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勇者上京(5)

 四人の紹介のあとココ姉とは一旦別れ、早速デニスとバーレントの二人に案内され白亜の城を行く。

 城内に入ると赤い絨毯が敷かれており、今まで歩いたことのない柔らかさに思わず驚きの声を上げてしまった。出会う兵や使用人がすれ違うたびに頭を下げていくのも驚きだ。

 城内の静けさも相まって緊張が高まってきた時バーレントが会話を振ってくれた。


「勇者様はベルゴルンに来られるのは初めてでしょうか?」

「はい。村からでたのも初めてです。」

「ではあの出迎えはさぞ驚かれたことでしょう。さながら凱旋のようでしたね。」

「あんなに大勢の人を見たのは生まれて初めてです。魔法も始めて見たし一日驚いてばかりで正直くたくたです。」

「はは、ヴィンセントさんの魔法は桁違いですからね。」


 バーレントは落ち着いていて村にいない感じの大人の人だ。眼鏡も格好いいと思う。だからずっと引っかかっていることも聞いてくれるかもしれない。


「バーレントさん。その勇者様って呼び方は止めてもらえませんか。大人にそう呼ばれると違和感が凄い…と言うか俺まだなにもしてないのに()()だなんて。」


 戸惑いを正直に伝えるとデニスが大きく頷きながら同意してくれた。


「わかります!俺も昇格して班長って呼ばれた時はなんていうか、こう何かが凄かったっす!」

「お前と一緒にするな。」


 デニスはローブをまとっていても隠し切れない肩幅と、制服をはち切らんばかりに主張する(おそ)るべき大胸筋をもった男だ。挨拶もそこそこに『筋肉スゴイデスネ』と漏らしそうになってしまったくらいだ。


「俺は、勇者様って呼ばれるのそんなに悪いものじゃないと思うぜ。」

「私もデニスと同意見です。‘名は体を表す’とも言いますから慣れて損はないと思いますよ。まだ実感がないのも無理はありませんが、大精霊様から選ばれるということが既に栄誉あることなのです。もっと誇られても宜しいかと。その代わりに堅苦しい話は止めましょうか。」

「そうそう気楽に行こうぜ!」

「ああ!」


 それからは村の話をしたりしながら何度か階段を上って客室に到着した。そこは書斎と寝室が二間続きになっていてトイレや浴室もあり俺の家が二棟もありそうな程の広さだった。


「椅子が柔らかい!」「ベッドがテーブルよりデカイ!」「壁から水が出る!?」


 俺が部屋をはしゃいで見回っているとデニスがにやにやと笑いながらバーレントを見ていた。


「どうかした?」

「バーレントが上京してきた時も同じような騒ぎようだったなと思い出してな。」


 今の落ち着いた雰囲気からは想像が難しく半信半疑でバーレントを見ると「隠すようなことでもありませんから」と言葉を続けた。


「私も貧しい地方の出身なので。」

「バーレントは貴族じゃないのか?姓があるからてっきり。」

「お恥ずかしい話ですが、我が家はいわゆる没落貴族というやつで魔法使いの家系だというだけで細々とやっているんです。特に私は三男で長兄とは扱われ方が違かったのです。なので勇者様の気持ちが痛いほどよくわかります…!」


 そういうとバーレントは握りこぶしをつくり震えた。


「ダンもこんな部屋に入ったら泣いて喜ぶかもな。」

「ダン様はヴィンセントさんの用事が済み次第こちらに来ると思いますよ。確か近くの客間だった筈です。」

「そっか。」

「ただ勇者様とは違いダン様がこの城に滞在する可能性は低いかと。」

「なんでだ?」

「基本的に城内は王族とその親族やご来賓の方々を迎える場所なので、王が勇者様の家族ではないダン様の長期滞在を許されるかは難しいかと。」

「そんな、同じ村から来たのに!…勇者様ご一行ってわけにはいかないのか?」

「決めるのは王だしなぁ。俺たちじゃ進言すら許されねぇ。」


 思い返せばヴィンスも、家族に家と職を用意するとは言ったけど一緒に暮らせるとは一言も言っていなかった気がする。だからココ姉も離れた客室に連れていかれたのか。


「ヴィンスの野郎…嵌めやがったな。」

「私をお呼びでしょうか勇者様?」


 突然の声に驚き振り返るとそこにはヴィンスとダンが立っていた。


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