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第三話「マドカ」

「こらサナエ!いつまで寝てるだ!もう行くだよ!」


 NK39の声でサナエが起きる。

 サナエは朝、機嫌が悪い。


「最っ悪の目覚め。こんな声で起こしてくる目覚まし時計が合ったら一刀両断してるわ」

「何をぶつくさ言っている。いくぞ」


 ユルゲンはもう支度ができていた。

 サナエもエンジ色のマントを羽織る。マントの留め金に女の子らしい一面が伺える。


「ローハイに向かってレッツゴーだべ!」

「はいはい」

 

 ユルゲンは懐から一枚の紙を取り出した。


「これが本社の見取り図だ。見ておけ」

 

 見取り図を見る一同。

 本社の建物は大きく天井は高いが、中は5階層にしか分かれていない。社長室は5階のどこかにある。

 エレベーターは3階までで、3階から4階への階段は3階のフロアを横断しなければ登れない。4階から5階も同じである。

 

「つまり3階と4階には必ず突破しなければならないボスなり何なりがいるわけだな」

「腕がなるだよ!」

「NK39には入り口から正面突破してもらいたい。それが一番安全だ」

「大丈夫なんですか?」

「ああ、ビルには最新の探知機があるのだが、その探知機には人間の識別に加え、ブレイブマンカンパニーの全ての機械部品のパーツが登録されている」

「それでどうしてNK39さんが安全なんですか?」


 サナエが不思議そうな顔をする。


「どんな小さなパーツでもブレイブマンカンパニーが絡んでいる為、すぐに探知されてしまう。だが、NK39だけは別だ。この星のものではないロボットだから、恐らく探知されない」

「なるほど!」

「そうして、NK39が中をかき乱しているうちに俺たちが突入するわけだ」

「良い作戦ですね」

「あのー、オラの命の保証はねぇべか?」


 NK39が途端に不安そうな声で訴えてくる。


「この星の武器なんかじゃお前はやられんだろう」

「そりゃそうだけんども、痛いのは痛いし、なるべくなら避けたいべ」

「俺たちが3階に到達するまで先に行ってくれれば、そこからは俺たちの後ろにいればいい」

「分かったべさ。それまでは大暴れしてやんべ!」


 そうこうしているうちにローハイにまでやってきた。

 

「サナエー」


 遠くで声がする。仰々しい着物を纏った10歳くらいの小さな女の子であった。

 てっぺんで団子状に髪を結んでおり、両手には数珠を持っている。

 

「マドカー」


 サナエが返事する。

 

「あれが結界師だな」

「そうです。可愛いでしょ?」

「おお、めんこいのぉ」

「あなたには聞いてません!」


 マドカがサナエと抱き合う。

 

「サナエ!」

「マドカ、元気にしてた?」

「うん、聞いて!街の結界術コンテストで私優勝したんだよ!」

「さすがマドカ!」

「どれどれ、オラにも抱かせてくんろ」


 NK39が擦り寄ってくる。


「何、この薄ら汚れたおっさん」


 マドカの態度が変わる。

 マドカの髪の丸い団子がとんがっていた。

 この団子は感情を表しているのか?とユルゲンは思った。


「ひどいべ!これで全員に言われたべ~」

「このおっさんはただのオマケ。ノイズよ」


 サナエが答える。姉妹揃っておじさん嫌いのようだ。


「そっか、ノイズなら仕方ないや」

「オラ、ノイズじゃ無かんべよ、ユルゲン~何とか言ってくれよ~」

「俺にすがるな」


 それから一同はマドカの部屋に向かった。

 そこは占いの道具から、怪しい御札、植物等が無造作に置いてある不思議な部屋だった。

 

「相変わらず汚いわね、マドカの部屋は」

「片付けよりも研究の方に気が行っちゃって……」


 照れながらもどこか自信たっぷりのマドカ。

 10歳近く離れた姉を呼び捨てにするくらいだから、よほどの自信家なのだろう。

 

「この水晶は何?」

「透視の術で使うの。サナエの行動も全部見てたよ」

「えっ!?じゃあ私たちの目的も……」

「知ってるよ。今晩、ブレイブマンカンパニーの本社に乗り込むつもりでしょ?」


 サナエはうなだれた。暗殺の時とは比べ物にならないほどうなだれた。

 

「あなたはダメよ!死ににいくようなもんなんだから」

「それはサナエの方でしょ!私が居なきゃ全員死ぬよ?私の結界術ならいざという時にだって逃げられるもん!」

「結界術で何でも防げると思ったら大間違いよ!」

「結界も無しに突っ込む方がバカだもん!」


 すごい姉妹ゲンカだった。ユルゲンとNK39は外に出て、夜風を受ける事にした。

 

「あのガキどうするつもりだべさー」

「まあなるように成るだろ」


 決行の30分前。本社のビルが見えてくる。

 結局マドカは付いてくる事になった。

 

「いい?マドカは私たちの後ろにいるの」

「命令するのは私。私の結界から出ない事」


 まだ二人は半ばケンカ状態だったが、これ位のピリピリした空気感を持たなければまず成功はしないだろう、とユルゲンは思っていた。緊張感が無いのはNK39だけで十分だと。


「こん中で新種の芋でも栽培してねぇかなー」


 張り詰めた空気の中、ついに突入の時がやってきた。

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