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『お疲れ様。忙しかった?』
昨日ぶりの鈴本の声。
友人だった時と変わらないはずなのに、何故か違って聞こえる気がする・・・。
「ウン、少しバタバタして・・・。ごめんね、電話出来んで」
『イヤ、気にしなくて良いよ。仕事後にお茶出来るか聞きたかっただけだし。
予定はどうなってる?』
「大丈夫。ドコでお茶する?」
『取り敢えずこっちに向かって。それ迄に決めておくわ。
夕飯を一緒に出来れば良いンだけど、会食の予定が入ってて・・・。ゴメンな・・・』
「イイよ、全然。気にしないで!じゃ、会社のほうへ行くからね」
そう言って電話を切った。
昨日の今日で、2人で会うって事に “付き合ってる”って感じがするなぁ~と思う。
鈴本の声に今までとは違う色気?!みたいな物を感じる・・・ような、感じ無いような・・・。
☆☆☆☆☆
鈴本の会社駐車場に着いた。
鈴本は自分の車に乗っていて、私に気が付き片手を上げた。
私は車から降りて、彼の車に近づく。
が、鈴本が電話中だと言う事に気が付き、車に乗る事を躊躇う。
私が車に乗って来ない事に気が付いた鈴本は、助手席側に体を傾けて、ドアを開けてくれた。
目で “ありがとう” を伝えて車に乗り込む。
鈴本が電話中なのをいい事に彼を観察する。
今日は細身のグレーのパンツにクレリック仕様の濃いブルーのストライプシャツ。
その上に一目で上質だと分かるニット、恐らくカシミアのそれは紺色。
腕にはパネライのゴツい腕時計。
お洒落さんだなぁ〜と見ていると、急に手を取られた。
「エッ」と声が出てしまって、焦って手を引き抜こうとしたが、逆に胸に抱え込む様に腕ごと引かれてしまった。鈴本はイタズラが成功したかの様に嬉しそうに笑っている。
私を真っ直ぐに見つめたまま、私の手の甲に頬擦りして、キ、キスをした。
夕べの事を思い出して、固まった私に気が付いているのか、いないのか・・・。
電話に相槌を返しながら、今度は私の手首を撫でながら匂いを・・・エッ、嗅いでる!?
嗅いでる!!
私は今度こそ我慢出来ずに腕を引き抜いた。
何をやってくれてるンだか、ホントに!!
「ゴメンね。待たせちゃって」
ソレから直ぐに電話を終えた鈴本が私に向き直って言った。
「大丈夫。でも忙しそうなのに平気なん?」
「忙しくても彼女とお茶する時間位は何とでもなるからね」
鈴本が連れて行ってくれたのはコーヒー専門店で、お店に入った瞬間、コーヒーの良い香りがした。
私は“本日のスペシャルブレンド”とオリジナルのチーズケーキ。
鈴本はシフォンケーキにお店オリジナルブレンドを選んだ。
店員さんが注文を復唱して、厨房へ向かったのを見て切り出した。
「鈴本くん、「ブーッ!!紘也って呼ぶように言ったよね!」」
チョットぐらい!!と思いながらも言い直す。
「紘也くん、もう岩木さんに言ってたンだね。イキナリ言われて驚いちゃったよ・・・」
「そりゃあね。何、アイツ電話して来たの?」
「アッ、ウン。電話くれてた時は出れなくて、折り返した時に言われてビックリした・・・」
「フーン、ソレっていつ頃?」
「エッとね、お昼休憩の時だから、14時過ぎでたかなぁ」
「フーン。14時ねぇ。彼氏の俺からの着信もあったはずだよねぇ!?
なのに俺に折り返す前に、岩木に電話しちゃうんだね、俺の彼女は。ねぇ、美晴さん・・・」
ヤ、ヤバイ!何か間違ったよ、絶対!!
鈴本の笑顔の後ろに黒い何かが・・・・!!!
ど、どうする?
背中にツーッと冷たい汗が流れた。




