お金で買う
「ただいま帰りました。」
フランは学校から帰ってきました。
「おかえりなさい!」
お店の方から智美の声がしました。
フランはお店の方にいってみました。
今日からお店のお手伝いをするのです。
「ただいま帰りました。」
フランは厨房の職人たちとお店にいる智美に声をかけました。
「おかえりなさい。」
「わたくしにできることはあるかしら?」
智美はフランの言葉遣いのよさは接客にむいていると思った。
「まずは一緒にお客さまの接客をいたしましょうか。」
「こんにちは。」
お客が入ってきました。
「いらっしゃいませ。」
フランも智美の後について言ってみた。
「いらっしゃいませ。」
「これを2箱ください。」
お客は注文してきた。
フランは智美に伝えた。
「これを2箱いただきたいそうです。」
「はい。ただいまお包みいたしますのでお待ちください。」
フランは少しうれしかった。
そのあともお客はつぎつぎときて、フランは注文を受けて智美に伝えるという
ことだけに専念した。
「フラン、今日はつかれたでしょ。フランが注文を正確に受けてくれたから
助かったわ。」
「いいえ、本当はお金というものの受け渡しもできたらいいのだけれど、
これから少しづつ覚えていくようにします。」
それからフランは学校が終わったら、お店のお手伝いをして一生懸命
覚えました。
学校生活にも慣れたある日の朝のことです。
拓斗がいつものように迎えに来ました。
「おはよう、フラン。」
「おはようございます、拓斗。」
「では、いってまいります。」
「いってらっしゃい。」
智美は二人をおくりだした。
学校につき、席に座ると真也が近づいてきた。
「おはよう、フラン、拓斗。」
「おはようございます、真也さん。」
「おはよう。」
2人はあいさつした。
「文化祭の出し物考えてきた?」
「あっ、やっべ、忘れてた。」
拓斗は忘れていた。
フランはもちろん文化祭を知らない。
「文化祭とはなんですの?」
2人はどう話したらいいのかわからず、とりあえず簡単に説明した。
「文化祭とは、食べ物のお店や遊べるお店、踊ったり楽器を演奏したり、
つまりなんでもありってことかな?いろんな人がきて楽しいって
ことだよ。」
フランは自分の誕生日のお祝いに、庭でパーティーをして踊ったり演奏
したりしていることを思い出していた。
――パーティーってことかしら?
「わかったわ。」
拓斗と真也は絶対にフランはわかっていないだろうと思った。
「まあ、それを今からクラスで何をするか決めるらしいぞ。」
真也は言った。
クラスでいろいろと案がでてきたが、多数決で決まった。
【メイドカフェ】
フランはよくわからないが、お食事を提供するってことはわかったらしい。
文化祭まで衣装づくりや買い出しそのた諸々準備に忙しくなる。
拓斗、真也、フランそして優希は買い出し班になった。
次の日曜に4人で買い出しにいくことになった。
そして日曜日。
待ち合わせ場所に拓斗とフランは向かった。
真也と優希はもう来ていた。
――もう、いつも二人でいる。しかも仲良さそうに……もう……。
優希は、拓斗とフランが二人で歩いてくる姿を見て嫉妬していた。
「お待たせいたしました。」
フランがいった。
「遅いじゃない!」
優希が言うと真也はいった。
「まだ、待ち合わせ時間前だぜ!」
優希は、少し不機嫌になった。
「よし、じゃあいこう!」
真也は切り替えた。
文化祭に必要な買い物をした。
「よし、これで必要なものは全部買ったな。お腹すいたからお昼でも
たべようぜ。」
真也が仕切っていた。
フランは智美さんからお店のお手伝いをしたからとお金をもらっていた。
みんなが何か食べたり買ったりしたら、このお金を使うようにと渡して
くれたのだ。真也はオムライス、拓斗はカレーライス、優希はパスタ、
フランは何にしたらいいか迷っていた。真也はフランのことを怪しんでいた。
――海外でくらしていて食べ物のことを知らないって、もしかして……。
だとしたらこれがおいしいはず。
迷っているフランに真也が近づいて言った。
「オムライスはご飯に卵がのってておいしいぞ。」
フランはその言葉でオムライスに決めた。
カレーライス、パスタ、オムライスがそろいどれもこれもフランには
光輝いて見えました。そしてオムライスを一口食べてみました。
なんておいしいことでしょう。
口の中でふわふわな卵とケチャップのご飯が合わさってとてもおいしい。
フランは残さずすべて食べあげました。
真也の疑いはどんどん増していきました。
食べながらもいろんな話をして楽しい時間を過ごしました。
そしてお会計。みんなの真似をしながら、初めてお金を出してオムライスを
買ったのだ。
「これがお金で物を買うということなのですね。」
優希がびっくりしながらいってきました。
「フラン、あなたそんなことも知らないってどういう生活してたの?
海外にいたって買い物ぐらいするでしょ。」
「たしかにフランは知らないことが多すぎる。俺も知りたい!」
拓斗も詳しく知らないのでフランのことをもっと知りたくなっていたのです。
フランが困っていると真也が助けてくれた。
「じゃあ、優希は俺のことどれくらい知ってるんだよ。拓斗だって。」
「結局みんなそれほど人のことなんて知らないだろう。言いたくないことも
あるだろうし、言えないこともあるだろうし、まあとにかく焦らなくても
いいんじゃね。少しずつで。」
あのチャラい真也がフランをたすけた。
ドックン!!
――真也さんやさしいのね。
また、胸の奥で音がしたわ。なんなのかしら。
そして、フランは小人族のことを内緒にしていることが申し訳なくも思っていた。
真也のおかげでフランの話はしなくなり、違う話で盛り上がりました。
帰ることになり外にでると、からすがたくさん止まっていました。
拓斗が言った。
「なんか今日、カラス多くない?この間なんてフランにカラスが襲いかかって
きたんだよ。」
『カアーカアー、カアーカアー。』
「嫌だ、なんか怖いんですけど。」
優希も言った。
――今日はやけにカラスも多いし……。
真也は拓斗の話をきいてますますフランを疑った。
カラスが泣いているなか4人は帰っていった。
フランは初めてお金で物を買うことができて、貴重な体験をして満足していた。
最後、拓斗とわかれ家に入るところでつばめのパトラがやってきました。
パトラの足に筒がついていてその中に紙が入ってました。
紙を手に取って読んでみると国王からの伝言でした。
【一度王国に帰還せよ!】
とのことでした。
家に帰り智美さんに伝え、一度王国に戻ることになりました。