#04 愛16歳の冤罪
女子トイレに入ろうとすると同じクラスの不良の3人組がいた。
その3人組のリーダーがバケツに水をくんでいた。
私はだいたい想像がついた。
たぶんトイレの個室にいる誰かに水をぶっかけるのだろう。
その誰かはいじめから逃げるために個室にこもったのではないだろうか。
真面目な人が通う高校だと思っていたがそうではない人ばかりだ。
「出て来ないと水かけるからな」
「やめてください」
個室の誰かの声は弱々しかった。
3人組が怖いので入口で入るのをためらっているとリーダーが私に気付いた。
「わっ、ロボだ」
私は全然笑わなくてロボットみたいだから、みんなにそう呼ばれている。
「何してるの?」
していることは知っていたが何かを言わないとダメな空気だったので私はそう聞いた。
するとリーダーは私に謝ってきた。
「ごめんなさい。もうしませんので睨まないで下さい」
睨んだつもりはなかったがそう見えたみたいだ。
私はいつの間にか怖い人というイメージがついてしまっていた。
それは笑わない顔。
そして自習の時間にうるさくて寝られなかった時に1回怒ったせいだろう。
怒ると怖い私だが普段はとても臆病なことを誰も知らない。
鍵を開ける音がして個室の扉がゆっくりと開いた。
そこには教室で隣の席の恋ちゃんがいた。
「愛。助けてくれてありがとう」
親しくないが呼び捨てだったのが少し気になった。
「助けようとした訳じゃないんだけど」
「それでも嬉しかったよ」
思い出したのだが少し前に恋ちゃんが3人組の中のひとりの靴を隠しているのを見たこと。
たぶんそれがバレていじめられたのだろう。
自業自得である。
恋という女はかなりの変人だ。
不良の靴を隠すなんて頭がおかしすぎる。
すると恋ちゃんが突然こう言ってきた。
「千円貸してくれる?」
これは助けられてすぐに言う言葉ではない。
それに仲がいいわけでもないのに。
どこまで変人なんだろうか。
「いいよ」
私は悩んだが貸してあげることにした。
お金は返って来ないと考えた方がいいだろう。
私のクラスで盗難があった。
盗まれたのは文くんの財布。
担任の先生は私を疑っていた。
なぜかいつも犯人扱いされる。
顔のせいだろうか。
職員室で先生が問い詰めてきた。
「何でこんなことをした?」
「やってません」
「財布はどこだ?」
「知りません。私じゃありません」
何度違うと言っても信じてくれなかった。
そこに恋ちゃんが来た。
「さっき拾ったんですけど、盗まれた財布ってこれですか?」
「聞いていた財布の特徴と一致するよ。愛、ごめんな」
恋ちゃんが怪しすぎる。
落ちていたとしたらもっと早くに拾われているはずだ。
盗んだのに拾ったと嘘をついているのではないだろうか。
私に千円借りたりお金に困っているのは明らかだった。
不良の3人組も怖いが恋ちゃんがこの世で一番怖い。