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4話目で僕の人生最終回な気がします。

(なんでこんなことに…。)

カラは一つ溜息をついた。

(どっかで聞いた気がする…口は災いの元って。)

本当にその通りだ、とカラは思った。

まだ身体の節々が痛む上に、目の前の隊長…サクヤはやる気満々といったように鼻唄を歌っている。

(ていうか僕はどこについて行ってるんだろう…。)

さっきから歩きっぱなしだが石壁の廊下が続いているばかりで目的地に辿り着かない。

目の前で銀髪をさらさら揺らしながら歩くサクヤにカラは問いかけた。

「…どこ行くんですか。」

「どこって…動けるところだ。

あんな狭いとこじゃ暴れられないからな。」

と、サクヤがようやく突き当たりの戸に手をかけた。

ギギ…と軋んで木の扉が開く。

戸が開いた途端むわっと蒸したような人の熱気が顔に当たった。

ガンッ! カッ!

そして、絶え間無く金属音が響いてくる。

「ここは…?」

カラは珍しいものでも見るように部屋の中をきょろきょろと見渡した。

「見ての通り、訓練場だ。」

床も壁も木で出来た大きな部屋の中で十何人の男達が剣を合わせている。

と、カラがあっけに取られて見ていると、ふと木刀を取り落とした男がこちらに気づき、声を上げた。

「特攻隊長だ!」

その声に、他の男達も手を止める。

「どーしたんですか、サクヤ隊長!珍しいですね!」

本当に隊長なんだ…

妙なところで感心しているとサクヤがよく通る声で言った。

「あー、ちょっと新しく入れる奴と殺るから、どいてくれると嬉しい。」

途端、カラに視線が集まる。

なんというか…驚きの目が多い。

「うわ、あのひょろっとしてんのが…?」

「大丈夫かよ、あいつ…。」

(お願いだから、そこ!そのかわいそうみたいな目やめて!)

いたたまれない思いをしながら男達が出て行くのを待つ。

ヒソヒソ言い合いながらも上司の頼みだからか、ものの数十秒で試合場はガラン…と静まり返った。

サクヤは満足げに部屋を見渡して仁王立ちした。

「…よし!じゃあお前の用意できるまで待っててやるよ。」

「用意も何も、僕は…って武器なんですか、それ。」

カラはサクヤが肩にかつぎトントンとリズムをとっている白い棒を見た。

それはサクヤが部屋を出る時に掴んで持って来たものだ。

スラリとしていて細く、つるつるしているからか滑り止めに握る部分に布が巻かれている。

(しかも、なんかついてる…?)

棒の端に横に飛び出すように薄い板が少し張り出している。

(なんだ、あれ…。)

観察するカラの前でサクヤが口を開く。

「わたしの得物だ。これを使うがいいか?」

「…はぁ。いいも何も無いですけど…。」

よくわからないままカラが曖昧に頷くとサクヤは壁を指差した。

「お前も使いたければ好きなの、使っていいぞ。」

「好きなのって…」

(そもそもやらないっていう方針は既にないのか…)

しぶしぶ、壁に目を移す。

サクヤが指差した方、壁には多種多様な武器がかけられている。

カラは試しに持てそうなハンドアックスに手を伸ばした。

「っおわっ!」

ドンッ!

(重っ!?)

カラは思わずハンドアックスを取り落とした。

「…なんだお前、足の指でも切り落としたいのか。」

「切り落としたい訳ないでしょ!

自分が想像以上に非力だったんですよ!」

(あ、これ自分で言って傷つくわ。)

腕をふるふるさせながらハンドアックスを元の位置に掛け直すとカラはふぅ、と息をついた。

「…で?そろそろいいか?」

「あの…本当にやるんですか?僕、本当に武器の心得なんてないですよ?あのナイフだって使えるか怪し」

だんだん眉間にしわを寄せながらカラの話を聞いていたサクヤは我慢できないというように口を開いた。

「…あー、もう!」

ブォン

風を切る、というより割る音がした。

「うひょあ!」

思わず変な声を出し飛びのくと真横に白い棒振り下ろされる。

「お前はさっきからごちゃごちゃごたく並べてばかり、めんどくさいんだよ。」

「ええっ、始めっ!?」

「そう、始め!めんどいから始め!」

「そんな殺生な!」

屈んで問答無用に一閃された棒を避ける。

何かが掠ったような気がした。

パラリ…

床に数本黒髪が落ちた。

(…え?僕の髪…?)

恐る恐る上を見上げる。

「刃…!?」

薄い板から、仄かに蒼い光をまとった鋭い刃。

それがカラの髪を斬ったのは容易に想像できた。

「ああ、そうか。言うのを忘れていたな。」

サクヤはその大鎌を構え直した。

「わたしの得物はコレだ。」


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