第1話
「知らない天井だ……」 『こちら』の世界で光輝は目を覚ました。セリフはお約束である。
目を覚まし、辺りを見渡すと木製の家屋の中に居ることが判る。寝室兼居間には木製の椅子と食卓テーブル、石造りの台所には外から水路を通されて水が流れてる。
ベッドの横にあるサイドテーブルの上にある一冊の本を見つけて手に取る。
「なになに…異世界入門書?」この世界でもまだ着ていたデジタル迷彩のポケットから煙草を取り出して火を着けながら入門書に目を通す。
本にはこの世界情勢や作物の作り方、狩りの仕方、この家にある装備品目録に備蓄されている食料などが示されていた。
「この世界は麦が主食か…技術は大体中世ヨーロッパぐらいか。取り敢えず倉庫にある武器と食料を確認するか」光輝は立ち上がり、隣の部屋のドアを開ける。
倉庫にはショートソード2本、ロングソード1本、ダガー5本、手投げナイフ10本、クロスボウ3個、矢は革のケースに入れられて100本以上置いてあった。食料はライ麦が 脱穀されずに、大きな袋に入れられて積み重ねて置かれてる。違う袋にはジャガイモが立て掛けて置かれ、棚にはホールチーズ、大量のワイン、ハチミツ酒、切り分けられたライ麦パンが置かれ、1つの樽にはキャベツの漬物ザワークラフトが詰められていた。
「塩は岩塩か…取り敢えず飯は当分大丈夫。外の様子を見るか」クロスボウに矢を込めて背中に背負いロングソードをベルトに帯刀し、扉を開ける。
扉を開けると緑が溢れていた。家の近くには小川が流れて、小鳥のさえずりまで聞こえる。
「キレイだな…日本ではもうこんな風景は見られないな」光輝は辺りを見渡すため散歩し始める。 畑にはライ麦の稲穂がなびき、庭の畑にはレモングラスやミント等のハーブが咲き、小川の中には魚達が群れで泳いでいる。
「アルカディア…名前通りの場所だな!ん ーうまい空気だー水はどうかな?」小川に近付き水を手ですくい、飲み干す。
「うまい!煮沸しようか迷ったが上流だし大丈夫だな」手で口をふく。彼は近くの木々にある枯れ枝を求めて歩き始める。
光輝は枯れ枝を集めるとロングソードで薪にするのに手頃な木にキズをいれて目印を付ける。
「よし、飯にするか」枝を持ち我が家に向かって歩きだす。彼の異世界の生活は始まったばかりだ。