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居酒屋


お酒も飲めないのに何でこんなトコで待ち合わせたかなぁ・・・。


恭子に誘われて来たは良いが、誘った本人は20分近く経った今も未だ現れない。

隣とは薄い板、通路からは暖簾で仕切られており、半個室の様な居酒屋だった事に安堵しつつ、先ほどから読んでいる文庫本に目を戻しつつ、居づらいわぁ~と思いながら大きな溜息をついていた。




「待った?!」


「待ったわ!約束時間から30分も経ってるし、1人で心細かったわ!!」


「え~年して何カワイ子ぶってンの?心細いって、一丁前のアラサー女が何言うてんの!」


恭子の余りの言いように言い返せない・・・。

恭子から誘われた食事だったのに、当の本人は遅れて来ても毎回この調子だ。

そう思ってもいても、返り討ちに合うのが分かっているので口には出せない。



「で、どうよ? 鈴本君とはその後?」


「何も無い。鈴本君は2人で出掛けても大して変わる事無く、あのままだし。私に興味があるとはとても思えん!

全く何も無いから!! ホンマにビックリするくらい何も無いよ!」


「手握ったり、肩抱いたりも?」


「ナイナイ。至って健全に友情をきずいてます。

アッ、でも、私が30歳を越えても独身だったら、嫁に貰ってくれるらしいよ・・」


「ハァ~?」



つい数日前に、電話で鈴本自身の口から『30過ぎてまだ1人だったら、俺が貰ってやる』と言われたのだった。

何の話をしていてそんな話になったのかも覚えて無いケド、彼は確かに『俺が貰ってやるよ』と今思えば、かなり上から目線で私に言ったのだ。


私は30歳なんて、もうすぐソコなんですけど・・・と思いながら、

「ホンマに?! 絶対?!」と彼に問いただしたのは覚えてる。


「30歳何か、もう直ぐやん? 今から付き合って、30で結婚って事じゃないの?」


「違うと思う・・・。付き合うとかの話になってないし」


「もう流れで付き合ってるって感じじゃないン?

毎日のように電話して、週に何度もデートしてるみたいやし」


「ウウン、付き合ってる感じでは無い。 いくら私でもそれぐらいは分かるし!

ア~ア、何か良い事無いかなぁ」


「出たよ!美晴の『良い事無いかなぁ』発言!!もう口癖になってない?!」


「エッ、そんなに言ってる?」


「言うてる、言うてる。 彼氏がおった時は聞かなかったから、やっぱ彼氏でも作るか、熱中出来るモンを見付けるかやね」


「そうかも・・・」



ブブッとマナーにしてあったスマホが震えて、鈴本の名前で着信を告げている。


「出たら?」


「ウン・・・」




「もしもし・・」


『アッ美晴? 今、平気?』


「恭ちゃんとご飯食べてる」


『そうなんや~、誘えよな!女だけで寂しいやろ?』


「そんな事無い、色々と積もる話があるし、2人で楽しんでます!」


『飲んで無いやろな?! 変なのにナンパされんなよ?』


「大丈夫です!2人とも車だし、しっかりしてるから!!」


『まぁ、斉藤さんと一緒なら大丈夫だろうケドな。

イヤ、明後日の夜、空いてたらご飯にでもって思ってさ。鍋でも食いに行こう!』


明後日は、知り合いの娘さんの家庭教師の予定が入っていたのを思い出したが、変更すれば良いかと思って、了承の返事をして電話を終えた。



「デートの誘い?」


「そんなんじゃ無くて、ご飯にでも行こう!って」


「私と一緒って知ってても、誘うのは美晴だけなのに?」


「それは!!」


慌てて否定しようとする私の言葉を「良いから、良いから!」とぶった切って、食事を勧められる。


その後は恭子の仕事の話、私の春からの勤務先や友人達の話で大いに盛り上がった。



恭子とはお互いに独身で、彼氏も居ない2人だからこうやって騒いで居られるンだと思う。

高校時代、私達にはもう2人、仲が良かった友人達がいた。

でも彼女達は既に結婚して子供もいる。

家庭を持つと、急な呼び出しに応えるのも難しくなるだろう。今、彼女達に会う時は専ら昼間にお宅に伺うようになった事からもよく分かる。



明後日は鈴本と鍋。

予定が埋まっていくのは嬉しい。余計な事を考えなくて済むから。


でもいつもはその日に『空いてる?』と連絡してくる鈴本からしたら、前もって誘うなんて珍しいなっとその時は感じていた。








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