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英雄亡き世界  作者: 飯塚ヒロアキ
序章 失われた帝国
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女騎士 

ファンタジー騎士物語です!

飯塚ワールドへようこそ。

オリジナルをなるべく重視してますが、似ている部分があったら、指摘して頂き考え直します。

ご意見、要望をお願いします。


フェレン聖騎士団のキャッチフレーズです。

君に魔王を倒す覚悟があるか?


―――――――この世界は魔王が治める暗黒の大地と英雄王が治める明白の大地で分かれていた――――――――――


魔物と人間。光と闇、互いに憎しみ合い、住む場所を巡って奪っては奪われるという事を繰り返していた。


戦いは数百年も続き、やがて、大規模な戦いから小競りの戦いへと移り、それが何度も繰り返される日々だった。


 田畑は荒れ、森は腐り、瘴気の霧が立ち込める。太陽の光の反射で輝いていた奇麗な川は今やヘドロとかし、死体が浮いている。あたり一面、腐敗臭がしていた。


 そんな暗黒時代を終わらせるために一人の男が立ち上がった。その男は小さな村の少年で、元気が取り柄の少年だった。彼は村の中心で死んだ父の形見である刃こぼれした剣を掲げて、叫んだ。


「俺が皆を守る!! 俺が魔物を滅ぼしてやるッ!!! だから力を貸してくれッ!!」


 最初、村人は少年の声にまともに聞こうとはしなかった。戯言を言うな、と罵声を浴びせる。


 しかし、少年の抱いた揺るぎない決意と情熱はやがて、国を大きく動かしていった。


 誰もがこの暗黒時代から抜け出したい。魔物がいない世界で生きたい、そんな気持ちは一緒だった。


 少年は酒場に行って、馬鹿馬鹿しいと思える夢を酔っ払いの女騎士に語りかけ説得し、道中で魔物に襲われていた女魔法使いを助けて、仲間して、3人で魔物との戦いを始めた。


 村に住む大猪の化け物を倒し、腐った森に住みついていたオークたちの一団を一掃し、森ごと焼き払った。村人たちがその光景を見て、ホラ吹きではないと知り、少年に賛同すると農具をもって、立ち上がった。


 「俺はいかなる犠牲を払おうとも突き進むだろう。俺が守るべき者達の未来の為に!! 魔物がいない世界を作るために」


 その言葉が隣の村へ、そのまた村へ、今度は町へ、王国へと伝わり、少年の元に集まり始めた。


 そして、国ができた。魔物を打ち滅ぼし、世界の平和と均衡を保つ為の国を。


 国の名は「ラインライト」


 少年は王となり、他の王族を統べるために自らを英雄の中の英雄、英雄王と名乗った。


 王国は力を増し、次々に魔物を倒していった。


 それから数十年の時がたち、ラインライト王国は王都の防衛線を築き上げ、守りは万全のものとなった。魔物の幾度の攻撃を退き、武器や鎧、兵士をかき集めた。


 100万の兵士が動員できると聞かされた英雄王は大きく頷くと玉座から立ち上がり、剣を勢いよく抜くと天井へ掲げた。


「時は今!! 時は今!! 各々方、兵を集めよ!!! 決戦の時であるッ!!」


 王都中で、鐘が鳴らされ、待機していた兵士らが一斉に王都を出て、整列を始める。


 早馬が王国中を走り回り、有力者や領主、地主にまでも声をかけ、戦いに参戦するようにと招集した。


 王都を出た軍は1万、2万と兵力が集まり始め、魔物が闊歩する土地に来た時には100万もの大軍勢となっていた。


 丘から見下ろす、英雄王は剣先を前へと振り、号令する。


「全軍、魔物どもを地獄へ叩き落とせっ!!!」








 太陽は分厚い雲に覆われ、昼間というのに薄暗い。辺りは残り火と激しい戦闘があった跡地、死体が転がる道を白く銀色に輝く鎧をまとった女騎士が馬を進めていた。その後に同じ格好をした男たちが追従する。手に持つ軍旗は白地に剣と盾が交差し、その上に星が描かれていた。


