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「ダー、もういい加減にして!!
こっんなに電話してくる位ヒマなら来たらイイでしょうが!
5分と於かずに電話してくるな!」
私はイライラの局地で、思わず素のままの自分でそう言って電話を切った。
隣では岩木さんが肩を震わせて、笑いを堪えている。
私は無言で岩木さんを一睨みして、歩き出した。
その日は岩木と2人で、ある障害者施設のお祭に来ていた。
恭子は講習会、鈴本も仕事の都合が付かず岩木と2人だけでの参加になった。
岩木の仕事関係者が多く、『彼女か?』『違います、友人です!』を何度も繰り返し、お祭を楽しむどころじゃ無いわ!と内心、思っていたところで、鈴本からの電話だった。
初めは普通だったはず・・・。
「どんな感じ?お店なんかも出てる?」
なんていう会話はしていた。
それが私がヨーヨー釣りを見付けて、やってみたいから!と電話をきってからは、切っても切っても5分と於かずに電話してくる。
用事が有るのかと思えば、そうでは無いらしいのに『お祭イイなぁ~』と言っては掛けてくる。
もう余りの頻繁さにブチ切れてしまった私だった。
私がイラついてるのも判っていた筈なのに、嫌がらせか?!ホンマ!
岩木さんは相変わらず笑っている。
「ナニ?何か言いたい事でもある訳?
用が有るなら岩木さんに電話したらイイし!意味無く掛けてくるのが悪いし!」
「イヤイヤ、みはちゃん、実は男前な性格やったンやなぁと感心してるだけ。」
「こんなん普通でしょうが!
人の体を切ったり貼ったりするのを生業にしてて、そんな乙女、乙女してられへんし!」
「其れに猫かぶりもな」
「猫かぶりじゃ無く、年上や知り合いに対する最低限の礼儀!
でも、岩木さんと鈴本君にはもう必要無いと思う。
暇やって言えば夜中でも電話して来て、この前なんか鈴本くん、私に『お前に電話掛け過ぎて、電話代が3万近かった。半分払え!』って言われた!
ホンマ、勘弁して欲しいわ。」
私の言葉に又「ククッ」と笑い出した岩木を置いて、私は車に乗り込んだ。
夜は料理が美味しいと評判の居酒屋で鈴本も加わっての食事になった。
「美晴〜、そんなに怒らんでも・・・。俺もお祭が気になってさ。
悪かったって、な。な?」
必死に謝る鈴本にもう2度としないと約束させて、仕方無く許す事にした。
「今度、大学時代のバイト仲間が此方に遊びに来る予定で、合コンしたい!って言っててさ、あの後輩ちゃん達に食事行こうって誘っておいてよ。」
「ウーン、分かった。いつか決まったら教えて。2人に都合を聞いておくよ。」
「美晴も当然、出席だよな?!」
「エッ!そりゃ予定が無ければね。仕事次第かな。」
行きたいと云う気はあっても、仕事を休んで迄合コン!とは私には到底考えられ無い。
最近になって、恭子からも鈴本の私に対する好意に付いて指摘される事が増えた。
でも鈴本本人から何か言われた訳では無いし、私自身は鈴本からの好意は友情の枠を越えた物だとは思えなかった。
私も鈴本は嫌いでは無いし、好きだとも思う。
でもそれが特別な感情かどうかが分からない。
どうやって好きだと判断するのか、どうやって恋愛を始めるのかも、私には分からない。
今はこの友情以上恋人未満の関係が心地良く、それを壊すのは恐かった。
よく母親から“姿形だけが大人になった小学生”だと言われる。
両親の様に結婚30年を迎えるような時がきても愛し合っている夫婦。
そんな関係を築ける相手に私もいつか出会えるだろうか・・・。
そんな事を考えると少し憂鬱になる。
それは帰国して直ぐに付き合った人に関係しているのだと思う。
かなり書き直ししました。読みづらくて申し訳ないです・・・。




