#06 愛14歳の仮面
中学校に入ってから出会った純子ちゃんという女の子がいる。
純子ちゃんは私の唯一の友達である。
中学1年生の時に同じクラスになって2年生の今も同じクラスだ。
純子ちゃんは無口で私以外とはほとんど喋らない。
私とも少ししか喋らないので純子ちゃんのことをあまり知らない。
私は純子ちゃんに秘密にしていることがある。
それはひとりが好きで本当は友達などいらないということ。
周りの目を気にして友達のふりをしているだけなのだ。
これはずっと秘密のままにしておこうと思う。
もしもこの秘密を知ってしまったら純子ちゃんは悲しむだろう。
浅い関係なので純子ちゃんと学校以外で遊んだことがなかった。
純子ちゃんは誘ってくる性格ではないので私が誘わないと一生遊ばないで終わる。
なので純子ちゃんを遊びに誘うことにした。
でも誘うことにした一番の理由は友達のふりだというのがバレるのを恐れてのことだ。
「今度の日曜にカラオケに行かない?」
「うん」
私と同じで笑うことが出来ないのかとずっと思っていたが微かに笑っているように見えた。
誘われて嬉しかったのだろう。
カラオケ店に2人で来た。
「カラオケ初めてなんでしょ?」
「うん」
「私から歌うね」
「うん」
私はバラードを気持ちよく歌った。
久し振りであまり上手に歌えなかったが楽しかった。
「次は純子ちゃんが歌ってよ」
「いい」
「知ってる歌あるでしょ?」
「ない」
今のところ2文字の言葉しか発していない。
でもこれはいつも通りなのだ。
「音楽とか聞かないの?」
「うん」
結局私がずっと歌いっぱなしで時間が過ぎた。
沈黙もあったがなんとか乗り切ることが出来た。
ひとりが好きで喋るのが嫌いな私にしては頑張った方だ。
友達のふりは意外と疲れるものだ。
遊びに誘わなければよかったと少しだけ思った。
でも笑顔が見られたので良かった。
遊び終わってさよならしようとした時に純子ちゃんがこう言ってきた。
「今日は誘ってくれてありがとう。私は愛ちゃんが大好きだよ」
こんなに喋ってきたのは初めてなので驚いた。
「私も大好きだよ」
人を好きになれない私だが傷つけないために嘘をついてしまった。
とても心苦しくなった。
こんな気持ちになるのなら友達なんかいらない。
もう周りにどう思われようとひとりで行動しようと思う。
でも、いまさら純子ちゃんと一緒にいるのをやめたら変だ。
だから友達のふりはやめないでいると決めた。
カラオケに行ったことによって私と純子ちゃんの距離がすごい縮まった。
前より純子ちゃんが喋ってくるようになり心を開いてくれていると感じるようになった。
寂しい人だと思われたくなくてやったことが私を苦しめていた。
嘘なんてつくものじゃない。
でも友達になって損したことばかりではない。
良かったこともいくつかある。
そのひとつが純子ちゃんが笑ってくれたことだ。
純子ちゃんが私の最初で最後の友達になるだろう。
そして純子ちゃんが私の最初で最後の友達でよかった。