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あの日も岩木と鈴本の2人から私の仕事に付いて聞かれたのに、あくまで「医療系」で通した恭ちゃんと私。

それに対して元気を取戻した岩木が放った

「何やねん、医療系って。そんなに隠したいって・・・やっぱし・・、イメクラかッ?!」

に飲んでた水を吐き出した恭ちゃん。そしてそんな岩木の頭を間髪いれずに叩いた鈴本さん。

そんな3人を見て驚きつつも、《イメクラ》の意味を考える私。


「冗談だ!悪い、悪い!」等と謝罪する岩木さんに『イメクラって?』・・・と聞かずにはいれなかった私。

その後、詳しく説明しようとする岩木さんを「アホか!」と叱り付けた恭子に下らない事は聞かんで良い!と叱られて意味は分からず仕舞い。

「ホントに男共は!!・・」と言いながら私たちに説教し出した恭子の前で私の仕事に関しての話は何処かに消えていた。


その後、何故か岩木さんからよく電話がかかってくるようになった。

初めはBBQの事についてだった電話が、いつの間にか人生相談をしたりされたり・・・。

不規則な時間でも電話に出る私に気を許したのか、夜中2時ぐらいでも平気で電話が掛かってくる事に戸惑いはしたが、真剣に悩む岩木を突き放す事は出来なかった。


スタッフの会合後、みんなで食事をして解散した後も鈴本と3人で、時には恭子を含めた4人で色ンな話をした。

親、兄弟、仕事、恋愛・・・。

私だけが悩んでるンじゃ無いなぁと思いながら、仕事に関わりの無い同年代の異性の友達の存在がとても有難く感じて、何処かで感じていた空虚さを慰められているように感じていた。

だから親密になってしまって余計に口に出せなくなっていた自分の仕事だった。

やりがいのある仕事だったが、男性からは敬遠されがち・・・とも聞いていた。だから同じ医師と結婚する人が多い・・とも。

同僚との結婚を嫌っているつもりはない。

私を見て、私という人間を好きになってくれる人、お互いの短所も補っていけるような・・・なんて、夢をみているつもりは無く、どこかで信じていたかったンだと思う。

外見や条件でなく、馬鹿で鈍くさい私も丸ごと愛してくれるような人といつか出会える!って。



「さぁ、では聞かせて頂こうか!」

顎を突き出すようにして言う岩木の迫力に '何で黙っていたンだ?!' 急に体が冷えた気がしたが、そこは気を取り直してあくまでも医師としての顔を向けた。

「失礼しました。ご家族の方ですか?」

「はぁ! おまえなぁ、後でどうやっても応えてもらうからな!覚悟しとけよ。 

皆川さん・・・、あの人は1人暮らしで家族はいないって聞いてる。

家のボードに貼ってあった社協の俺の携帯番号に救急隊員から連絡があったから俺が来たってだけ」

「そうですか・・。今は呼吸も安定していますが、お年も召されていますので、今晩はICUで様子を見るつもりです。このまま状態に変化が無ければ、明日の午後には一般病棟に移って、明後日には退院出来るかと思います。」

「呼吸器に問題があって、風邪には注意をしてるって本人からは聞いてたケド・・。」

「そうですね・・・」

と受け答えしつつ、どうやってこの後を切り抜ける?!と考えている私もいたが、何処かでホッとしている私もいた。助手についてくれていた新人医師が

「立石センセ、手が空いたので休憩に入りましょう!」

と言う声を受けて、岩木に先に行くように促して、私もべンディングコーナーへ向かった。


「で、'医療系'ってのは医者って事な訳やな!」

「間違いでは無いと思うケド、医者は医療系の仕事で・・・」に被って

「この場に及んで屁理屈言うか!初めに隠したのも理解出来ひンのに、親しくなってからも黙ってるなんか全く分からん!!」

「親しくなって、余計に言いにくくて・・・。それに今日は偶々、救急に入ったケド本当は私はここに所属してないし、診察も特別な許可が無い限りは行えないし・・・。

だから、その ね、言い出しづらかったって言うか、その・・・」

「恭子と2人してホンマに、仮にも先輩の俺らを騙そうとしやがって「騙すなんて大げさ・・・」」

言いかけた言葉を岩木からの眼差しに黙る。


「紘也は?知ってる?」

「まだです・・・」

「今度、奢ってくれるンやろなぁ。 高いもん探しとくからな♪」

「ハイ、ご馳走させていただきます」

「ホンマ、お前らのが稼ぎが断然高いのに、ずっと奢ってたなんて俺らどんだけ良い人やねん!!なぁ?!」

確かに今までも「自分で払う!」と言う度に「良いって、黙って奢られとけ!」の言葉に甘えたままだった。

お金を使う時間が無いような生活をおくっていたので、支払う事に躊躇した訳では無かった。只 何故か大事にされているような感じがして嬉しくて、強くは言っていなかった。


「ゴメンね、岩木さん。

でもやっと言えて良かった。肩の荷が下りた感じ。」

「アホか!隠すような要らんことするからや!」

ベシッとおでこを叩かれたケド、嬉しいと!感じて笑ってしまった。



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