動き出した教団
ヴァロンデル・クエンハイムがライヤらに合流した。
ライヤの目の前にクエンハイムが座り、その隣にカシダが座っていた。
ライヤの右には前と同じくアルミカがいた。
クエンハイムが話し出す。
【いやぁ〜。ライヤちゃんにようやく会えて嬉しいのう。また綺麗になった。】
【く、クエンハイム殿。目立つ行動は避けて頂きたい。貴方はですね。英雄王のー】
【それよりライヤ殿!貴殿に重要な話があります。】
クエンハイムの真剣な顔にライヤがビクついた。
カシダは自分の席を奪われた事に落ち込み中。
クエンハイムのせいで…ライヤの正面顔が見られない…。はぁ…。
【は、はい。なんでしょうか!?】
クエンハイムは何かをひらめいた顔をした。
そして怪しい微笑みをし、ライヤに言った。
【実は私めの名をー】
アルミカとライヤが反応する。
【名を?】
【クーエンちゃんと呼んて欲しいのう。】とにっこりと笑った。
カシダはその言葉にさらに落ち込んだ。
ライヤにそこまで踏み込んで来るとは。
俺にはそんな積極性も度胸も無いんだぁぁ。
そ、そうか。これが、百戦錬磨の猛者なのか!?
このままでは、ライヤが…。
【……。クー、クーエ…ン…。】
止めろ!俺のライヤと、これ以上親密になるなぁぁぁ。
カシダが立ち上がり頭を抱える。
アルミカはカシダの行動が意味不明だった。
【カシダさん?どうしたんですか。まるで悪魔に取り付かれた見たいな顔して。】
【アルミカにはこの気持ちはわからないんだぁぁぁ。】
アルミカは苦笑い。
ライヤの心で将軍じゃなければ死刑に出来たのにと思っていた。
ん?何か、おかしいような気がする。
【重要な話ってこの事かい!】
ライヤは反射的にクエンハイムの顔面に拳をめり込ませた。
【将軍を殴った!?】とアルミカが驚く。
カシダはガッツポーズする。
そうだ。特権階級を利用した命令でも絶対に服従しない勇敢な騎士。
それでこそ俺のライヤだー!
※カシダは意味がわからないので無視をしょう。
数分経っても、クエンハイムの顔には殴られた跡がくっきりと残っていた。
【それで、クエンハイム殿。重要な話とは?】
それを聞いたクエンハイムが深刻な顔をした。
【実は奴らが再び動き出しました。】
ライヤの眉毛が動く。
【奴らとは?】とカシダが食いついた。
【魔王教団です。】
【魔王教団…数年前にフェレン聖騎士団が壊滅させたはずだったが。】
魔王教団…その名の通り、魔王の為に犠牲を払ってでも、明白の大地を暗黒に引きずり落とそうとしている組織だった。
つまり、魔王が治める世界を望む悪しき者達。
ある日、魔王教団が内乱を企てている事が判明し、フェレン第一聖騎士団に英雄王の勅命が下りた。
第一聖騎士団団長シャルル・サルベートが帝都地下水道にて、魔王教団のアジトを見つけ出す。
シャルル・サルベートは法と秩序を優先する男。
そしてライヤの父親でもあった。
魔王教団のアジトに火を放ち人ごと焼き払った。
この時代、火炙りは肉体と魂の穢れを浄化出来ると信じられていた。
魔王教団には魔導師、女、子供もいたと報告書に記されていた。
【どうやら、生き残りがいたようです。それも魔導師が。】
【魔導師だと!?まさか…。】とライヤが焦る。
【ライヤ団長殿。】
帝国軍兵士四人がライヤに近づいて来た。
【何だ。今は忙しいんだ。】
【バルグ首長がお会いしたと。我々がご案内致します。】
普通はバルグ首長の私兵が来るはずなんだけど…まぁいいか。
【わかった。クエンハイム殿。明日、セイルシュア国に行きますのでご同行を願います。あっ。とりあえず、カシダは酒代払ってね。じゃあお休み!】とライヤは帝国軍兵士四人と一緒に酒場を出て行った。
【えっ?またかよ…。】
クエンハイムが帝国軍兵士の後姿を見た時、何かに気が付いた。
【ん?何かおかしいような。】と白くなった眉毛を触る。
【どうかされたんですか?】
アルミカが問いかける。
【あっ。いえ。いえ。何でもありませんよ。では私めも失礼しますのう。】
帝国軍兵士の一式装備は義務化されているはず。
しかしさっきの帝国軍兵士の剣はバラバラ…。
※帝国軍兵士は帝国軍式ブロードソードを装備しなければならない。
怪しいですのう。
ましてや、こんな遅くに。
クエンハイムはまるでライヤの後を追うように酒場を出る。