ディナー・バトル
山内 詠さまの企画、「おうちでごはん」に挑戦することにしました。登場人物は例の三バカトリオです。とはいえ、この作品のみで、十分に笑えるかと思いますが。頭空っぽで笑えればいいなと。ではお楽しみくださいませ。
1.
「あのう、クロエ。お願いがあるんですけど。今日の夜は”村”のお母様のところでお泊りしませんか?」
扉のところに立っている魔来子がクロエに頼み込んでいた。
「え? 魔来子さん、何のこと?」
「お母様に御言付とこの荷物を持っていって欲しいんです。揺らすと傷んでしまうので、大切に持っていって欲しいんですけど」
「それは……かまいませんけど」
「持っていくと、それはきっと大変に感謝されて、ご馳走が出てきますよ」
ちょっと小首をかしげるクロエ。金髪が柔らかく動く。そんな様子を見て、魔来子は微笑んだ。
「うれしいですけど、でも、魔来子さんが持っていけば早いんじゃないですか?」
「そうですけど、今夜はお嬢さまの用事を仰せつかってますから、はずせないんです。ですから、クロエにお願いなんです」
「ふうん……わかりました。この荷物を持っていけばいいんですね」
「はい。お母様によろしくお伝えください」
魔来子は手にした小箱をそっとクロエに渡した。
「クロエは行ったの?」
心配そうな瞳で結衣が訊ねた。
「はい。用事を作って、村に行ってもらいました。これで今夜はラバさまと三人だけになりますよ」
「……ん、よしっ!」
こぶしを握り締める結衣。その様子を見て、魔来子が微笑む。
「しかし、大丈夫ですか? なんでしたら、今からでも母屋の料理人さんを――」
「冗談じゃないわよ!」
結衣の端正な眉があがっている。
「だめ。今夜の夕食はあたしが作るの。あたし一人で作って、みんなで食べるんだから。魔来子さんでも邪魔はしないで」
「は、はい。それは仰せのままにしますけど。でも……」
「あたしが言うまではラバに言わないでよ。あたしが言うんだから。これ全部、あたしが作りましたって。どうぞ、お召し上がりくださいませって。わかったわね?」
「はい……」
魔来子の返事を聞いて、結衣はにっこり微笑んだ。そして制服のスカートをひるがえして、玄関を出て行った。
お見送りをした後、魔来子はひそかにため息をついた。
「ほんとに……大丈夫かしら」
「何がー?」
のほほんとした声が後ろから聞こえてきた。魔来子は慌てて笑顔を浮かべる。
「いえ、なんでもございませんわ。ヤーコ……いえ、ラバさま」
「結衣さんは出かけていったの?」
ラバは伸びた黒髪をいじりながら聞いた。
「はい。今夜の用意をするといわれまして」
「へえ、今夜……今夜、何かあるの?」
「あ、いえ……それは言うなということなので、お楽しみにしていてくださいませ」
「ふうん。それじゃあ、楽しみにしてようかな」
「はあ……ところで魔法の修行のほうは順調ですか? 帰ってきてからはしっかりやると言ってましたよね」
「あ……いやあ、やっぱり緊張感のない生活を送ってると、忘れちゃってさあ」
頭をボリボリ掻くラバ。それを見て、魔来子はため息をつく。
「だらしない生活を送っていると、ほんと、怠け癖がつきますよ。これは魔来子としてじゃなくて姉、アンジェリーヌとしての忠告です」
「はいはい。姉さんは厳しいですよね。わかりましたよ」
全然わかっていない声でラバは生返事。そして部屋の中へ消えた。残された魔来子がまたため息をつく。
「こっちはもともとナマケモノというか、まあ、急には直らないというか。問題はとにかく、今夜ですわ」
魔来子は眦を決すると、食堂に入っていった。
2
「えっと、えっと、えっと……いい? もし笑ったら、殴るからね」
食堂のテーブルに着いたラバはごくりとつばを飲み込んだ。
「わかってます。結衣さん。絶対に笑いません。っていうか、殴られるなら笑えません。で、何なんですか?」
「えっと……その、なんでもないというか、ちょっとした気の迷いっていうか……いえ、間違いってわけじゃなくて、でもどうしてもしたいのかって言えば、そうでもないというのか、……だからといってやる気がないとかそういうんじゃないんだけど、……どう言えば、いいのかなあ……」
頬を淡く染めて要領を得ない話をする結衣の様子を見ながら、ラバは思っていた。
(かわいい。いつ見ても)
結衣はいつもの制服の上に、清楚な白いエプロンをつけている。ピンクの花がワンポイント。長い髪の毛はこれまた白のバンダナで抑えていた。
(似合うんだよねー。結衣さんは何着ても)
そんな目で見ているラバの目の前で結衣はテーブルにこぶしを打ちつけた。その音でラバは飛び上がる。
「とにかく! あたしがいいっていうまでは、ここに座って、おとなしく待ってるの。わかった!?」
「あ、は、はい! わかりました!」
つい、条件反射でラバは返事を返した。結衣は笑顔を返すと、キッチンに向かう。それ以上の攻撃がなかったことで、安堵の息をつく。
(って、いったい結衣さんは何をしようというんだ?)
