表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/21

#05 愛15歳の受験

屋上で寝るのが昼休みの習慣となっている。


極上の眠りとまではいかないがとてもスッキリする。


六畳の私の部屋で寝るより快適だ。


牧場は近くにあるがにおいはあまりしなくていい。


目標の20分間の睡眠を目指して私は目を閉じた。


臆病な私は突然誰かに起こされて怖くて飛び起きた。


特徴のある低い声で見ないでもそれが心くんだとわかった。


酷評をみんなにされるくらい不細工な寝顔を心くんに見られたと思うと恥ずかしかった。


「何だよ!寝てたのに」


寝起きは誰だって不機嫌になるものだ。


「怒りたいのはこっちの方ですよ。愛ちゃんに言いたいことがあるので言っていいですか?」


色々考えたが怒られる心当たりがなかった。


どうせ自分勝手な理由で怒ってるのだろうと思い、また寝ようとした。


「寝ないで聞いてくださいよ」


「わかったよ」


仕方がないので話を聞くことにした。


「僕は愛ちゃんが大好きですが嫌なところがひとつあります」


私の嫌なところなんて全然興味がなかった。


「それは頭が良すぎるところです」


「あっ、そう」


思っていた以上にたいしたことではなかった。


「愛ちゃんが頭のいい高校に行くって聞いて頭がよくない僕はどうしていいかわからなくなりました」


高校までついてくるのかと少し気持ち悪く感じた。


そして私はこう言ってやった。


「バカな心くんとは一緒にいたくないから頭が良くて良かったよ」


その言葉を聞いて心くんは急に喋らなくなった。


少しの沈黙の後に背を向けて走りながら心くんはこう叫んだ。


「猛勉強して受かってやる」


私はその後少し寝てスッキリした。



私は志望校に受かったのでいい気分で登校した。


席に座っていると心くんが急いで教室に入ってきた。


心くんはいつも遅刻ギリギリに登校してくる。


自分の席には行かずに小走りで心くんは私の前まで来た。


「報告があるんです」


悪い報告だろうと思って私はこう言った。


「想像できるよ」


しかし予想外の言葉が返ってきた。


「実は愛ちゃんと同じ高校に受かったんですよ」


「本当に?」


私はとても驚いた。


バカも努力をすれば頭が良くなるのだ。


そして好きという気持ちは凄い力を持っているのだと感じた。


「2つの意味で愛のおかげですよ」


「……そうか」


私のためになら何でもしそうで怖くなった。


「塾には行かずに家で毎日5時間勉強しましたからね」


気持ちは伝わったが意味がないことだ。


「同じ高校に行っても無駄だよ。私の気持ちは変わらないから」


「未来のことなんて誰もわからないですよ。片想いがいつか両想いになると信じていますから」


心くんはとてもおめでたい人だ。



私は中学に入学して休学もせずにきた。


もう卒業だが心くんとは別れられない。


私には夢がない。


これからは高校に登校しながら方向を決めていく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