挿入編 シャルル親衛隊
少し時を戻す。
ライヤが聖騎士をイジメている時間帯。
セイルシュア国では…。
セイルシュア国…帝都の近くに栄えた国である為、魔王軍がいつ来るかわからない緊迫した状態が続いていた。
セイルシュア国領主であるシャルル・サルベートは自ら周辺巡回をしていた。
騎馬を華麗に操る領主の姿は国民の不安を少しであっても和らげていた。
そんな時、四人の聖騎士が焦ったような顔をしてシャルルを追いかけて来た。
【主様!何でいつも勝手に城に出るんですか。】
【私達の事も考えて下さいよ。もぉ。】
【はっはっはっはっ。今回は追いつくのが早かったな。】とシャルルは笑い出した。
【笑い事じゃあないんです!もしも魔族にでも襲われたら、私はお嬢様に殺されます。】
【同感です。俺だって斬り刻まれますよ。】とこの世の終わりのような顔をした。
【リン、セティア。言葉を慎め。この青二才共が。】と後から来た老聖騎士が怒る。
【そうでっせ。リンはうるさいでぇ。】と田舎臭い口調で、文句を言った。
【うるせぇ!田舎者が。】
【言ったな。おめーお嬢様にバラすぞ。】
それを聞いたリンがビクつく。
【まさか…。あれを見ていたのか。】
【ん?それなら俺も見たぞ。確か、お嬢様のワイン倉庫で、100年物のワインをー】
【セティア!あ、あれは事故だ。】
リンは話を遮るように急いで言った。
【はぁ。わしが死んだらどうなるのやら…。】と老聖騎士が呆れた。
【まぁまぁ。そう嘆くなギロドルト。】
シャルルは苦笑いになる。
【主…。わしは安心して隠居も出来んです。】
この老聖騎士はギロドルト。
サルベート家に50年近く、仕えてきた聖騎士である。
そして、リン・セティア・ラックはギロドルトの教え子。
【なぁ。ギロドルト。最近、やけに胸騒ぎがする。】
【実はわしもです。】
【リン?情報は何かないか?】
【はい。今朝、報告書が届いたんですが三日前、フェレン聖騎士団の団員5名が殺されております。】
【魔族か。】とシャルルが聞く。
しかし、リンは横に首を振った。
【違います。人間の仕業です。内2名は焼死。】
【ほぉ。焼死か。魔導師がいたかもしれんのう。】
【敵は魔族だけにあらずか…。】とシャルルがつぶやく。
ギロドルトも深くうなずいた。
ライヤが…気になる…。
果たしてあいつは大丈夫だろうか。
【主様、どうかされましたか?もしかしてお嬢様が心配なんですか。】とセティアがシャルルの顔を覗き込む。
【ん。いや。少し考えて事だ。それよりセティア…顔が近いぞ。】
【失礼しました。…お嬢様…元気なんでしょうか。】
セティアが小さくつぶやく。
ラックの耳にその言葉が入る。
【セティア。おめー最近。お嬢様、お嬢様ってずっと言ってんぞぉ。もしかして…。】
【なっ。何を言うラック!俺はだな。お嬢様が心配なだけだ。決して好きとかではー】
セティアは殺気を感じた。
その殺気を放つ方へゆっくりと振り向く。
ギロドルトに黒いオーラが見える。
【貴様…聖騎士であるにも関わらず、主のお嬢様に手を出そうとしていたのか。】
ギロドルトが剣を鞘からゆっくりと抜く。
【師匠!?早まらないでぇぇぇ。】
セティアはその後、一日、罰として木に吊るされてました。
【リーン!助けてぇぇぇ。】
近くを通ったリンに助けを求める。
リンは吊るされたセティアを見上げて笑った。
【ぷっ。バーカ。お前が悪い。】と言って通り過ぎたのであった。