駄目なアレと癒しの族長
我慢してるけど、ちょっとここらで叫びたい!
アレのばかやろー!なんで地球から魔素消しちゃったんだよー!
風呂入りたい!
和食食べたい!
小説読みたい!
ハンバーガー、チキン、ピザ、デリバリー頼みたい!
はぁはぁ、よし。ガス抜き完了。
頑張ろう。
気持ち切り替えて、異世界ライフ頑張ろう。
この村で学んだ事は沢山あって、色々と地球との違いに戸惑った。
その一つが種族。
私の種人の成人は百歳と言われるが人種の成人と意味が違う。
地球で言うなら百歳迄は義務教育期間。
その後、各々が覚えたい事を伸ばしていく高校や大学の様な期間が五百歳迄続き、大人として子をなせる年齢がそれ以降。
つまり五百歳以降に結婚出来る。
しかしお酒とか飲めるのは百歳から。酒精の強い酒がまだ無いから飲める。もし地球の様なアルコール度数の高いお酒があったとしたら五百歳迄飲めないのかもしれない。多分、だけどね。
地球で言う人間は、こちらでは人種。
能力的には普通、ただ繁殖力は高いし肉体的な熟成年齢も早く十五歳で成人し結婚出来る。
まぁ、日本も昔は結婚早かったしね。この世界も貴族とかの人種は結婚が早いらしい。
獣人種は獣の種類で成人年齢が違う。
見た事ないから詳しく知らないけど猫っぽいのとか犬っぽいのとか爬虫類みたいなのとか本で見た。
日本人で思い浮かぶ耳が尖ってる所謂エルフは森人種と呼ばれてる。
この星を設定した神は【種】を種別に使っていてファンタジー定番のエルフとかだと通じない。
まぁね、エルフやドワーフとかって地球の中でしか認知されてないんだろうね。
神の世界の地球の認知度って低そうだし。
んで、この世界で驚いたのは種人は勉強熱心だった事。
図書館があり、図鑑とかある。勿論貴重なのである程度の年齢にならないと利用出来ない。
子供用に絵本とかもあり、文字の学習に使っている。ラノベの影響で勉強とか貴族の話だと思ってたよ。
娯楽の小説とかの本は無い。そこがちょっと残念。文字を覚える為に子供用の絵本もあるのに娯楽の為の本は無い。もしかしたら小説を書いたり読んだりする文化が無いのかもしれない。
でも魔法の本とかは読むと面白い。ただ読んでも魔法は覚えれないし使えないけど。
各種図鑑は誰が作成したのかと思うくらい色々な事が載ってる。
この付近の事だけじゃ無く世界規模の内容なのには驚いた。
定住してる村人以外に、里の外に住んでる種人も居るらしくてその人たちが調べたのかな?外の人たちが何をしているのかは今はまだ分からないけど追々分かるのだろうなと思ってる。
だって私ってば、百歳を迎えてやっと魔力操作が出来る様になった低レベルの種人だしぃ。
あははははははは。
うん、言っててなんか虚しい。
今日も村の中心にある世界樹を背に魔力操作の練習。
世界樹の周囲は濃い魔力が満たされている。それを僅かに感じれるようになったら、魔力操作が出来る様になった。
魔法としては、まだ火を人差し指の先に一瞬だけ灯せるだけだけど。
(なーなー。まだ外に出ないの?)
(出れる訳無いですよ。はぁ、魔法使うのってこんなに難しいとは…)
(それは、地球人は魂に魔力が浸透してないからだよ。ボクの所属する神の世界は魔法が当たり前でどんな生物も魂に魔力が満たされている。生まれ付き魔力に対して適性があるのさ。でも生粋の地球人の君は魂に魔力がない。すっからかんなのさ。ゲーム出場者は出身者の魂状態でゲーム内の難易度が変わるからねー)
(えぇぇ。ちょっとそんな事聞いてないんですけどぉ)
驚いて指先に集めていた魔力を拡散してしまう。
「あぁ、また集め直し…」
世界樹をキッと睨むと、私は目を閉じてまた指先に集中する。
この世界樹が神との通信デバイスなのは前に神から聞いた。と言うことは世界樹から地球神に映像が見えている可能性もあると思ったからだ。
(そんなに睨まなくても…。最初に言った筈だよ。魔法を扱えるようになるのは難しいと)
やっぱりこっちが見えてるんだ。色々残念な所があるけどアレも地球神だもんなぁ。本当に残念な神様だけどね。
(おーい。聞いてる?)
しかし、魔法が扱えないその理由が、魂に魔力が満たされて無いとかだとは…
(むむむ、魔力かぁ。ねぇこの感じだとまだまだかかりそうな気がする)
(だよなぁ百年では難しいか…いやまだ諦めるには…いや、もう無理か…)
(え?ちょっと!何ブツブツ言って…)
ープツン
いきなり神との接続が切れる。
ちょっと!なんなのよー!
