ライヤの逆鱗?
クエンハイムは今の状況を直ぐに理解した。
長年の経験があっても、こんな事は初耳だったはずであったが、そのライヤの仮説を受け入れた。
「まさか。そうは見えなかったが……しかし、可能性はありますのう」と癖である眉毛を触り始める。
「姉さん?これからどうしますか」
「そうだな。このまま解放してしまうと厄介かもしれん……」
全員が深くため息をついた。
カシダは腕組みをし考える。
少しでも、ライヤの役に立ちたいみたいだ。
どうしたものかな。
そう言えば、湖の離れ島にシメス教会があったはずだ。
しかもセイルシュアの近い。
「ライヤ?司祭にでも確かめてもらったらどうだ」
「おー。それ名案だな」
「司祭なら、感じ取る事が出来るかもしれんの。どれ、子猫ちゃんの為に僕ちんが早馬で連れて来よう」
子猫ちゃんって……結構恥ずかしいんだけど。
でも今回は仕方ない。
「でも、一つだけ条件があるのう」とライヤを見つめた。
「じ、条件とは……?」
「ライヤちゃんの裸を見せてほしいのぉ」
「え!?」とアルミカが反応した。
それを聞いたライヤが凍り付く。
こんな時でもエロジジィなのかよ。
今日は普段着だ。
鎧というガードが無い。
どうする私!
ライヤは一歩一歩ゆっくりと下がっていく。
クエンハイムは怪しい顔で詰め寄って来る。
カシダは何かチラ見するし、アルミカは背中を見せる。
私は生贄なのか?頼む!誰か助けて……。
「いいのかのう。拒んだら聖騎士団の軍資金援助とか打ち切ってもいいんだよぉ」
「くっ。手が出せない……」
背中には壁で、逃げ場を失う。
クエンハイムが飛びつこうとした瞬間、背後から親衛隊のリンが走り込んで飛び蹴りする。
「お嬢様に触るなぁー!クソ野郎」
見事に背中命中。
「何と!?またしても……邪悪が……」
クエンハイムは倒れ込んだ。
カシダは愕然。
畜生!見られなかった。
リンがクエンハイムを引きず始めると、ギロドルドが来た。
「お嬢様。ご無事でしたか?」と礼儀正しく聞いた。
「ふぅー助かったよ。全く……」
「あの愚か者は今後、わしが見張りまする」
「すまん。頼んだ……さてと。やるべき仕事が一つ増えた。なぁカシダちゃん?私が困っていた時、顔がニヤついていたぞぉ」
ライヤの背中からダークオーラ発生。
危険度大。
拳からパキパキと音がする。
「おっと。いかん!アルミカワシと来い。血の海は見たくないだろ」とギロドルドがアルミカを連れて看護所を出て行った。
カシダも逃げようとするが、閉められたとびらからカチッという音がした。
「鍵を閉めたーーー!?」
真っ青な顔で必死に扉を開けようとした。
カシダの背中に殺気がする……。
ギロドルドとアルミカは扉に耳を立てて中の様子を聴いていた。
「ぎぃよぉえええーー!ぎゃあ。ぐふぅ。いでぇい」
ドカドカと殴る蹴るの音がしカシダの悲鳴が響き渡る。
扉の下の隙間から、血が……溢れ出てきた。
「おぉ。怖い」
「まさに血の海だね……これ……」
バタンと倒れる音がした瞬間、ギロドルドが鍵を開ける。
扉がゆっくりと開くと、すっきりとした表情で現れたライヤが通り過ぎて行った。
ギロドルドはライヤの後を追うようについていった。
アルミカはカシダが気になり、息を飲み勇気を出して、そっと覗き込んだ。
「うわっ!?カシダさん……生きてますか」
「ま…だ…い…き…てる……」
血まみれになったカシダがそう言った。
「と、とりあえずマクシリンを呼んで来るね」とアルミカが急いでマクシリンを捜しに行ったのであった。