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ドッペルゲンガー
図書室内のカウンター席に座って本を読んでいると、助手が慌てて部屋に入ってきた。
「師匠大変です!私師匠のドッペルゲンガーを見ちゃいました!」
「そうですか‥」
「そうですか‥て何でそんな呑気なんですか!?信じて無いんですか!?」
「いえ信じても良いですよ貴方のその話。貴方が私の話を聞いてくださるのであればね」
間も無くして、図書室入り口付近の階段から足音が聞こえてきた。助手は師匠の後ろで叩きを持って掃除していて、私は読書に集中している。それを見たドッペルゲンガーは何としても気づかせようとしたのか、カウンター前に立ち、そこにあった馬のオブジェを触ろうとしたその時、私はこう言った。
「おい、何を触ろうとしている」
それに反応したのは助手とドッペルゲンガーの2名だが、私が言ったのは助手の掃除しようとした場所に対してだ。
「え?引き出しの錠前が錆びているので掃除しようと思ったんですけど?」
「私は自分の大切な物も他人の大切な物も許可も無く触るのは嫌いなんだ。全員即刻出て行け」
そう言うと、図書室内の人間は私だけとなって事無きを終えた。