議会の開廷
夜遅く、ライヤ達は峡谷の国着いた。
そんな中、ライヤは不思議な顔をして辺りを見渡す。
「あれ?峡谷にエルフとか居たか」
ライヤはカシダに問いかける。
「いや。峡谷の国には……」と首を傾げる。
「姉さん。ドワーフまでいますよ!」
「国を間違えたか?道が暗かったからな」と地図をバックから出して確認する。
「間違えないよ。だってトール魔法大学院があるんだから」
マクシリンが指差した先には街中から少し外れた丘に怪しく青緑のような色を放っているトール魔法大学院があった。
ライヤは驚いて固まった。
「何か悍ましい色を放ってるぞ。まるで魔王の居城だ……」
「何であんな青緑の光を放っているんだ?」
カシダがマクシリンに聞く。
「いい質問ね。トール魔法大学院は朝から晩で常に研究や実験をしていんですよ。ちなみに、大学院内では蝋燭の火を使わないようにしています。代わりに魔法で明るくしているんだよ。だからあんな光を放っているだよ」
「どうして蝋燭はダメなの?」
アルミカが疑問の顔をした。
「フフフ…実験や研究する時にダイセン石を使っているんだよ。そこまで言えばわかるよね」
ダイセン石とは、この大陸上に存在する鉱石であり振動を与えたり、熱すると爆発する鉱物である。
ダイセン石は南山脈国の特産品として市場に回っているが余り使い道がない為、注目度は低い。
だが、トール魔法大学院はこれに目をつけて新しい発明を模索していた。
「もしも蝋燭の火がそれに落ちたら…」
「大学院に貯蓄しているダイセン石の量を考えたら峡谷の国が吹っ飛ぶかもね。(嘘)」
「ひぃ。魔法って怖い……」
アルミカが震え上がりライヤの背中に抱きつく。
「な、なるほど…なら青緑の光を放っても納得するしか無いなぁ。アルミカ。言っとくけど姉さんは全然、怖くないぞ!アハ、アハハハ……」
ライヤも冷や汗を出して誤魔化した。
こんな危なっかしい峡谷なんか早く出ていかないと…。
確実に死ぬわ!
ライヤ達は街中を歩いていた時、バルグ首長の私兵が近づいて来た。
「これは、これはライヤ様。もう帰られたのですか?」
「ん?あぁそうだ。任務も完遂した」
「さすが、勇者と言われる方です!」
と言うと敬礼した。
「いや。私はだな、ただ報酬をー」
私兵の一人が部下らしき兵士に向かって命令した。
おい。バルグ首長に魔王軍討伐成功を伝えるんだ」
「はっ!」と敬礼した兵士はバルグ首長の屋敷に走って行った。
「それより報酬はー」
「あと、ライヤ様にこれを」と私兵が腰に付けたバックから封をした紙を取り出した。
来たー!報酬金だー。
ライヤはニヤついてその紙を両手で礼儀正しく受け取る。
後ろからカシダ・アルミカ・マクシリンが覗き込む。
しかし、私兵が付け加えのように言う。
「これは議会の参席状です」
うっ。違うのかよ…。
後ろの三人はガックリする。
ライヤは苦笑いした。
議会ですか……だからエルフやドワーフがいるんですね……はぁ」
「もう直ぐ始まります。我々が責任を持って議会室に案内致しますので、さぁこちらへ」
ライヤを半ば強引に連れて行く。
カシダが私兵に問いかけた。
「我々は?」
その場に残った口髭の私兵が答えた。
「今日は議会が開かれると同時に異なる種族との交流を深める為に宴が用意されています」
「マジで!?」
三人は声を合わせて言った。
ライヤもその話が聞こえてしまった。
「あの…今日は宴ってあるんですか?」
「はい。ありますよ」と腕を掴んで連れて行く私兵は軽く返した。
「議会参席は強制でしょうか……」
「フェレン聖騎士団の最高責任者はライヤ様と聞いておりますが」
「そうです……」とライヤはうつむく。
うっ。私のラム酒が…
ドワーフ共に…消える。
南山脈国のドワーフは酒好きと言われている。
それも何杯も飲んでも酔わない屈強のドワーフである。
ライヤはそれを知っている。
彼女は必死に議会を直ぐに終わらす方法を考え始めたのであった。