そっと結衣の後姿をのぞきこむ。結衣は調理台の上にお皿や材料を並べている。たちまち調理台の上は一杯になった。なにか本を覗き込みながら、お鍋やフライパン、そして包丁に調味料をさらに取り出している。
しゃがんだり、時には四つんばいの姿勢をとる結衣。スカートと同じぐらい短いエプロンは太ももからお尻を隠すことができない。ラバの目にはスカートの奥の下着まで見えていた。
そんな眺めを楽しみながら、ラバはふと疑問を覚えた。
(あんなに並べて、何を作るんだろう?)
村で生活していたときのことを思い出す。今は亡き父様と笑顔で話す母様はてきぱきと調理をこなしながら、簡単でも、とてもおいしい料理を作っていた。ホクホクのお芋。こっちの緑茶に似た飲み物。時にはお肉もあったなあ。焼きたてで油がジュージューいってて、熱いなんていいながら夢中で食べたよなあ。ああ、父様の笑顔。忘れられません。
派手な音でラバは夢想から目覚めた。台所では結衣が鍋をひっくり返していた。そして材料が四方八方に飛び散っている。
「うわ……」
ラバが手伝おうと立ち上がったとき、「こないで!」
結衣の叫び声でラバの動きが固まる。
「おとなしく座っていなさいっ! そう言ったわよね!」
「で、でも手伝う……」
「うるさい! こっちくるんじゃない! 来たら足の骨、折るからね!」
ラバはおとなしく座った。結衣はまた本を見ながら、材料を用意しだす。包丁を持っても要領を得ない。今にも指を切りそうで、ラバは不安になってくる。
(母様は俎板の上で調理してたのに、どうして結衣さんは空中で切ってるんだ?)
飛び散る材料。乱暴にかき集めると、鍋に放り込む。そしてレンジ台のスイッチを入れる。
(何を作ってるんだ? いや、作るつもりなんだ? いや、そもそも料理なのか?)
ラバのお尻がムズムズする。何かいやな予感がする。もう一度、ラバがお尻を浮かしかけたとき、その肩に手がかかった。
「お座りくださいませ。ラバさま。でないと、本当に結衣様は無慈悲な一撃を加えるおつもりですから」
「姉……魔来子さん」
魔来子はラバの隣のいすに腰掛けた。
「で、でも、魔来子さん。結衣さんの様子を見てたら、そんな呑気なこと……」
「とにかく、お嬢さまが見ていろとおっしゃるのですから、仕方ありません。二人で見守りましょう」
そういう二人の前で、鍋が激しく音を立てた。慌てて水を入れる結衣。そして、鍋が水蒸気爆発を起して吹っ飛んだ。
3
散在する材料。へこんだ鍋。台所は何が何やらわけの分からない状態になっていた。
全自動消火栓が機能して、火災にはなっていなかった。その代わり、あたり一面に消火剤が噴霧されている。結衣さんまで灰色に覆われていた。
「いったい、何をしようとしていたんですか? 結衣さん」
涙目になった結衣は沈黙。その代わりに魔来子が答えた。
「お嬢さまは、手作りの料理を……」
「魔来子さんっ!」
結衣の制止で魔来子の声が止まる。
「自分で、自分で言うから……。その、ラバに、あたし、あたし、あたし……料理……、食べて…………」
結衣の右手が拳を作ると、ラバの顔面に炸裂した。
「ゆっ!……結衣さん、いったいなにを……」
生温かい液体が垂れる鼻を押さえながらラバがうめいた。
「うるさいっ! なんで、なんで、あたしが……こいつに、こいつなんかに、手料理なん……」
魔来子がティッシュをラバの鼻に押し込みながら、笑いを押し殺している。
「お嬢さま、いい加減になさいまし。ご自分に正直に言わないことには、気持ちが相手に伝わりませんよ」
魔来子の含み笑いが結衣の逆鱗を触ったらしい。瞳が魔来子をにらみつけている。
「正直ですって! 魔来子さん、今、正直って言いましたわね!」
