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英雄亡き世界  作者: 飯塚ヒロアキ
第三章 魔王の手下
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その名はヴァロンデル・クエンハイム

前話ではライヤの背後より二人の男が近づいていた。

ライヤ!危ない。

一人の男がライヤの左肩に手を置き、横に座った。

【ん?お前か。どうしたんだ。】

もう一人はライヤの正面に座る。

正面に座った男が懐から手紙を取り出して机の上に置き、ライヤの方へスライドさせるように渡した。

【ライヤ。お前宛に手紙が来ているぞ。】

【私宛にか。父上からかな。どうせまた、見合いの話かなんかだろう。】と呆れるようにつぶやきエールを口に含んだ。

その手紙を手に取り、裏側の差出人を確認した。

その瞬間、ライヤは目をかっ開き、口に含んだエールを正面に座っていた男に吹きかける。

正面の男は放心状態。

隣に座っていた男が慌てる。

【うわっ!酷いよ。姉さん。】

彼はアルミカである。

【こ、これは老将軍…からの…。】

アルミカの声に反応は無くライヤは肩を震わ始める。

それほど彼女を恐るさせるほどのモノなのだろうか。

まさか…あいつはシェールに行ったのではないのか。

なぜ、もう帰って来たんだ。

ちなみに、ライヤの正面に座っている人は誰であろう。

そう。カシダだった。

まさに不幸中の幸い。

カシダはまた考え始めていた。

ライヤが俺に、エールを吹きかける…。

生涯で一度だけだと、思っていたのに。

どうする俺?もう一度。いやいや。

そんな事を言ったら、また誰かに殴られる。

飯塚はカシダの背後で準備中。

今回は鉄槌を用意してます。

そうだ。事故だ。これは事故。

ライヤが酒を飲む時は正面か横に座れば良いんだ。

【ちっ。踏み止まったか。】と飯塚は舌打ちして、席を立ち帰って行った。

【ん?ライヤ。どうして震えているんだ。早く読めよ。手紙を。】

【そ、そうだ。ただの手紙だ。何を恐れる必要がある。頑張れ私!】と気合いを入れ手紙の封を破る。

どういう意味だ?

ライヤは手紙を開き、目で読み始める。

ーライヤ騎士団長殿へ。

私めを覚えておりますかな?

帝都が陥落してから既に三年が経ちました。

未だに奪還作戦は実行されていないと私めの部下より報告が上がっております。

シェール国に援軍要請をしに海を渡って行きましたが、どうやらシェール国は他国との間で開戦状態であるようでした。

残念ながら、援軍要請は受け入れられませんでした。

そこでこの私めは既に隠居の身でありましたが、帝国軍の将軍と指揮をすると致します。

ですので、近い内に峡谷の国へ部下と共に合流致します。

堅苦しい形式はここまでにします。

寂しい思いをさせてしまったよ。

ライヤちゃん直ぐに行くからね。

わしの可愛い子猫ちゃん。

ヴァロンデル・クエンハイムより愛を込めて。

【誰が子猫だ!】とライヤは立ち上がり、手紙を地面に叩きつけた。

【子猫?】

カシダとアルミカは不思議そうな顔をする。

ライヤが怒り始めた。

カシダがしゃがんで叩きつけられた手紙を手に取り内容を確認しようとする。

ばれないように。ばれないように。

そーっと取るんだ。

カシダの行動がライヤの目に入った。

カシダが手紙を手にした瞬間、ライヤに手を踏まれる。

【痛いぃぃ!】

【誰が見ていいと言ったんだ。】

【ライヤ様。もうしませんからその足をどけてはくれませんか。】

カシダの目にはライヤがつもより向きになっているように見えた。

そんな時、酒場に一人の老人が入ってきた。

ライヤの背後にゆっくりと近づいて来る。

そして、ライヤに抱きついた!?

カシダとアルミカは驚きとどまる。

【おぉ。やはりこの感触。肌触り。ライヤちゃんに間違いないのう。】と背中をすりすりする。

【ひぃぃ。…き、来たな…。】

【そしてライヤちゃんの小さい胸をー】

その老人の腕がライヤの胸に触りそうになった時、肘でみぞ打ちされる。

【ぐはぁ。お、お見事…じゃ。】とゆっくりと倒れた。

【誰が小さい胸だと!】と近くにあった椅子で止めを刺そうとした。

ライヤに言ってはいけない言葉は小さい胸である。

【ぬぁぁ!?そんな事したら確実に死ぬから落ち着けライヤぁぁ。】

【ダメだよ。姉さん!】とアルミカとカシダが急いで羽交い締めする。

【こ、この変態ジジィ。今日こそあの世へ送ってやる!】

酒場にいた客は唖然。

この老人名は、ヴァロンデル・クエンハイムであった…。

英雄王の剣と言われた名将。

戦場で彼の名前を知らない者はいない。

そして、白き獅子の異名を持つ。

獅子のように豪快に闘い、敵陣に単騎駆け。

残るは敵の死体のみ。

敵には回したくない人物であったが…。













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