司祭の答え
薄暗い地下牢に天井からは水滴が落ちている。
延々と続くかのような、牢屋の数。
一番端っこに入れられていたのは、あのベレッタ村と口にした少女だった。
首と足にかせを付けられている。
ライヤの指示で警備も厳重になり、衛兵が、何度も地下牢を巡回する。
そんな場所で、聖なる者の声がした。
「我が主よ。この者に取り憑いた者を取り除きたまえ」と少女に手を掲げる司祭。
「………」
少女は、司祭の方をじっと見つめついた。
しかし、何も変化が無い。
「わからん。何かが取り憑いているのは明らかなのですが、この少女は魔力が強い。魔力の強い者が悪魔などに取り憑かれる事が無いはず」
「そうですか。ではこの少女の職業は魔導師の可能性がありますな」と司祭の隣にいたクエンハイムがそう言った。
マクシリンに一応、結界を張っともらっておいた方が良いかもしれん。
「うむ。やはり、何か強大な魔を感じる。しかし、それを押さえ込んでいるようにも感じられる。なんと言えばよいか……極めて珍しいタイプですな」
「はぁ私めには、よくわかりませんが、危険な者である事が改めてわかりました。申し訳ない司祭殿。わざわざ来てもらって」
クエンハイムは司祭に対して、深くお辞儀をした。
礼儀正しい将軍に頭を下げられた司祭は驚いた顔をする。
クエンハイムの伝説は誰もが知っている。
戦場で幾万の敵兵を戦略と自分の手でなぎ倒した男。
英雄となれる器であるにも関わらず、自分より歳下の若者に譲った張本人である。
クエンハイムがその若者に言った台詞は、我が命、貴殿のものなり。我が剣が折れるまで貴殿を支えましょうぞ。
支えるその若者に先立たれるとは思ってもいなかっただろう。
そんな偉大な将軍自らお礼された司祭は笑顔で首を横に振った。
「いえいえ。か弱き羊を守るのが、私の役目です。今日は冷えます故、本格的な取り除きの儀式は明日に致しましょう」
取り除きの儀式は身体に負荷がかかる。
まず、逃げたり暴れたりしないように、両手、両足に赤いひもでくくりつける。
そして、神によって清められた聖なる水、聖水と言う物を振りかけて、最後に飲ませる。
もしも取り憑かれていたら、中にいる悪魔は暴れ苦しみ、消滅する。
その時に、悪魔を追い出す力が無いといけない。
少女をよく見てみると、衰弱していて、今にも倒れそうな感じである。
一番気になるのが、目の下に出来たクマだった。
「可哀想に……。せめて、この少女に温かい食事と毛布を与へてやって下さいませんか?」
「しかし……わかりました。直ぐに用意させます。衛兵!この少女に食事と毛布を与えよ」
「はっ!」
近くに立っていた衛兵が敬礼し、石階段を上がって行く。