塾長に、梅太郎は犬猫専門店の店長になった。


常々松太郎が言っていた、『鍛えるのが好きなんだ』という言葉は、自分だけではなく他人にも適用されるようで、その寺子屋に入った生徒は素晴らしく鍛えられると有名になった。


そしてサムライ魔法学園寺子屋で疲弊した生徒たちは犬猫専門店で癒やされにくる。


また、犬猫専門店の犬猫たちは、サムライ魔法学園寺子屋にて鍛えられに行く。


そのようないい兄弟関係を築くことができた。



大暴れした召喚獣を召喚した魔法陣。あの魔法陣に墨をもしたらしていなければ、誰よりも上級な召喚獣を召喚できていたということには誰も気が付かないまま、今日も平和に魔法サムライたちは町を守っていたのだった。

読んでいただきありがとうございます。


侍言葉は難しいですね。作中のセリフはとても適当です。

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