挿入編 賢者の不死
1000年前の話……。
黒竜と白竜。
それらは元々は偉大な賢者であった。
つまり、最初は人間だったのだ。
黒き賢者と白き賢者は仲の良い兄弟だった。
ところがある日、黒き賢者が、不死になる術式を見つけ出してしまった。
黒き賢者はそれを直ぐに兄である白き賢者に伝えた。
「兄者!遂に、遂にやったよ。不死の魔術を見つけた」
「何だと!?まだそんな愚かな事をしていたのか。」
白き賢者は不死の魔術を聞いて驚かず、逆に憤怒する。
「何を言っているんだよ。兄者だって、求めて研究してたじゃあないか」
「あれは、触れてはならない。例え、我らが賢者と呼ばれていても……あれはこの世界に災いをもたらす。そして、術者は呪われるのだ。永遠に」
黒き賢者は残念がった。
無理も無い。
彼ら兄弟は人生の全てを不死の研究に使った。
家族も親も子もみんな捨て去った。
彼ら兄弟にもう後戻り出来るほどの時間は無かった。
「何だよ。その言い方……。………もしかして、兄者は既に不死の術式を見つけていたのか!?」
「そうだ。私は既に見つけていた」
「なら、何で教えてくれなかったんだ!?」
「言っただろう。この馬鹿者!世界に災いを呼び、術者に呪いがかかると」
「もういい!兄者は臆病者だ。俺は一人でやる」とどこかへ走って行った。
「待たぬか!?それは人に、永遠に戻れなくなる魔術だぞ」
その呼び止めにも耳を傾けずに、黒き賢者は自分の部屋に閉じこもった。
黒の書には自分のあらゆる知識が書きとめられていた。
それを開き、自分が書いた術式読み上げる。
部屋には既に魔法陣が書かれていた。
その魔法陣の真ん中に立った。
「月の涙は、冷たく闇に堕ち、太陽の息吹は大地を焼き尽くす。赤き血を捧げて、唱えよ。カザール、ペルテ、アモンスル、ベジテール、ナガレン。」と唱えると、事前に回収していた兄の髪の毛を散りばめて、自分の手首を短剣で斬りつけ魔法陣に垂らした。
その瞬間、部屋がしきみ、揺れ始めた。
魔法陣から竜の形をした黒い焔があらわれ、黒き賢者を襲う。
「ぎゃああああ!熱い!熱い!身体が焼かれるううう」
黒き賢者が黒い焔が、覆われていた時、白き賢者の身体にも異変が起きていた。
竜の形をした白き焔が、襲いかかっていたのである。
「ぬうぉぉぁ。ぐおぉああああ!愚かな者があぁぁぁ」
白き賢者の皮膚が竜の鱗のようになっていく。
それから尻尾が生え、身体が徐々に膨らむ。
「これが、これが、真の不死……。何と恐ろしい力。これが他の物に渡れば世界は滅ぶだろう。わしでよかった」
白き賢者は、白竜に変身してしまった。
「我が弟よ。どこだ?」と重々しい声が響く。
黒き賢者は術式に誤算があり失敗した。
黒の書に魂が定着化してしまう。
「………。」
白竜は黒の書を見下ろした。
悲しい表情を見せて言った。
「我が弟よ。わしはお前のような愚かな者が再び現れた時、知識を持った生き物を全てを絶滅させる」
そう言い残した白竜はエハレクの大地、神の聖地に向って行ったのであった。