 女騎士の名はライヤ・サルべート。剣の腕前は英雄王も納得したといわれるほどの腕前。女性としては身長が高く、173ほどあり、男勝り。赤い瞳に逆三角形の顎、血と土で薄汚れているが、色白い肌、すらっとした肢体から繰り出される剣戟に誰もが疑ってしまうほどだった。美人というよりも勇ましいというべきだろうか。


 そんな彼女の横に部下の一人が馬首を揃えた。


「ライヤ団長、先頭を行くのは危険です。どうか、お下がり下さい」

「指揮官が後方に下がるなど、愚の骨頂。士気が落ちる」

「しかし、あなた様まで失う訳にはーー」


 その言葉にライヤは怒りを帯びた顔つきになり、発言した部下は申し訳ございません、と小さく言い、慌てて引き下がる。


「神は我らを見捨てた、か……ふざけるな……」


 フェレン聖騎士団の騎士らの顔は暗く、騎士らに続く王国兵らの足取りは重い。


 それには訳があった。とてつもない訳が。


 魔王軍の防衛線を難なく破ったライヤが率いる一団はダーク・ソード城まで攻め入っていた。


 ライヤは魔王がいると思われる城を見つけると包囲陣形を組み、盾を構え、相手の何らかのアクションを暫く待つも何もなく、さらには城壁には敵が見当たらない状態だった。


 様子がおかしいことに隊列内で、ざわつき始める。


、最後の戦いであるのにダーク・ソード城は静寂に包まれていた。


 鎧に何かが弾ける音がし、何だろうと空を見上げると雨が降り始めていた。


 ただでさえ暗闇に立たずむ城は、雨のせいで、視界が狭まり、より恐ろしく、一段に大きく見えた。


 魔王の城に入る為の数十メートルはある巨大な黒門が堅く閉ざされていたため、しびれを切らしたライヤは隊列の前に出て大声て怒鳴った。


「我が名はライヤ・サルベート。魔王を討伐しにやって来た。出でよ。邪悪なる魔王よ。我が剣が貴様の首を薙ぎ落としてくれん!」


 剣を城に向けて勇ましく言い放ったが返事が帰ってこない。


 聖騎士達や王国兵士らはどうすれば良いのかわからず顔を見合った。


「臆したか!? 魔王ッ!」


 少し待つと黒門越しに返事が帰ってきた。


「愚かなる人間どもよ。残念である。魔王様は既にお前らの大切な王国に攻め入っている頃だろう」

「何だとッ?!」

「ガッハハハ!」

「ふざけるな!」

「ならば、自らの目で確かめればよい。すでに王都は火の海だ」


 ライヤは視線を落とし、目が泳いでしまう。動じていても足はしっかりと地面につけて、後ろへは下がらないように踏みとどまる。


 あり得ない、しかし、あり得るかもしれない、そんな感情が彼女を支配する。


 勘付いた時には遅かった。


 ライヤは魔王軍の抵抗部隊が少ない事が気になっていたが大臣らの強い進撃要請に従って馬を連日連夜進めてしまった。聖騎士達も浮き足立つ。


 予想外の展開に動揺を隠せないでいた。


 そんな時に後方からはそんな事を知らない王国軍の本隊が集まって行軍隊列から横へ広がる戦闘隊列に変わっていく。


「謀られた……のか……」


 ようやく、巨大な黒門がゆっくりと開かれ、鈍い音と共に重々しい足音が聞こえ始めた。


 その音と同時に聖騎士達は一歩ずつ下がる。


 しかし、ライヤだけは動かなかった。


 彼女は第一フェレン聖騎士団長であり、いかなる敵が現れようとも動じてはならない。


 なぜなら、もう英雄王はいないのだから。


 英雄王が居ない今、士気は低くかったが軍勢の兵力もあって、勢いでここまで進撃が出来た。


