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現代猫又事情  作者: ごるらぎ
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3.現代猫又事情 その1

3.現代猫又事情 その1


ふっとましろの体から力が抜けた。スマホに触れていた前足が落ちる。

俺は慌てて膝の上のましろを抱きかかえた。


「ましろ?」

少し重く感じるましろの体からは力を感じない。


さっきまで話していたましろが動かない。

「あれ?ましろ?ましろ?」

そう言って揺さぶったとたん、ましろが淡く光りだした。


初めは蛍の淡い光のようだった。それがやがて目も開けられない程明るくなり、その光はましろに吸収されるように静まった。


そして俺の目の前には二本足で立ちあがり、しっぽが二又に分かれたましろの姿があった。


片手をあげて「これからもよろしくな!」と言うましろは妙に人間くさくて、猫又と言うよりは中におっさんでも入っているのではと思ってしまう。

さっきの光ったのも気になるが、猫又と言うものが実際どんな生き物なのか想像がつかない。

普通の常識で言うと猫は喋らない。そう、喋らないのだ。

だけど、目の前の猫又になったましろはと言うと…


「悠!おなかすいた!」と目の前にあるカリカリなぞ目に入っていませんと言わんばかりにご飯を要求してくる。

しかも、俺が食べていたご飯が良いと騒いでいる。


これが前の可愛らしい声でにゃーんと言ってくれれば良いものの、何故か猫又になったましろの声は立派な成人男性の声になっていた。

それはもう、激しく可愛くないのである。


「俺はもう20さいなんだから、悠が飲んでたビールだって飲めるんだぞ!」

と、上手に前足で開くのは冷蔵庫。

前からスライド式のドアは開けると思っていたけど、まさか冷蔵庫すら開けられるとは!


「こらこらこら、ましろ!お前、猫又になった途端図々しいな!」

冷蔵庫を物色しているましろを抱きかかえて、ドアを閉める。


「そもそも、猫にアルコールはいかんだろ!カリカリ食っとけよ!」

そう言うとましろは不機嫌そうに唸ったあと、ネコハラだ!と叫んだ。


良く分からないが、猫又ハラスメントの略らしい。

要は猫又になれば、猫の時に食べられなかった物も食べられるようになるのに食べさせてくれないだとか、一人で散歩に行っても大丈夫なのに出してくれないとか…


なんだかブツブツ言っているけれど、どうやら食事の面では今までみたいにはいかないらしい。

「食費が増えるじゃないか!」

そう言うと、ましろは嬉しそうに大丈夫、大丈夫と繰り返した。


「戸籍も貰ったし、ちゃんと働きに行くよ!」

お金稼げるようになったら、お肉を食べに行こうねとましろは変な踊りを踊っている。

口ずさんでいるのは猫又音頭らしい。


働きに行く?は?どこに?

って、戸籍ってどういう事?


精々一時間位のあいだに詰め込んだ情報が突拍子もなくて、頭がパンクしそうだ。

「ましろくんや。踊ってないで、ちょっとそこに座りなさい」

ご飯は話のあとです、とましろを目の前に座らせる。

香箱座りをしたましろは目線が低くなってしまうので、俺はベッドに乗せた。

「なあに?」

小首をかしげるましろは可愛いが、ここでモフっていては話が進まない。


「そもそもな話しな、ましろ。俺は猫又について何も知らないし、知らされていない。これは事実だ。戸籍や仕事が出来るって話もどこまで信じていいのか分からないしな」

うんうんと頷くましろ。

飼い主の欲目でなくても可愛い。


「ただ、ましろが猫又になった事によってこれからずっと一緒にいてくれるのだけは分かった。…少しずつ、少しずつで良いから教えてくれ。俺が知らない事が多すぎだ」


今まではましろと会話なんて夢物語だった。

具合が悪かった時、何度話せたらと思ったか。

機嫌良く日向ぼっこをしている時、ただいまと声をかけた時、全ての返事はにゃーだった。

でも、今は言葉が通じるじゃないか。


ましろの言いたい事も、俺の言いたい事も。


そう言ってましろを見つめると、ましろは再びうんうんと言った後。

「じゃあ、今度一緒にNMN課に行こうよ!」

と笑って言った。


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