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#02 愛18歳の嫌悪

物流センターでのアルバイトが終わったので自転車で家へと向かった。


自転車のライトの微かな光と時々通る車の光だけしか明かりがない。


私は暗くて何もない道をゆっくりと走っていた。


走りながら考えていたのはある女のこと。


その女は自分の子供ではない私を叩いたり怒鳴ったりする。


決して悪いことをしていないのに。


一緒に住んでいるので毎日が地獄である。


女のことを考えれば考えるほど怒りが増していった。


女に出来れば会いたくない。


でも自転車のペダルを漕げば漕ぐほど女へと近づいていく。


私はずっと誠一さんと女が別れてくれるのを願っている。


その女は可愛いが性格が悪すぎる。


誠一さんといる時に女はいい人のふりをしている。


だから誠一さんは悪女だと気付いていない。


私が誠一さんに悪い女だと言っても信じてくれない。


いろいろ考えているうちに私は家に着いた。


自転車を止めて家の中に入ると女がいた。


「愛ちゃん、お帰りなさい」


「ただいま」


優しい声で女が迎えてくれた。


優しいのには訳がある。


それは誠一さんがいるからだ。


誠一さんがいる時は猫を被っているのだ。


少し時間が経って誠一さんがこう言った。


「邦子。愛。ちょっとコンビニでタバコ買ってくるから」


私は誠一さんが出掛けることになってしまって焦った。


一緒に行くと言ったが待っているように言われた。


地獄の時間の幕開けだ。


「お前逃げようとしたよな。二人きりがそんなに嫌か?」


「いいえ」


小さな声だったが怒鳴った時よりも怖く感じた。


「おい仏頂面女。誠の金でホストクラブに通ってることバラしてないよな」


「はい」


徐々に声が大きくなってきた。


「私が言うこと全部聞けよ」


「はい」


私はどうしても逆らうことが出来なかった。


そして女は大声で私にこう言った。


「邪魔だからどこか行け」


私は何も言い返せなかった。


「消えろ。死んでください、お願いします」


女はそう言った後に私の頬を殴った。


その言動に私の怒りのスイッチが入ってしまった。


ずっと悪口を言われ続けて我慢が出来なくなっていた。


私はキッチンにあった包丁を持ち出すと女に包丁を向けた。


女は驚きすぎて声が出ない状態だった。


逃げる女を追い詰めると下腹部を思い切り刺した。


赤く染まった絨毯に横たわる女の横で私は立ち尽くしていた。


そこにタバコを買いに行っていた誠一さんが帰ってきた。


誠一さんは血が滴る包丁を持った私を見てこう言った。


「何をしてるんだ」


「どうしよう……」


私はようやく我に返った。


誠一さんは慌ててすぐに救急車を呼んだ。


「邦子、大丈夫か?」


女に誠一さんが話しかけたが反応はない。


その後、誠一さんには怒られたが自分がいじめに気付かなかったのもいけなかったと謝られた。


女は命に別状はなかったみたいだ。


私はもちろん警察に連れていかれた。


私の頭の中にはずっと驚いた女の顔が残っている。

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