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新年、明けまして おめでとうございます。
皆様にとって、穏やかで、実り多き年になります様に・・・。
「どうすると言われても、今まで通り頑張るだけ!それしか出来ないし・・・」
そう答えるしか今の私には出来ない。
働く環境が変わって、不便な事があっても自分に出来る事をするだけだから!
「俺が聞いてるのは仕事だけじゃ無くて、住む所とか生活環境!!」
アッ、そっちっね。
「ソレは取り敢えず、様子を見てから考えようなかなぁと。両親も1人暮らしには否定的だしね」
「じゃあ、春からも実家?」
「ウン。新しい病院で、全く分からない環境で仕事して、1人で家事もこなして生活するのが出来るかも全く判らないからね」
そっかぁと言ったきり、納得したのか何なのか考え込んでいる鈴本。
今、私が毎日出勤している県立病院に比べると、中央医療センターは病床数も多く、救急医療、高度医療分野の地域の基幹病院にあたる。
そこに在籍するって事は今までの出向生活とは全く違う毎日になると思う。
外来診療のローテーションに加わり、入院患者のケアに手術に携わって、夜勤をこなして・・・。
ウオッ!私ってばイケるかなぁ。
ここンとこの勤務環境は、言わば楽な、本当にお勉強中!っていう生活だったし、チョット不安・・・。
「何が不安?」
「エッ?!アッ?」
何時の間にか口に出てしまっていたらしい。
「で、何?」
「イヤ、病院が変わったら激務になりそうで、チョット不安かなぁって。
県病では直接患者さんと接する事は少なかったケド、次はそうはいかないだろうし・・・」
「基本は変わらないだろ?」
「ウーン、そうとは言えないかな。
外来診療に、オペも入って来るだろうし・・・。それに人間関係もね。
お付き合いでの飲み会なんかもこれからは避けられないから」
「病院で飲み会?!」
「そりゃ、一般企業とほぼ変わらないからね。
所属する部署ごとに懇親会も歓送迎会だってあるよ。まだ中央の事はよく分からないケド、社員旅行があったりする病院もあるよ」
「マジか?! 患者がいるのにか?」
「職員全員が参加する訳じゃ無いよ。交代制でその時に勤務してる人だって勿論居るケド、そんなず~っと休みなしで仕事する訳じゃ無いからね。みんな普通の人なんだから当然でしょうが!」
「医者が患者を置いて・・」とか何かブツブツ言ってる鈴本の意見に苦笑いを浮かべるしかない。
一般の人の考え?と言うか、理想?と言うか。
医者が持っているプライバシーの部分、ましては旅行や飲み会、ましてやコンパなんて事を許せない、理解出来ないと考える人がいるのも知っている。
鈴本がそうだったのは、意外だったケド・・・。
「何だよ?何か言いたそうな顔してるぞ!」
「別に・・。只、少し意外に思っただけ。
鈴本君、私の事で考えてみてよ。私だって個人生活は必要でしょう?
両親も兄妹も居るし、友達付き合いだってある。仕事が医者なだけで、それ以外は普通でしょう?」
「そう言われると確かにな。美晴で考えると、普通の綺麗なお姉さんだもんなぁ」
「でしょう!どんな仕事でも息抜きは必要だからね」
「綺麗なお姉さんはスルー?」
白々しくも笑いながら問う鈴本に、ニッコリ笑って言ってみる。
「間違って無いでしょう?!」
帰宅後に「どうだった?!」
と興味津々で聞いてくる母に辟易しながら、楽しかっただけを伝えて、お風呂に入る。
湯船に浸かりながら今日一日の出来事を思い受かべる。
鈴本と2人で一日過ごしてみても、穏かに過ごせるのは分かっていた事だ。
彼は優しくて、一緒にいると私まで優しく、穏かな気持ちになれる。
優柔不断な私に不快感を感じさせること無く、物事への決断を自然に促してくれる。
『これからどうしようか・・・?』
『何をたべようか・・・?』
そんな小さい事でも決めるのを戸惑ってしまう私を上手に導いてくれる。
彼を好き・・・なのだろうか?
イヤ、でもなぁ。
自分の気持ちが分からない。
好意はある!でも友情の域を超える程の物かは分からない。
自分の気持ちなのに情けないとしか思えない。
このまま変わらずにいる事は難しいかな?
もし鈴本に彼女が出来たら・・・?
それは困るし、イヤだ!
又 1人になってしまう気がする。
いつでも電話したり出来なくなってしまう!!
彼には私の近くに居て欲しい。
何て我儘で嫌な女なんだろう。
友達だったら、『最低!ハッキリしなさい!!』と間違い無く言うと思うような事を私がしている。
もし恭子が言うように本当に鈴本が私を好きなら・・・?
告白されたら・・・?
ってされても無いし、想像するだけ無駄かぁ。
ウワーッ、ホント、どうしたら良いのかなぁ。
今、もし付き合うなら、《いつか結婚出来る人》でないと!と思ってる。
只、今だけ良ければ・・・、先の事は考え無い!って云う付き合いをする気は無い。
『返って来るのは良いケド、一度は嫁に行って!』
と常々言っている母親の言葉に従うつもりは無いけれど、私にも何処かに運命の人がいると信じたい。
今日から通常ペースに戻りつつあります。
一度乱れた生活ペースを元に戻すのは大変です。