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#20 愛00歳の誕生

ずっと赤ちゃんが欲しかった。


でも妻の体が弱かったのもあって赤ちゃんがなかなかできなかった。


僕は一生できないのではないかと諦めかけていた。


そんな時に妻のお腹の中に赤ちゃんがいるとわかった。


僕は待ち望んでいたので大声を出して喜んだ。


赤ちゃんができるまでとても長かった。


それからずっと生まれてくるのが楽しみで仕方がなかった。


何をしていても頭の中は赤ちゃんのことでいっぱいだった。


そして僕たちの赤ちゃんがついに生まれた。


だが生まれてきたのは1000グラムの未熟児。


小さな体。


小さな顔。


小さな手足。


小さくはあるが生まれてきてくれたことが嬉しくて涙が溢れた。


障害が残らないか心配だが全てのモノに感謝したい。


「私と誠一さんのどっちに似ているかしら?」


妻が僕に笑顔で聞いてきた。


「お前に似てる気がするけどな」


「私もそう思うわ。でも目は誠一さんよね」


「そうかな」


「絶対そうよ」


何気ない会話だが楽しかった。


「でも大人になったら変わるかもしれないな」


「目だけじゃなくて全部誠一さんに似たらどうしよう」


「それはないな。きっとお前のような整った顔になるよ」


「そうだといいわね。大人になるのが楽しみだわ」


赤ちゃんが大人になることを生まれてすぐに考えてしまう。


それも親の宿命なのかもしれない。


僕には赤ちゃんができたらしたかったことがあった。


それは名前を付けること。


結婚する前からずっと名前を考えていた。


色々と考えた結果、究極の名前にたどり着いた。


その名前は美輝だ。


かなりいい名前だと思う。


「美しく輝くと書いて美輝っていうのはどうかな?」


妻に自信満々に提案した。


「いい名前だとは思うけど私にも付けたい名前があるわ」


「何?」


どんな名前でも僕が考えた名前には勝てない。


「子供の頃から付けたいと思っていた愛って名前はどうかな?」


僕が名前を考える遥か前に妻が付ける名前を決めていたことに驚いた。


「ありふれた名前だよね」


「でも理由を聞いたら誠一さんも納得するわよ」


妻は今までに見たことがないほど元気に喋っていた。


「理由って何?」


「みんなを愛して、みんなに愛される人になって欲しいからよ」


「いいね」


僕の心は揺らいでいた。


愛という名前も悪くはないだろう。


「愛で決定でいいわね」


「うん」


結局納得して愛にすることにした。


幸せとずっと仲が悪かったが愛が生まれてから仲が良くなった。


このまま幸せが僕にまとわりついてくれればいいのにと思った。


そんな時に妻がガンだと分かり、愛の心臓が悪いと分かった。


僕は幸せに絶交された。

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