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勇者上京(4)

 窓を震わせるほどの歓声に背中を押されながら街の中心地を抜けて王城へ続く白亜の橋を渡る。同じく白亜城門をくぐるとそれに合わせて一斉に音楽が奏でられはじめた。白と赤を基調にした服を着込んだ兵たちが整列し俺たちを迎い入れた。


「これはこれは勇者様!よくぞ参られました!」


 ヴィンスを先頭に馬車を降りると眉毛の鋭い男が近づいてきて突然馴れ馴れしく俺の手を取った。率直に言って気色が悪い。満面の笑みをした男は順にココ姉の手も取ろうとしたので慌てて男の手を払いのける。それと同時に歓迎の音楽が不自然な調子でに鳴り止んだ。

 男は一瞬鋭い目つきで睨みを効かせてきたがあの魔眼の後では何も感じない。不愉快さも隠さず睨み返してやれば、フンと鼻を鳴らしながらヴィンスの方を向き直って口を開いた。


「ヴィンセント殿!貴殿は君命に従い勇者候補を連れ帰った筈だがぁ?!」

「サントス・グアハルド大佐。こちらにいらっしゃる御方こそ唯一の勇者候補様です。」

「本当にこの品性の欠片もない子供が勇者候補なんだろうなぁ?」

「えぇ、私の命を賭けて相違ありません。」

「では貴殿がその責任を持って(とうと)き者に礼を欠くとどうなるのかとしっかりと躾たまえ!」


 男は唾を飛ばしながら捨て台詞を残して立ち去っていく。さっきまでの歓迎の雰囲気は消し飛び演奏隊はどうしたものかと右往左往している。兵はあの癇癪に慣れているのか顔色一つ変えず隊列を乱さずじっとしていた。


「察しの良い勇者様でしたらお気づきかもしれませんが、ベルゴルンサブレを廃番にしたのはあの男です。」

「納得。ところでこの雰囲気……俺のせいだよな。」

「否定はできませんが、お陰で収穫もありました。勇者様が気に病まれる必要はありません。」

「偉ぶったオッサンを怒らせただけなのにか?」


 俺の質問にヴィンスは答えない。


「さて、私は勇者様の登城を王へ報告しに参らねばなりません。城の者が客室まで案内致しますのでそちらで暫しのご休息を。夜には謁見となりますのでそのご準備もお願い致します。」

「俺は具体的に何をすれいいんだ?」

「ただ王から問われたことだけに答えれば問題ありません。」

「あの、私はどうしたら。」


 ココ姉が心細げに言うとヴィンスが片手を上げて整列した兵へ向き直った。すると列の後方からヴィンスと同じ漆黒のローブに身を包んだ男女が二人ずつ前へ進み出てくる。四人は手を胸に当ててお辞儀をした。

 女性はアリーチェ・カッソーラとマイレ・ハールス、男はバーレント・ヘイマンスとデニス・ジャーマンと名乗った。


「私の部下たちです。城にいる間は彼らがお世話をさせて頂きますのでご安心ください。では後ほど。」


 そうして俺とココ姉はそれぞれの客室へと案内されることになった。


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