「あ、はい。お嬢さま。言いましたが、それがなにか?」
「魔来子さんこそ、あたしに正直に言うことがあるんじゃないですか」
結衣の言葉に魔来子は首をひねっている。
「私は……いつも正直でございますが。お嬢さまに対して、ウソをつくわけがございません」
「ほら、もうウソついてる」
結衣の指摘に、今度は眉をひそめている。
「そんな、何をおっしゃっているのか、分かりません。いったい何を理由にして、そのようなことを」
「いいわ、そこまで言うのなら、はっきり言ってあげる。今日、この台所に入ったら、気がついたの」
結衣は散らかった台所を指し示す。
「綺麗だったわ。塵一つない、汚れ一つ、傷一つなかったわ」
「当然でございます。そのように掃除をしておくのが、メイドの務めでございます」
「綺麗過ぎたわよ。使い込んだ調理器具とか、いくら綺麗でも汚れとか、シミとか、傷とかできるはずよ。汚いって意味じゃなくて、長い間使い込んでくれば自然にできるものよ。そんなのもないなんて、魔来子さん、ここで料理したこと、ないんじゃなくて?」
結衣の言葉に魔来子は押し黙った。
「魔来子さん、母屋の料理人に作っていただいた料理を出しているだけなんじゃなくて? 食器とか食具を並べていただけなんじゃなくて?」
「な、なにを……根拠に、そのような……」
「いろいろ教えてもらったわよ。戦い方とか、身の守り方とか。銃器も刃物も小火器の扱い方も。救命方法もサバイバル術も。でも料理の方法は教えてもらった覚えがないわよ!」
魔来子はぐいと顔を上げた。
「それは結衣さまがご自分で勉強なさることですから」
「ど、どういう意味よ。それは」結衣は目を丸くしている。
「ですから、結衣さまご自身が勉強するおつもりにならない限り、教える意味がないということです」
鳩が豆鉄砲を食らった状態で、結衣は言葉が出ない。
「やっと勉強する気持ちになられたのですから、これから勉強すればよいことなのです」
「こ……この、黙って聞いていれば、屁理屈を……」
(黙って聞いているのは、僕だけじゃないか?)そうは思っても、ラバは口にできない。
「小さなうちから習い事はやったほうがいいって言ってたじゃない?」
「小さなうちから包丁などの刃物を持つのは危険でございます」
「包丁は危険で、ナイフはいいの? 火器、銃は全然オッケーなの!?」
「身を守るために必要なものは当然でございます」
(かみあってねー!)ラバのいやな予感は、もはや予感ではなく現実のものとなりつつあった。結衣の靴が床を踏み鳴らした。その手には包丁が握られている。
「そうね。じゃあ、いったいどれくらい危険なものなのか、身を持って感じてもらいましょうか」
「あら、お嬢さま。それはなんと不敵なご発言でございましょう。取り消されるのなら、今のうちですよ」
「取り消すなんてとんでもない。魔来子さんこそ、詫びを入れるのなら今です」
「侘びですって? お嬢さまがまだまだひよっこだということを、これから証明いたします」
ラバの目の前で、二人の女性が間合いをつめた。どちらからともなく、動き出す。金属音がした。結衣の包丁をはじき返したのは、魔来子が手にしたナイフ。続けざまに結衣が飛びかった。立て続けに凶器が音を立てる。二人の足が器用に床に散らばった材料を蹴散らす。
床にこぼれていた消火剤で、一瞬魔来子のハイヒールが滑った。その隙を見逃さず、結衣が襲い掛かる。その包丁をはじき返したのは、魔来子の手にしたフライパン。
「お嬢さま、鋭くなりましたわね」
「まだまだこんなものではありませんわよ」