 これは決戦だ。決戦とはつまり、勝利か、敗北しかない。2つに一つだ。負ければ人はもはや絶滅するだろう。


 それだけはならない。秩序を保つ為には踏みとどまらなければならない。


 王都が襲われたのであれば、今すぐに引き返すべきだろうが、眼前から向かってくる敵に背を向けることは愚策だ。ライヤはすぐさま頭を切り替る。眼前の敵を倒し、王都へ帰る。そうするしかないと言い聞かせた。


「お前ら、踏みとどまれ。我らには神の加護がある。臆するな」と騎士達の方へ振り返りを説得する。


 しかし、黒門の門から見える薄暗い霧の中、重々しい足音とその音の主が見え始めたとき、一人の聖騎士が叫んだ。


「ご、ゴリアテだぁぁああああ――――――ッ!!!」と指を差して叫んだ。


 その一言だけで、崩れそうだった士気が落ち、装備していた盾や剣を投げ捨てて逃げ始める。一瞬にして、陣形が崩壊した。


「脱げるな!! 腰抜けがッ」


 ライヤの怒号も虚しく、我先にと騎士や兵士らが逃げていき、姿が遠のいていくのを見て、彼女は覚悟した。


「くそが……くそったれが。 化け物がッ けだものがッ ブサイクがッ」


 剣を構え、剣柄を強く握りしめる。


「くそがぁあああああーーーーーッ!!!!」


 ライヤは黒門の方へと前に出てゴリアテに剣をかざし走り始めた。背丈が5メートルはあろうかというゴリアテの軍団が黒門からゆっくりと恐怖心と共にやって来るのを目の当たりにしてもまだ彼女は突き進む。


 逃げる聖騎士達の間を縫ってライヤの元へ若い騎士と一人のまだ幼い王国兵が走り寄って来た。


「待てライヤ! 魔導師も石弓隊も居ない。ここは一旦退くぞ」


 若い聖騎士が駆け抜けるライヤの右腕を引っ張る。


「姉さん! カシダさんの言う通りだよ。逃げようッ!」


姉さんと言うまだ幼い王国兵が左腕を掴む。


「逃げる!? この私が?!!! そんな事を出来るかッ!」


それを拒むライヤは二人の手を振り払おうとする。


「もう、こんなの戦いじゃないッ!!!」

「うるさい!!! 放せ!!!」

「アルカ、無理矢理、連れ行こう」

「はい」

「ちくしょう!離せ、離せぇぇぇ」


 二人はそれを無視しライヤを無理やりひこずっていく。ゴリアテとは巨人の事である。身体は大きく皮膚が分厚い為、通常の武器では通用しない。


 魔導師の攻撃魔法か石弓だけが有効である。しかし、今回はその頼りの部隊が居なかった。


 逃げている最中、後方を確認するもゴリアテは追いつけていなかった。


 ゴリアテは図体がでかいため、歩く速度が遅い。そのため、戦うには強敵だが、逃げるには最適というところだ。


 三人はなんとか逃げることに成功した。


 その頃、ラインライト王国は本当に魔王軍の侵略を受けていた。知っての通り総力戦で王国の戦力はガラ空き状態。抵抗する力もない王国は軽々と城壁を越えられ王都まで攻め入られてしまった。


 英雄王が死んだ今、誰が指揮を執るのか、わからない混乱の中、ラインライト王国は統制がとれず、蹂躙された。殺戮の嵐、悲鳴が上がり、炎が王都を包み込む。


 防衛として、残っていたわずかな王国軍とフェレン第一・第二聖騎士団は逃げ惑う王国の民を守りながら退却するしかなかった。


 燃え広がる王都を丘の上から見下ろす、ラインライト王国の民らは絶望し、崩れ落ちた者もいた。

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