第5話 出会い
いざ、中に入ってみると、想像と全然違っていた。
全体が木のぬくもりで包まれてて、ブラウンで統一されたレトロな内装に、妙な安心感が沸いてくる。
すると、カウンターの置くから「いらっしゃいませ〜。」と声が聞こえた。
その人のことを見たとき、ドキっとしてしまった。
背中あたりまである長くてサラサラした髪。鼻筋がはっきりしていて、少し薄めの唇。
そしてパッチリしていて、少しつり上がっている力強い目で、僕たちのことを見た。
「あら、高校生なんて珍しいわね。さぁ好きなとこに座って。」
思わず僕らは、「ハイっ」と言ってしまった。
カウンターから離れ、一番奥の席に座った。
「注文決まったら言ってね。」
と言われ、慌てることもないのに、メニュー表の一番上にあるものを言った。
「か、カルボナーラでお願いします!」と僕が言ったら、浩志と将も同じものを頼んだ。
「はい♪カルボナーラ3つね。珈琲は食前と食後どっちにします?」
「え〜っと、食後で。」2人ともまた合わせてきた。
「はい♪少々お待ちくださいね。」と言って、カウンターに戻った。
普段、喫茶店なんて行かない僕らにとって、何か少し大人になった気分だった。
「やばい!綺麗すぎ。」
「大人の女って感じだよな。」と、浩志と将が盛り上がってる。
そのとき僕は彼女のことを、横目でちらちらと見ていた。
華奢な体にエプロン姿の彼女・・・
「はい、お待たせしました。」
三つの皿が置かれ、僕らは一斉に食べた。
「あっ!うまい♪」
「『KILL TIME』なんて店だから、どんなのが出るかと思ったよ。」浩志が失礼なことを言う。
「おい!何言ってんだよ!」僕は浩志に注意する。
すると女性が近づいてきて、「ふふっ♪『KILL TIME』ってね、『暇つぶし』って意味なのよ。暇つぶしにこの店でも来てね、っていうことで私のおじいさんが名づけたの。」と教えてくれた。
「あっ、そうなんですか。てっきりグロいものが出てくるかと。」と恥ずかしそうに浩志が言った。
食後の珈琲もおいしかった。サイフォンという器具を使って、丁寧にひとつひとつ煎れた珈琲は深くほろ苦い味で市販のコーヒーとは格別だった。
珈琲を飲んでるとき、将がこんな提案を出した。
「じゃんけんで負けたやつが、支払いのとき、あの人の名前と年齢聞こうぜ。」
「お〜!いいね。乗った。恋ノ介もいいよな?」と浩志。
正直あの人に興味がある僕は、嫌そうな雰囲気を出したが、内心はもちろんOKだった。
「じゃんけん・・・ぽん!」浩志と将がパー、僕がグー。
「はい、決定〜♪」
「絶対聞けよ、恋ノ介!」
「わかったよ・・・。」
レジに向かい、会計を済ませた。もちろん今日は約束通り、浩志が払ってくれた。
「ありがとうございました♪」と言ったのに、帰らない僕たちを見て
「どうしたの?」と女性が聞いてきた。
背中をゴツっと叩いて急かす二人。
「あの、名前教えてくれませんか?」
「私?『立花 葵』よ。あなたは?」
「あっ、僕は『田崎 恋ノ介』。それでこの2人が『佐々木 浩志』と『松岡 将』です。」
「あと・・・」少しためらって、
「良かったら年齢も教えてください。」
クスっと笑って、「女性に平気でそんなこと聞いちゃいけないよ。」
「えっ、すいません。」
もしかして嫌われた?!どうしてくれんだよ!!
悲しそうな僕の顔を見て、
「ふふっ♪何歳に見える?」と言ってきた。
「えっと・・・27,8歳くらいですか?」
「はははっ♪実は34歳なのよ。おばさんでしょ。」
「本当ですか!?いえ、全然若く見えます。本当に!!」
「ありがとね。また食べにきてね。」と言われ、僕らは
「絶対また来ます!!」と言って外に出た。
「またここ来ようぜ。」
「うん。絶対にな。」
「KILL TIME・・・略してキルTだな。」
「いいねぇ♪キルティ集合って言ったらここ。」
「OK。じゃぁまた明日学校でな!」
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