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話を進めるのは難しいと実感中です。
その日、院内で休憩していると恭ちゃんママである看護部長から声を掛けられた。
「美晴ちゃん、恭子が迷惑を掛けてるみたいで、ごめんなさいね。」
「スイマセン。私、部長が恭子さんのお母様だと気付いて無くて。恭子さんにはいつもお世話になってて・・・。」
「良いのよぉ。でも美晴ちゃん、医者になったのね。大変だと思うケド頑張ってね。スタッフの事は気にせずにね。狭い女の世界でだから、どうしても色々あってね。独身で若くてキレイなお医者様!なんてなると尚更ね。」
アラサーの私を‘若い’と言ってくれるあたりが、流石!ママ世代。ありがとうございます。
受けていた嫌がらせも分かってくれてた事に安堵の吐息をはいて、チョット込み上げて来る物を必死の思いで抑え、
「まだまだ至らない事ばかりですケド、頑張ります!」
と笑って答えた。
「向うで研修も終わってる立派なお医者様なんだから、大丈夫よ。後は素敵な旦那様探しだけね。」
「はぁ、まぁ、それは追々・・・。」
そっちのほうが難しいかも・・・と思いながらも、今夜行われるミーティングの事をフッと考えた。
「恭子と一緒に頑張って、良い男を捕まえて、さっさと結婚でもしなさいね!」
恭子の母はそう言って、ナースステーションのほうへ颯爽と立ち去った。
良い男ねぇ、どんな人が良い男なのか、自分がどんな人を求めてるのかさえも分からないのに・・・。
最近は何処へ行っても‘結婚、結婚’って言われるケド、コレばっかりは努力しても、相手が居ないかぎりは出来ないのに!!
最近では同僚の医師から誘われる事も多かったが、これ以上看護婦を敵に回したくない美晴は勉強を理由に断る日々が続いていた。どこか下心有りで誘われているような気がして、頷く事もできない。
派手な外見とは違い、お酒が全く飲めず、駆け引きしながら食事なんて疲れる・・・と美晴は自分の枯れ具合に笑いがこぼれた。
ブーンと携帯が震えた。
ンっ、なんだ・・・と思いながら確認すると、恭子からだったので慌てて確認する。
‘ゴメン。風邪ひいてダウン。今日の会合はパスで・・。’
エー、恭ちゃんが来れないって、親しくない人達ばかりなのに・・・。
どうしよう。行きたくないなぁ・・。
でも上ちゃんとみっちゃんが来るし、行くしか無いよなぁ。
心細い・・・と見かけからは想像も付かないヘタレっぷりで、急に足が重くなったように感じていた。
ワイワイと既に集まっているスタッフの話声が聞こえる。
「こんにちは・・」と頭を下げた美晴の腕をリーダーらしき岩木が「待ってたよ、貴重な女子!」と言いながら取った。
「はぁ・・。あの、恭ちゃんは調子が・・」
と言い掛けた美晴の言葉に
「風邪やろ!?聞いてる、聞いてる。仕事も早退するぐらい調子が悪かったらしい。鬼の霍乱やな!」
「その代わりではないですが、後で女の子が2人参加予定で・・・」
途端に「ウオーッ!!ヤッター!」
と上がる声に少しひきつつも、促されたイスに座る。
「何か飲む?」
と声を掛けてくれた方を見ると、缶コーヒーを差し出しながら微笑む童顔の可愛い顔。
「エッと、順子ちゃんのお兄さん。 スイマセン、頂きます。」
「お兄さんは止めてよ。紘也で良いよ。」
「そんな訳には・・・私のほうが年も下だし・・・。」
と戸惑っていたら「「こんばんはー」」と言う女の子の声がして、心もとなく感じていた美晴はコレ幸いと彼女達に駆け寄った。
ユックリですが、私が今は忘れたドキドキ感を伝えられたら 嬉しいです。