議会の開廷 その2
その後、ライヤは議会室の立つと女私兵二人が近づき「装備は全てお預かりします」と言った。
「え?」
「正装に着替えてもらいます。こちらへ」
そして、着替え室に連れて行かれる。
ライヤは無理やり鎧などをはずされ鎧の下に着ていた普段着が現れた。
着替え室の隅に横一列に並ぶメイド一人がライヤの普段着を見て吹いた。
「ぷっ。」
「なんか…笑われた…。ダサイってこと」
女私兵がライヤの剣まで外そうとした。
かち、ちょっと。剣はいいでしょ。一応、騎士だし」
「いえ。規則ですので」と微笑みを見せる。
規則って…剣を取られたら…。
不安で仕方が無いんですけど。
女私兵二人が作業を終えるとライヤに向って同時に一礼し装備品をどこかに持って行こうした。
「あ、あの私の装備はどこに?」
「ライヤ様のお部屋にお持ち致します」
「マジかよ……」
女私兵二人は着替え室を出て行った。
隅に並ぶメイドの中から一人が手に正装服を持って歩み寄る。
「私は貴方のお世話をするメイド長です。では早速、ライヤ様にはこれを着てもらいます」
「いや。その……この服では、ダメですか?着慣れているので……」
メイド長はライヤの足先から頭先まで目で見て言った。
「ダメです。貴方様はサルベート家のご令嬢と聞いております。名家の服に相応しい正装にお着替え下さい」
サルベート家…100年続く名家だけど…。
くそ!アルミカが私より強ければ…。
うっ。あんな窮屈そうな服を着たら、圧迫死するぞ。
明らかにコルセットだろ。それ。
そんな事を思っているとメイドの一団がライヤを取り囲み強制的に着替えさせる。
数分後、ライヤは正装服を着て再び議会室扉の前に立った。
く、苦しい…。あのメイド共め。
思いっきり、コルセットのヒモを締めやがって…。
これではまるでドレスでは無いか!
スカートはズボンだけど…。
「議会が始まります。どうぞ、お入り下さい」と扉を守る私兵が敬礼し、道を開けた。
そして叫んだ。
「ライヤ・サルベート様のご入来!」
うわっ。恥ずかしい!
扉らが内側から開く。
ライヤは恐る恐るその中に入った。
それと同時に一斉の拍手が起きる。
こんなにいるのか!?
止めろ。そんなに私を見るな…。
「あの綺麗なお方は誰だ?」
「噂ではどこかの姫君とか」
「何とお美しい」
議会室のエルフやドワーフ達がざわつく。
ライヤは顔を赤らめてうつむきながらも指定された席を探した。
議会に集まった三国の幹部は合計300人以上。
多過ぎだろ。
よく見るとライヤが座る椅子は議会室真ん中の机だった。
当然、真ん中には三国の首長がいて、その机を囲むように幹部の座る席があった。
私は幹部席ではないのか?
なぜ、私の椅子があんな所にあるんだよ。
バルグ首長が着席の合図をすると幹部らは音を立て座る。ザッ!
「よくぞ。参列された。ライヤ殿」
いや、強制的に連れ込んだんだろ!
「ぎ、議会に呼んで頂きありがとうございます」
ライヤから右前に立っているドワーフが話掛ける。
「おぉこれが、英雄王の再来と言われたお方か。これほどの美しい女騎士は見た事がない」
「えっ?私はそのような者ではありませんが」
左前のエルフが言った。
「貴殿はゴリアテを前にしても、踏み止まったでは?兵が逃げても貴殿は闘おうとした。これは称賛に値します」
「その通り。問題は貴方の部下ですな。最終決戦にも関わらず、指揮官を置いて逃げるとは」
ドワーフの幹部も同じく声を上げた。
「そうだ!何が国最強の帝国兵だ。何がフェレン聖騎士団だ。これではまるでただの腰抜け集団ではないか」
腰抜け集団……心が痛い。
それは私の指揮力が無いと言っているようなものだ…。
ドワーフ幹部の言葉に反応した帝国軍将校が立ち上がる。
「何を言うか!帝国の救援要請を断ったのはどこの国だ」とドワーフ幹部に指を差した。
「そうだ。ゴリアテ相手に魔導師も石弓の支援もなかったんだぞ!」
「静かに。今は醜い争いは避けるべきだ。」
バルグ首長が立ち上がる。
さすがはバルグ首長。
言い合いが止むと付け加えようにバルグ首長が言った。
「武人として恥ぬ発言を頼みますぞ。ライヤ殿。先ずは両首長の紹介をする。南山脈国ドワーフ首長バズム殿だ」
ドワーフ首長バズムはライヤに一礼したのでライヤも一礼する。
「次に北森林国エルフ首長ワルツェン殿」
「貴殿にお会いできて光栄です」
「こちらこそ」
「さて、議会を始めますかな」
バルグ首長がそう言った時、私兵が大陸地図を持って来て、机に広げた。
三人の首長とライヤがそれに覗き込んだ。
黒く印された場所は魔王軍に占領されているという事か。
参ったな。かなり魔王軍が侵略が進んでいる。
ライヤは前髪をかきあげた。
「誰か、現在の状況を」
帝国軍将校が紙切れを手にし立ち上がった。
「報告します!魔王軍は日に日に活発化しております。しかし大将である魔王の姿を見た者は1人もいません。以上」
魔王がいない?どうゆう意味だ。
確かに魔王は私も見ていないがあの時、ダーク・ソード城の番人が言ったはずだ。
ー魔王様は既にお前らの帝都に攻め込んだ。
何か妙におかしい…。
「わしの斥候兵も同じ事を言ったおる」
バズム首長が自分の自慢の髭をなでながら不思議そうな顔をして言った。
「我らも同じく。しかし魔王軍の先頭には必ずと言っていいほど、双剣使いの少年が居るとか」
双剣使いの少年…。人間か?