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やっと出会えました。

「恭ちゃん、久しぶり!!」

変わらない彼女の姿に嬉しくて、私は笑顔で声を掛けた。

彼女は「ヨッ!」と見た目通りの男前な返事をくれ、私に早く座るように促した。

久々の気心の知れた友人とのお茶にテンションが上がり、話し出そうとした私にストップをかけた彼女は話し始めた。

要は今度、役所が補助金を出して商工会主催で行う大型のお見合いもどきの実行スタッフの女性が足りないので、手伝って欲しいとの事だった。


「美晴が研修なんかで忙しいのは分かってる」の言葉には私の方が「エッ!?」と思わず固まってしまった。

「県立病院の今の看護部長、アレ、私のオカンだから!」

「エーーー!!!聞いてませんケド。でも確かに斉藤って言われてたような・・・」

「そんなんイチイチ言わんやろ、親の仕事まで。でも県立病院の看護婦なのは知ってたやろ?!」

「聞いてた気はする・・・。でも看護部長って、確か看護士の一番えらいさんだよね。スッゴイねぇ。」

「スッゴイのはあんたでしょ。いイギリスに行った時も驚いたケド、医者ってあんた!!それも全くの内緒で!!」

「イヤ、コレには深くも無いケド、一応、理由があって。」

「文理コースに居た割には、そんなに理系に強くは無かったと思ってたケド?」

「もう、メチャ苦手だったよ。好きじゃ無かったし・・」

「で、何で医者?」

高校からの付き合いで気軽さもあるのだろう。身を乗り出すようにして聞く恭子に向うでのいきさつを話した。

「出たよ、美晴のお惚けが!何か流れに流された・・・と言うか。相変わらず美晴らしいっちゃらしい気がする・・・」

「ボケてないよ!!」

「美晴が知らないダケ!ずっと肝心なトコでボケてるンやから。ホンマ、医者なんて大丈夫なんだか・・・。患者さん・・・殺すなよ。」

「エー、恐いからそれ!止めてよ、マジで!」

「言葉遣い!高校ン時から成長したのは胸だけか?患者さんと話出来るン?日本語の敬語を知らないまま社会人になって、患者との会話は大丈夫なん?心配やわ・・」

尤もな意見に「申し訳無い」と言うしか無い私。


恭ちゃんは呆れ顔で、大きなため息を吐きつつも

「まぁ、しっかりやんなよ!自分で希望したから勉強もしたンでしょ?!」

と笑ってくれたので、私は慌てて「頑張る!」と言い大きく頷いた。

それを見ても納得はしていないように見える彼女は

「じゃ、そろそろ」と席を立った。

訳が分からずに「何処へ?」と尋ねると、

「良いから、良いから」と連れて来られたのは役所の支所内にある会議室だった。

時間外の役所は、とても薄暗く、それに慣れない場所に私は少しビクビクしながらも、

促されるままに会議室へ足を踏み入れた。


「オー、恭子、遅いぞ!!遅刻でぺナ1な。」と言う声が聞こえたと思うと、

スーツ姿、作業着、私服、ジャージ等の様々な格好をした8人程の男性が目に入った。

「ごめん、ごめん。助っ人を迎えにね。 立石 美晴ちゃん。私の高校の同級生、もちろん独身!」

はっ!?ナンチュウ事を!!恥ずかしくて彼女を見ると、ニヤリっと不気味な笑いを浮かべていた。


「オー、これはベッピンさんやな!」

「後輩か?」

「何してる人?」等と矢継ぎ早に尋ねられながら、私は何て答えれば良いのか・・・と考えていたが、

「仕事は医療系!散れ、野郎ども!」と恭ちゃんが答えてくれたので、ウンウンと頷いた。

その後は恭ちゃんの同僚や商工会メンバーの人達をドンドンと紹介されたが、相槌をうつだけで、いきなり8人程の男の人の名前と顔を一致させるには暫くかかりそうだなっと考えていた。


「で、これが鈴本 紘也くん。私らの1こ上で、鈴本 順子ちゃんのお兄ちゃん。覚えてる?」

と最後に紹介された人はどう見ても年上には見えない、まさに可愛い!って言葉がピッタリな、くっきり二重の笑い皺がまぶしい男の人(?!)だった。

カジュアルな細身のジーンズにざっくりニットの襟から覗くチェックのシャツ、どうみても20歳ソコソコの学生にしか見えないンですケド・・・と思いつつ、

「順子ちゃん・・・、何となく覚えてる・・気はする。」

と答えた私に

「順子の友達かぁ、それはやり難いな・・・でも、まぁヨロシク」

と彼は少し長めの前髪をかきながら笑った。



スタッフとして協力してくれる女の子がいないから困ってて、誰かスタッフに使えそうな人がいたら誘っておくように頼まれて、来週の会合の時間を聞いて、その日は別れた。


カジュアルなお見合い・・?まぁ結婚して子供がいる友達も居るし、当然かぁ・・・。

大学時代、新人医師として働いていたイギリスでも男友達は沢山居たけど、「彼」と呼べる存在にまでは進展しなかった。

デートもしたし、真剣交際を望んでくれた人もいたケド、日本を離れて、あれだけ窮屈だと思っていた日本の良さを知って、どうしても日本へ帰る!って思っていたら、深い付き合いをする気にはなれなかった。

日本ではどうせ派手だと思われるンだから、遊び尽くせば良かったか・・・と思ったりもしたか、根がマジメだからか、真剣交際に至るような付き合いは出来なかった!


彼氏かぁ。用が無くても電話したり、一緒に出掛けたり出来る人・・・。良いかもな。(そんなぐらいの認識しか無い)

仕事の事が落ち着いた今、何処かで寂しさを感じてるようにも思う。

どっかに居るのかな、私の理想の人は・・・。

年はイってもまだ何処かで王子様を求めてしまうのは悲しい性よね・・・と悶々としながらその日は岐路に着いた。


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