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第五話「サナエ」

 4階にやってきた一同。

 ドアの前で止まる。

 

「居るな」

「ええ、10人はいますね」


 気配だけで中の人数を確認するユルゲンとサナエ。


「ここはやはり……」

「そうですね……」


 二人の意見は一致した。


「NK39を盾にしよう!」

「なんですとー!」


 NK39の目玉が飛び出た。

 

「オラあんなひどい目にあった後だべ!少しは休ませてくんろ~」

「ひどい目にあったのはこっちよ!あんたはパワーアップした上に私の下僕になれたんだから感謝しなさい!」


 マドカのお札が効いているので、自由に喋れても逆らう事はできなかった。


「ひどいだよー。オラ燃料の芋を補給しないともう動けないだよー」

「つべこべ言わずに行くのよ、ヌケサク!」


 扉を開けた瞬間、銃の乱射がNK39を襲った。

 

「あ~~~~!効くぅ~~!」


 そう言いながら全ての銃弾を弾き飛ばすNK39。

 

「デンジャーレベル5。ビームチェーンソー及びエンジェルダスト16連装ミサイル使用解除」

「うほ!これはやばい装備だべ!ビルごとぶっこわしちまうかもな!」

「おいおい、それは困る」

「それくらいじゃないとダメだわ!撃ちなさいヌケサク!」


 マドカが命令する。マドカの命令は絶対なので、変更は不可能である。

 

「仕方ない、煙に乗じて先に行くぞサナエ!社長に逃げられたらかなわん!」

「はい!」


 NK39の16連装ミサイルが扉の中に向かって発射される。


 壁ごしであってもユルゲン達には耐え切れぬほどの凄まじい爆風であった。

 爆風が止んだが、まだフロア一面、煙がたち込めていた。


「今だ!サナエ!」

「はい!」


 ものすごい煙の中を走り抜ける二人。4階のフロアを横断するには30秒もあれば充分だった。

 だがその時、


 容赦のないマシンガンの音が鳴り響いた。

 後ろを走っていたサナエが途端に倒れこむ。被弾してしまったようだ。

 

「サナエ!」


 振り返るユルゲン。


「先に行って下さい!私の事はいいですから!」

「しかし!」


「いいから!こんな所で棒立ちなんてやめて下さい!あなたはあなたの理想を実現して私に見せて下さい!科学に支配されない、新しい時代を……」


 サナエの力が抜けてゆく。

 マドカとNK39が追いついた。


「わかった!絶対に死ぬなよ!」


 そう言ってユルゲンは5階に向かった。


「お姉ちゃん!」


 マドカがサナエの大量に流した血に気付いた。


「マドカ。私もこれまでみたい……」


 サナエの意識が遠のいていく。


「ダメよ!ヌケサク、あんた治療できないの!?」

「人間を修復するような装備はねぇべさ」

「このポンコツ!」


 マドカはNK39を蹴飛ばした。

 再び銃声が鳴る。

 結界で防ぐマドカ。

 

 煙が晴れてきて、敵の姿が現れた。

 そこに現れたのは、全身黒ずくめ、現代科学の粋を集めたような最新の装備で身を包んだ武装集団であった。

 顔にはスコープのようなものが付いている。これで煙の中でもサナエを狙撃できたのだろう。

 

「何よこいつら……」

「オラのミサイルは効いてないだか?」

「多分バリアと防護服で防いだんでしょ」


 黒づくめのうち、ミサイルをまともに食らった何人かは倒れていた。


「お姉ちゃん、どうしよう!」


 しかし、サナエの返事は無かった。

 

「お姉ちゃん?」


 サナエはすでに息を引き取っていた。

 

「いやああああああ!」


 10歳の子供に感情を抑えきれるはずもない。大声で泣き出すマドカ。

 

「うわああああ!」


 結界も次第に崩れていった。腰が抜けて呆然とするマドカ。

 

 黒づくめ達は慎重になり、攻撃はしてこないものの、完全にマドカ達を包囲した。

 

「おい、マドカ、元気だすべ。人間ってのはいつかは死ぬものだべ」

「うるさいポンコツ!機械に分かるか!」

「分かるだよ!オラにだって妻さ居ただよ!」


 感情を込めて言い返すNK39。彼も女性に先立たれた身であった。


「そう……あなたでもそうなのね……」


 マドカは純粋な心でNK39に同情し、そして決心した。

 

「お姉ちゃん、最後に力を貸して」


 マドカはお札を取り出してサナエの額に貼った。


「こいつらだけは許さない」


 死者となったサナエは人形と化し、その場にゆらりと立ち上がった。

 そして、およそ人間の動きとは思えぬ不自然な格好で跳躍し、物凄いスピードで黒づくめに斬りかかった。

 バリアの切れかけた黒づくめの体は一太刀で真っ二つに切り裂かれた。


 マドカは結界を貼りながら、NK39とサナエを同時に動かした。

 マドカの悲しみは美しいワルツを生み出した。

 

「マドカの悲しみはオラの怒りだべぇええええ!ビームチェーンソー!!」

 

 死者とロボットのダンスは夜ごと続いたという。



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