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#08 愛12歳の興味

小学校で係決めをすることになった。


私はいきものがかりになりたいと思っている。


人は好きになれないのになんで動物は好きなのか自分でもわからない。


今は春。窓の外を見るとサクラの花びらが風に吹かれて舞っている。


係決めの結果、私と私のことが好きな心くんが一緒にいきものがかりをやることになった。


「いつだって僕らは一緒にいる運命なのです」


決まったときに心くんが私にそう言ってきたのが気持ち悪かった。


心くんにコイスルオトメはいない気がする。


いきものがかりの仕事は飼育小屋の掃除とエサあげをすることだ。


「僕はここにいるのでひとりで掃除してください」


心くんは動物が嫌いなのに私と一緒になりたくてこの係になったのだ。


「ここでエールを送ってますから」


そう言っていたが説得して何とか手伝ってくれるようになった。


「僕は恋愛小説みたいな恋が愛ちゃんとしたいんです」


小屋の掃除中に心くんがそう言ってきた。


少し前に「地球のどこに行こうと会いにいくよ」みたいなことを言われたが、それも小説の一節なのだろうか。


私との恋は諦めてほしいので心くんにこう言った。


「私にとって心くんの存在は真昼の月程度だから」


私の言葉に心くんはすごい落ち込んでいたので話を変えた。


「この町では夏にホタルノヒカリが見られるんだよ。それに天然のプラネタリウムもあるしね。


「ずっと住んでいた東京にはない良さがこの町にはありますね」


そんな話をしていると私の肩に鳥が糞をした。


気に入ってる洋服が汚れたがなくもんかと涙をこらえた。


ティッシュで心くんが糞を取ってくれて少しの間、顔が近づいた。


「僕たちふたりのかげぼうしがくちづけしているように見えますね」


「バカ!」心くんはいつも一言余計だ。



夏になり心くんから動物園であるハナビに誘われた。


「一回だけだよ」動物目当てで私は行くことにした。


「ブルーバードちゃん。幸福をありがとう」


嬉しそうに飼育小屋の青い鳥にそう話しかけていた。


ハナビ当日になり駅で待ち合わせして動物園に向かうことになった。


「二人きりのデート緊張しますね。強い風が吹いているから気を付けてください」


心くんが私に気遣いをしていると、ひとりの女性が現れた。


「『このままではちこくしちゃうよ。でも今走り出せば間に合うだろう』と思って急いで来たのよ」


小学生だけの外出は心配なので誠一さんの友達の友さんが来てくれたのだ。


「聞いてないですよ。ふたりでのデートは幻になりましたね」


動物園に近い駅に着き私はこう言った。


「バスもあるけど節約のために歩いていこう」


数分歩いたところで雨が降ってきた。


心くんは傘を忘れたので私の赤いかさにふたりで入った。


予報では雨と言っていたのを知りながらわざと忘れたのだと予想した。


少し経って雨が止み虹が出た。


「虹、綺麗だな。あっもうすぐだ」動物園が見えてきた。


「今あたいのことをモンスターって言ったわよね?」


もうすぐだという言葉が友さんにはモンスターに聞こえたらしい。


「明日ハレルカナ?と昨日は心配してましたけど、これから晴れそうですね」


動物園に着いて色々な動物を見て回っていたらカンガルーがいた。


「あなたの名前は今日からジャンプよ」


友さんがカンガルーに変な名前を付けていた。


「指にキラリと輝いているのはダイヤモンドですか?」


心くんが友さんにそう聞いていた。


「ニセモノのダイヤモンドなのよ。心くんあたいのこと気になるの?」


「うるわしきひとでいい人なので気になります」


暗くなってハナビの時間が近づいてきた。


「あたいは帰りたくなったよ。ハナビ見ないで帰りましょうよ」


友さんが空気が読めない発言をしたがハナビを全て見た。


そして心くんとの帰り道で「笑顔になれない愛ちゃんの分も隣で笑ってたいんだけどいいですか?」というプロポーズみたいなことを言われた。


とても気持ち悪かったので無視した。


「今日はありがとうございました。とても楽しかったです。おやすみなさい」


心くんと別れて私は家へと帰った。


私の白いダイアリーには久し振りに文字が書かれた。


私は大事なことを言わない性格である。


なので心くんは私のことをあまり知らないままだ。

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