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英雄亡き世界  作者: 飯塚ヒロアキ
第四章 思はぬ増援
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司祭の答え

薄暗い地下牢に天井からは水滴が落ちている。

延々と続くかのような、牢屋の数。

一番端っこに入れられていたのは、あのベレッタ村と口にした少女だった。

首と足にかせを付けられている。

ライヤの指示で警備も厳重になり、衛兵が、何度も地下牢を巡回する。

そんな場所で、聖なる者の声がした。

「我が主よ。この者に取り憑いた者を取り除きたまえ」と少女に手を掲げる司祭。

「………」

少女は、司祭の方をじっと見つめついた。

しかし、何も変化が無い。

「わからん。何かが取り憑いているのは明らかなのですが、この少女は魔力が強い。魔力の強い者が悪魔などに取り憑かれる事が無いはず」

「そうですか。ではこの少女の職業は魔導師の可能性がありますな」と司祭の隣にいたクエンハイムがそう言った。

マクシリンに一応、結界を張っともらっておいた方が良いかもしれん。

「うむ。やはり、何か強大な魔を感じる。しかし、それを押さえ込んでいるようにも感じられる。なんと言えばよいか……極めて珍しいタイプですな」

「はぁ私めには、よくわかりませんが、危険な者である事が改めてわかりました。申し訳ない司祭殿。わざわざ来てもらって」

クエンハイムは司祭に対して、深くお辞儀をした。

礼儀正しい将軍に頭を下げられた司祭は驚いた顔をする。

クエンハイムの伝説は誰もが知っている。

戦場で幾万の敵兵を戦略と自分の手でなぎ倒した男。

英雄となれる器であるにも関わらず、自分より歳下の若者に譲った張本人である。

クエンハイムがその若者に言った台詞は、我が命、貴殿のものなり。我が剣が折れるまで貴殿を支えましょうぞ。

支えるその若者に先立たれるとは思ってもいなかっただろう。

そんな偉大な将軍自らお礼された司祭は笑顔で首を横に振った。

「いえいえ。か弱き羊を守るのが、私の役目です。今日は冷えます故、本格的な取り除きの儀式は明日に致しましょう」

取り除きの儀式は身体に負荷がかかる。

まず、逃げたり暴れたりしないように、両手、両足に赤いひもでくくりつける。

そして、神によって清められた聖なる水、聖水と言う物を振りかけて、最後に飲ませる。

もしも取り憑かれていたら、中にいる悪魔は暴れ苦しみ、消滅する。

その時に、悪魔を追い出す力が無いといけない。

少女をよく見てみると、衰弱していて、今にも倒れそうな感じである。

一番気になるのが、目の下に出来たクマだった。

「可哀想に……。せめて、この少女に温かい食事と毛布を与へてやって下さいませんか?」

「しかし……わかりました。直ぐに用意させます。衛兵!この少女に食事と毛布を与えよ」

「はっ!」

近くに立っていた衛兵が敬礼し、石階段を上がって行く。

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