それに、あの神の所属する世界は全て魔の魂を持ってるのなら地球はどうやって人が生きてるのだろう。アレは言った『魂に魔力が満たされて』と。
地球は魔力が無い世界。
だけど人は生きている。地球人の魂には魔素が無くて、でも生きてて。
あーもう、この矛盾はなんなんだぁー。
魔素とか魔力とかを知る事が先かな?
本に書いてあるかもしれない。
ちょっと広い部屋と椅子と机のある小部屋一室ずつのこの家が図書館。
まぁ、館じゃなく部屋だから図書室だよね。
でも、ここの世界だとこれでも本は多いらしい。
本来なら子供用の本以外は持ち出し禁止なのだけど、私だけは別。
雨の日や雪の日以外なら、世界樹の周囲で読むのなら持ち出し可能。
というか基本的に日中は世界樹の傍で過ごしている。
赤ん坊の時にこの村に入った時に、族長がそう決めたとかで私が幼児の時は母も仕事を外でしていた。
母は織物が得意で、世界樹の傍に機織り機を設置して子守りをしていた。
その影響か、私も系とかハイハイの頃からカジカジやにぎにぎとか遊んでたっけ。
っと思い出はこのくらいで、本を探してっと。
「ま、まりょく〜ま〜そぉ〜」
適当なメロディーを口ずさみながら本のタイトルを見ていく。
「あら、魔力の本を探してるの?」
その声にびくっとしながらもペコリと頭を下げて挨拶をする。
「族長さん、こんにちは。少しで魔力の事を知れば魔法が使えるようになるかなと思って」
「そう…ね。一つ昔話をしましょうか。外でお茶でも飲みましょう」
族長はそう話すと、図書館を出て世界樹の近くのベンチに向かって歩き出した。
私も後をついて歩く。
族長はベンチ横のサイドテーブルの上にある茶器に魔法で水を入れ湯を沸かす。
余りにも綺麗な動作に私が見惚れていると、族長さんは袖の袂から袋を取り出し、その中から茶葉をパラパラと湯の中に入れるとベンチに座る。
「ほら、ルエナ。ここに座って」
「は、はい」
茶葉が開いたのを確認して族長はお茶をカップに注ぐと私に飲むように勧めた。
お茶を一口飲むと、ハーブの香りが鼻腔をくすぐる。
「美味しい…」
「先代に教わったオリジナルブランドですよ」
ふふふと優しく微笑む族長さんは、惚れてまうやろー的な母性がありながら美しく、これアニメとかだとある種の人がハートを撃ち抜かれるのは確実だなぁと思ったのは秘密。
「さて、今から話すのは種人しか知らない事です。私たちのこの星は神が創造したのは知ってますね?」
族長さんに私は小声で「はい」と答える。ここら辺の話は前に勉強している。私が理解しているかの確認かな?
「この星の最初の生き物として私たちの先祖はこの地に降り立ちました。大変だったそうですよ」
私がこくこくと頷くと、族長は話を続けた。
「生きていく上で協力は必須です。初代はこの星の基礎の器となる為に魔素を体内に取り込むのが使命でした。魔素はこの星の至る所に含まれてます。空気中、地中、水中や生物にも含まれてます。何かを食べたり飲んだりすると体内に魔素が取り込まれます。それを魂の器が吸収し魔臓腑にて魔力として使い易く変換され魔力袋に溜まり魔法が使えるようになるのです」
「ふぇ?魔素で魔法を使うんじゃないんですか?」
「魔素があるだけで魔法が使えるなら、植物が魔法を発動しちゃいますよ?魔素が溜まって限界値になったら爆発や燃え上がったり水を撒き散らしたりするかもしれません」
やだ、それ怖い。急に燃え上がる花とか木とか安心できない。
「だから、魔臓腑が必要なのですね」
「ルエナは理解が早いですね。生まれた時のルエナは初代のように魂の器に魔素が空でした。この星には神から魂の器の魔素の浸透度が違う人が沢山送られて来ます。ルエナもそんな神の意思により送られて来たのでしょう」
あー。うん。その神の意思だよ。そっかゲームの駒は元の星の魂の器の状態で参加するから、そんな違いがあるのか。
「ルエナの魂の器に魔素が溜まるのは時間が掛かるますが、慌てずゆっくりいきましょう」
そう話すと族長は、ふふふと笑った。
「はい」
そう答え私は、にへっと笑う。
その後お茶を飲んで族長との話は終わった。
うん、暫くはこのままの生活が続くならゲーム順位は高くなるね。ポイント順位は最下位だろうけど。
読んでいただきありがとうございます。
主人公もストレス溜まってきてます。
◆◇◆◇◆◇プチ解説◇◆◇◆◇◆
この世界は地球と似た植物とか動物は居ますが、魔素の関係で味とか違います。
ゲーム星は一番位の高い大神が作った星がベースです。
神様組合の星は大神の星をベースに各々の神が作ってます。地球も植物、動物のオリジナルは大神のです。