第2話 春休み
部屋で一人になったら、なおさら由香のことを考えてしまう。
この怒りを何かで紛らわせなければ。
床に散らばっていた漫画を手に取り・・・床・・ゆか・・由香。どんだけだよ、僕は。
何度も読み終えた漫画を読むが、10ページほどですぐに読むのをやめた。
何か他にやることは・・・物置に入っていたギターを手に取る。
高校に入ったときに買ってもらったが、コードが覚えれずにすぐ飽きたのだ。
不細工な音が部屋中に鳴り響く。その音は全く僕の心を静めさせてくれなかった。
そしてまた、ギターは物置の中に。
他にやることは。
勉強は・・・もともとやる気ないし。
テレビは・・・昼ドラとか主婦が見る番組しかやってないし。
やることが見つからず、僕はベッドに横になった。
ケータイの待ち受け画面に写っている由香を見て、大きなため息をついた。
「何で別れるんだよ、バカが。」と独り言。
そのとき、手に持っているケータイが鳴った。
もしかしたら!?と、期待したがすぐに裏切られた。
画面に映る「佐々木 浩志」という名前に、またため息をつき、電話に出た。
「もしもし、何?」
「何だよ、そのテンション!遊ぼうとしたのによ。どうせ由香とケンカとかだろ?」
少しためらったが、この怒りを紛らわすために言った。
「・・・別れた。」
「えっ、別れたの!うはははっ。お前すぐ終わりそうだったもん。」
やっぱりな。浩志に言っても笑いものにされる気がしたし。
まぁ深刻にされるより、笑ってくれる方が楽でいいや。
「2ヶ月持たなかったかぁ。ってか何で別れたの?」
「付き合ってみたら、想像と違うってよ。」
「うははっ!痛いとこ突くねぇ。つまらなかったってことっしょ。」
「そういうわけじゃねぇだろ!あいつがガキだっただけだよ!」
こんなこと言ってる自分が馬鹿だってわかってる・・・けど言わなきゃ気が済まない。
「こんなんでキレてるお前もガキだけどな。うははっ。」
お前も痛いとこ突いてくるな。
「もうガキとは付き合わねぇ!キスしかしてないのにさぁ。」
「童貞のくせによく言いやがる。」
「うるせ〜〜!それは禁句だ!!!」
「うはははっ♪キレんなよ。これからみんなで遊んで忘れようぜ。」
確かに。ここで一人でいるよりは・・・
「う、うん。そうだな。」
「じゃぁとりあえず俺んちな。」と言って、電話が切れた。
浩志に笑われたのはイラっとしたが、少し由香に対する怒りが軽くなったのは事実。
やっぱり一人で抱えてちゃいけないな。これからパーっと遊ぶか。
制服から私服に着替えて、まだ煎餅をかじっている母に
「友達んちに行ってくる〜♪」
と、さっきと全然違うテンションで外に出た。
「青春だねぇ。」
昼ドラを見終わった母は、やっと昼食の片づけを始めた。
春休みは、予想以上に僕の気持ちを和らげてくれた。
春休み中は由香と会うことがなかった。それが救いだった。
ただ友達に会う度に、「別れたの!?」と言われるのには困った。
浩志のやつ、言い過ぎなんだよ!!!僕の口から言ったのはお前だけだぞ。
だけど、いつかみんなにバレること。学校が始まる前か後か、ってだけだ。
なんだかんだで、浩志って憎めないやつなんだよな。
あと、ディズニーのチケットは彼女がいる友達にあげた。
破って捨てようとしたが、なんかもったいなく感じて・・・かっこ悪い。
こういうところがダメだったのかな・・・いや、考えるなっ!もう忘れろっ!!
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