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英雄亡き世界  作者: 飯塚ヒロアキ
第三章 魔王の手下
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ライヤの過去

ーサルベート家

サルベート家は代々、聖騎士である。

聖騎士とは異端の行い、集会、団体、組織を摘発して来た。

その為、聖騎士は特に魔王教団に恨まれている。


ライヤの一団は馬で4日間をかけてようやくセイルシュアに着いた。

セイルシュア…山脈に囲まれており、くぼ地となった場所に建国されている。

城壁は高く城は堅牢。

難攻不落の要塞国であるこのセイルシュアにはフェレン聖騎士団の総本部も置かれている。

またライヤ・アルミカ・カシダの故郷でもあり、国を治まるのはアルミカとライヤの父、シャルル・サルベートであった。

「あ〜疲れた。まさか山道が塞がれているとは……」

「ふむ。情勢が危ういのでしょうな。人為的な山道の破壊。数多くの罠」

クエンハイムが眉毛を触りながら言った。

「落とし穴に、仕掛け石弓に、落とし石に…」とカシダが指で数え始める。

「私がいなかったらカシダさんは今頃、串刺しだったよねぇ?」

「あの時は…助かりました」とシュンと落ち込む。

「聖騎士が魔導師に救われるとはな。親衛隊が聞いたらフルボッコだね。アハハハハ」

「そんなのいやぁぁぁぁぁぁ!」と頭を抱える。

「姉さん!?酷いよ。カシダさんを先に進ませておいて」

そうこうしている内にセイルシュア国の城門に着いた。

馬に止まれの合図をしたライヤが門に向かって叫ぶ。

「ライヤ・サルベートだ!門を開けよ」

「開門!開門せよ」

その声と同時に門がゆっくりと開く。

ライヤらがセイルシュアの城門をくぐる。

久々に見たが、ここも廃れたな…。

昔はもっと賑やかだったのに今は殺風景だ。

辺りには兵士しか居ない。

魔王教団の影響はまだ無いように見える。

さて、父上をどう説得するか。

さすがに、魔王教団が再び現れたとか、言えないしな……。

とりあえず、あそこに行くか。

ライヤ一団が街中に馬を進める。

「カシダ?少し寄りたい場所がある」

「ん?わかった」

「私達も寄りたい所があるから」とアルミカを無理矢理連れてライヤの横を通り過ぎて行った。

「良いのか?」

カシダがアルミカの背中を見てから、ライヤに振り向いて問いかける。

「今日は許す」と少し嫌な顔をして言った。

「では、私めは城の防備などを見てきますかのう」

「クエンハイム殿。任せました。」

クエンハイムは笑顔でうなずく。

「クエンハイム殿まで?」

おいおい。二人だけになってしまった。

そう言えば、ライヤと久々に二人きりになったなぁ…。




ライヤとカシダは馬を歩かせて、ある場所に着いた。

それは街から離れた丘に建っている教会だった。

花や草に覆われている安らぎの場所。

そして無数の墓もあった。

ライヤが馬から降りて、教会の近くに手綱を

結んだ。

カシダも同じく、馬の手綱を結ぶ。

ライヤは、髪をかきあげて、墓地の方へ向かう。

しかし、何も話さない。

無言で歩いて行く。

そんな背中をカシダは少し見つめた。

ライヤ…また心の中で泣いているんだろうな。

カシダはゆっくりとライヤを追う。

墓石が沢山並んでいる。

死を迎えた者が安らかに眠れるように埋葬される場所。

ライヤが一つの墓石の前で歩みを止めた。

カシダがその墓石に刻まれた文字を目で読んだ。

ー最愛の妻

ミューレン・サルベート

ここに眠る

「なぁ…カシダ…あれから何年経ったかな?」

「13年になるかな……」

「そうか。もう13年か…早いものだ。時が経つのは……」

ライヤが墓石の前に座り込んで墓石を優しく触る。

「お母さん……」



13年前…セイルシュア国は魔王教団に攻撃を受けていた。

魔王教団総数約6000名がセイルシュア城内に雪崩れ込んだ。

父、シャルル・サルベートは親衛隊と必死に闘った。

そんな中、ライヤの寝室に一人の魔導師が入って来た。

「な、何ですか!?貴方は」とミューレンがライヤを庇う。

「魔王様の邪魔者を排除しに来たよ」

「おのれ!忌々しい魔王教団」

ミューレンが近くにあった短剣でその魔導師に走り込んだ。

ライヤは怖くなり目を閉じた。

「きゃああああああ!」と悲鳴が聞こえた。

どうなったかわからないが、誰かが倒れる音がした。

再び、目を開けると自分の母親が無惨な姿になっていた。

魔導師がライヤに歩み寄る。

ゆっくりと、そして覗き込む。

「まだ、子供じゃあないか。我は子供は殺さん主義なんだぁ。お前が大きくなったら殺しに行くからね」

血のついた手でライヤの頬を触る。

ライヤ、恐怖のあまりに声も出せない。

母親を殺した魔導師が悍ましい笑いをし、その場をあとにした。

床が赤く染まっていく…。

「お母さん?…お母さん……とライヤは母親に駆け寄り揺さぶる。

しかし、反応は無かった。

「起きてよ。お母さん…死んじゃ嫌だ。返事して」

なんども、なんども、呼びかける。

人形のように動かされるだけだった。

ライヤの涙が、母親の頬に落ちる。

「……許さない…。お母さんを殺したあの魔導師を…。許さない」


この世界の紛争や戦争は憎しみや恨みによるものが多い。

憎しみは憎しみを生み、人間がいる限り争いは無くなる事はない。









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