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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

魔王と勇者

作者: 兎神遊

「勇者よ、魔王を打ち倒し、人族に魔物の脅威から救ってもらえないだろうか」


それは突然のことであった。

適正があるということで村から王城に呼ばれて来たらなんと自分が勇者だというのである。


王様の話では魔王は人族の街を襲い極悪非道な行為を日々しているのだとか。

世界の8割は魔王の手に落ちているという話なのだ。


「わかりました。必ずや民のためにこの身を持って魔王を討ち果たしましょう」


王様との謁見も終わり、一息ついたのだった。


それから数日後、パレードが行われ人族の街から発つのであった。

誇らしい思いで胸をふくらませながら。



人族の街に寄ると、そこでは祝福の声が聞こえた。

あるものは景気がいいからと酒を振る舞い。

あるものは旅路は大変だろうと食料をわけてくれた。


どうやら、勇者である自分に援助を援助をするように通達が来ているらしい。


人族の街も続く訳でもない。

魔族が住まう魔領域にたどり着いた。

草木は枯れ、土は死んでいる。


少し進むだけで強い魔物と出くわすのだ。

このような環境であるなら生きることさえ困難だろう。


それでもただひたすら進むと魔族の街にたどり着いた。

そこでは子供が少なく、大人達もやせ細っていた。


「人族が、此処に何の用だ!!」


石ころを投げられ、血が流れる。

振り向くと魔族の子供であった。

敵意むき出しだが、どこか怯えているようにも見えてしまった。


「ごめんね、君たちの王様に会いに来たんだ」


子供の背にあわせてしゃがみこみ、お腹がすいているだろうとわずかだが残っていたパンを子供に与えた。


周りのものは信じられないものを見るのかのような目でこちらを見る。


「食べてもいいの?」


少し不安げなその声は人族の街では抱くことがないほどの悲痛さを感じた。


「うん、君はこれを食べてもいいんだよ。我慢などしないで好きなだけ食べるといい」


カバンからあるだけの魔物の肉を取り出し、調理を始める。

興味を持ったのか、魔族の人達が集まってくる。


「これはなにをしているんだ?」


1人の男が言った。


「これは調理をしているんです。そうじゃないとここら辺の魔物の肉は食べられませんから」


魔族の男は信じられないかのようだった。

ここらいったいの魔物は食べられないのだと思っていた様子だった。


「もしよろしかったらみなさんも食べましょう」


そう言うと勇者はカバンの中身にある食材を全てだし、魔族の人々に振る舞うのだった。


数日がたった。

そろそろ出発しないといけない。


食料はこの数日間で集め、そのあいだ街の魔族に調理を教えた。


街を出ると、歓声が聞こえた。

「ありがとう」「また来てくれ」「勇者バンザイ」


など、褒めてくれる言葉ばかりだった。


「魔族の街にもいい人はいるものなんだ」


後ろを振り返ると、街の人々が手を振っていた。

手を振り返し、この場を去る。


そこから数日後、魔王城にたどり着いた。


「魔王に会わせてほしい」


「勇者、この先へ進みたくば私を倒してみせるがいい」


何度も聞くことのあった言葉だ。

魔王城に近づくにつれ、この言葉を耳にすることが多くなったのだ。


「グアァァァァァァァ!!」


勇者の剣が相手を貫き、見事勝利を収めることが出来たのだった。


魔王の間。

ひときわ大きな扉を開け、その先にいるのは魔王ただひとり。


「きたか、勇者め」


威圧感のある声に体が萎縮するのを感じた。


「覚悟しろ!」


剣を構え、魔王に対峙しようとするのだが・・・


「まあ待て。勇者。一つ提案がある」


魔領域の惨状が脳裏に蘇る

調理を知らず、魔物を食べてしまうもの

毒とは知らず、植物を食べてしまうもの

此処にたどり着くまでに何度も目にしたのだった。


「私と手を組めば

貴様に世界の半分をくれてやろう。


どうだ?組む気は無いか?」


勇者には人族に親を殺されたと泣きつく子供が脳裏に映った。

人族にも同じような境遇があるのだと理解しているのだ。



それから数日。

勇者は魔王城を離れ、人族の住む街へ向かうのだった。



「というわけで、魔王に世界の半分を取られてしまったけど・・

大丈夫、こっちの世界にいる限り安全だよ!

勇者の僕が絶対に守るから!」


人族のためだった。

世界の半分とはいえ生きるのならこちらの方が俄然生きやすいのだ。


だが、どこからか石ころを投げられる。


「うわ!?」


その方向を向くとそこは信じられない光景が受かぶ。


「裏切り者!!」「お前はもう勇者なんかじゃない!!」「お前のせいだ!!」


ナイフを片手にこちらに走ってくる影があった。


「ぶっ殺してやる」


その影が近づいてきた瞬間、剣を一閃する。

その影は人族の子供であり、首から上がなくなっていたのだった。


「僕は人族を守りたいだけなんだよ。

だから・・・



安全でいたいのなら僕の言うことを聞けよ」


蜘蛛の子を散らすように去っていく人族達。

そんなことは気にせず王のもとへ向かうのだった。




数日後、勇者は毒を盛られ衰弱し、広場の中心に磔にされて人族から石ころを投げられ続けた。

その後カラスに目玉を、内蔵を食い散らかされて死ぬこととなった。



その事を知った魔王は・・


「人族は悪魔だ!!

早く滅ぼすべきだろう」


「人族は滅ぼす!!」「勇者の敵だ!」「討つべし!」


勇者の死を知り悲しみの中戦争が始まった。

戦争が執着したあとそこには人族の姿は1人も残っていない。


勇者の死んだ場所にはそっと魔物の角が置かれているのだった。

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