書庫にあった日記
次の日の朝。
ライヤは起きると背伸びした。
そして、髪を後ろに束ねる。
最近の流行りは後ろを団子にするような髪型である。
ライヤも、真似てその髪型にした。
「よし!」と気合いが入る。
ライヤはまだ寝ていたリンを足で蹴り起こす。
「起きろ。熊」
「痛!?てか、熊とか言わないで下さいよ。うわぁ寒い」
「行くぞ」とライヤが言った。
「ちょっと。お待ち下さい」
「待たない」
ライヤは寝室から出て行った。
ライヤが向かったのはシャルル邸にある書庫だった。
途中、カシダの部屋とアルミカの部屋に寄って無理矢理連行する。
カシダはまだ寝ていたので襟の部分を掴んで引きずりながら歩いた。
「どうしたんですか?急に」
アルミカはまだ眠たそうに目を擦った。
昨日はずっと、運ばれて来た男の子を見ていた為、あまり寝ていなかったのであった。
「調べたい事がある」
「やはり、リベッタ村ですか」
アルミカがライヤを見つめる。
「そうだ。聞いた事があるんだが、思い出せない。それに何故か気になって仕方が無い」
「実は僕もなんです。マクシリンも言ってました」
「何で俺は引きずられてるんだ……?」
そんな事を言った時に、書庫に着いた。
「おら!さっさと、この100間の出来事をまとめた書を探せ」と書庫の扉を開けるとカシダを投げ飛ばす。
「えーーーぎゃあああふぁ」と本棚にぶつかり書に埋れた。
数分後、書庫にある長机には書の山が出来ていた。
ライヤはそれを手当たり次第に読み漁っていた。
アルミカは書を運ぶ係りで、カシダは同じくライヤと共に読み続けていた。
「ラングナナディル戦記は違う。これは?竜の生態学……って人生で必要か?」
「ライヤ?これは」とカシダが一つの古びた書を差し出した。
「ん?討伐遠征記録……これなら昔の地図とか出来事とか書いてありそうだな。どれどれ」
ライヤがその書をめくり始めた。
これはどうやら、100年前の聖騎士が書いた日記のような物だった。
ーヒムニスの日記
我がダナー聖騎士団長率いる部隊は◯月◯日に新しい任務が入った。
その任務は周辺村落の異端の行いの取り締まりである。
しかし◯月◯日はとてつもなく身が凍りつく事態が発生した。
その日、農夫の1人が青ざめた顔をして我が騎士団に助けを求めに来た。
その農夫の村で魔族が出現したのだ。
我がダナー団長の騎士団がその村に駆けつけるが村の住民は1人も居なかったのである。
そしてあの悍ましい声が聞こえた。
私は断末魔のような声が恐ろしくて手で両耳を塞いだ。
全ての民家にダナー団長が火を放てと言った。
悪魔はここにいる。出て来る前に焼き尽くせと。
団員達が民家に火を放った。
そして、あれが出て来たのである。
私はこの目で見た。
火を放った民家から1人の少女が飛び出て来たのを。
その少女は意味不明な事を言っていた。
私は母さんを助けたかっただけなんだ。助けてと。
何を言っているのか我々には理解できなかった。
仲間の1人が話し掛けた時、その少女は性格が突然急変する様に口調も目つきも変わった。
「僕の言う事を聞け!アスラ。いいか。お前の母親を焼き殺したのはこいつらだ。殺せ。皆殺しにしろ」
まるで別の何かが話をしているように見えた。
少女は私の隣に居た仲間にいきなり飛びつき首を噛みちぎった。
他の者が斬り掛かろうとしたが、聖騎士から剣を奪い八つ裂きにされた。
あれは人間技では無い。
私は恐ろしくて腰を抜かしてしまう。
聖騎士にも関わらず、お袋と呼んでしまった。
その少女はそれに反応したのか、落ち着きを見せだして今度は逃げ出したのである。
私はまるで何かに取り憑かれているのではないかと思った。
その後、暗黒の大地に逃げ込まれ追撃を断念。
まとめ
事件日◯月◯日
場所 ベレッタ村
内容 少女の悪魔化
被害 聖騎士6名が死亡
対策 ベレッタ村全体を焼き尽くす
犯人 クライン・アスラ
以上。