魔来子がフライパンで包丁を叩き落した。器用にフライパンを突き、滑らせ、叩きつけてくる。結衣はそれを紙一重で交わす。
(ダメだよ、こんなの、ダメだよ!)ラバは必死で叫びたかった……けど、声が出ない。
(どうしたら、こんなの、止めさせることができるんだ? どうしたらいいんだ?)二人の対決を見守りながら、ラバは考えた。(どっちも傷つけないようにして、止めさせる方法なんて……)
「い・った・い、お・嬢・さ・ま・は――なにを、お作りに、なる、おつもり、だったの、です、か?」
激しい攻撃の合間の魔来子の問いかけ。
「なにをって――肉じゃがよ! 男がイチコロになるって言うじゃない! だから、ラバに――!」
結衣の動きが止まった。その瞳がラバを見つめる。ラバが見つめ返すと結衣の顔がみるみる真っ赤になっていく。
「あ、あ、あたし――、その、その、そんな――」
「隙あり!」
魔来子が掛け声とともに、結衣に足払いを食らわした。たまらず、倒れこむ結衣。その胸元にフライパンを突きつける。
「お嬢さま、まだまだ甘うございますわね。戦闘中に精神面の不安定さをさらけ出すようでは勝利は覚束ないものでございますわ」
「く……ひ、卑怯よ」
「敗者には何も残らないと今まで何度、言い聞かせたことでしょうか」
(や、やばいよ。このままじゃあ結衣さんが負けるじゃん)
ラバは二人の会話を聞きながら、なにか打開策がないか考えた。
(えっと、えっと、この熱い戦いを……熱い? そうか、熱いだ!)
ラバは炎の魔法を小声で唱えた。その炎が魔来子の頭上に灯るように。その明かりに気がついた魔来子が上を見た。そしてそこに消火剤が噴出してくる。
「ぶ、ぶへええ、ご、ごっほほほ」
思わず咳き込む魔来子の足を払いのけると、結衣は立ち上がって強烈な回し蹴りを食らわした。防御の姿勢もとれずに魔来子は散らかった台所の床を吹っ飛んでいく。
「やった! やりましたね、結衣さん」
「ラバのおかげよ。魔来子さんに勝ったのは初めて!」
二人は手を取り合って、喜んだ。そのことに気がつくと、結衣は真っ赤になっている。
「あ、あの、あの、ラバ。えっと、今日はラバに……手料理……肉じゃが……。でも、こんなになっちゃって……」
そっとラバが結衣の肩に優しく手をかけようとしたとき、その背中に電流が走った。
(ヤバイ!)
慌てて魔来子を見る。いつの間にか復活した魔来子が両手を広げて、呪文を唱えていた。その瞳は虚空を見つめ、狂気の色に縁取られている。
「……地の精霊、宙の精霊、我が命を聞け。雷よ、気に満ちよ。怒りとともに、あらゆるものを破壊せよ……」
「光の盾!」
次の瞬間だった。魔来子の電撃が当たり一面を真っ白にした。
4
「い、い、いいかげんになさいませ!」
三人の前には頭から湯気を立てている年配の女性。
「ミセス……マイヤ。いえ、今回のことは……」
「魔来子さん!」
「は、はいっ!」
魔来子が直立不動の姿勢をとる。それを結衣とラバがあっけにとられて見ていた。
「魔来子さんがそんな態度をとるなんて……」
「家政婦総長なんですよ、ミセス・マイヤは。ここの女中のトップです。魔来子さんでも頭が上がらない唯一の人ですから」
小声で話す二人を無視して、ミセス・マイヤは魔来子に小言を言っている。
「多少のことは目をつぶってきました。今までも何かと庇ってきたつもりです」
「は、はい。ミセス・マイヤ。そのことは大変有り難く感じております……」
「それなのに、いったいこの有様は何ですか。この屋根にあいた大穴はいったいどういうことなんでしょうか!」
ミセス・マイヤの指差す先。一階の天井を突き破り、二階の屋根に大穴が開いて、夜空が覗いている。鉄板と鉛板を入れ込んだコンクリートの天井も特殊合金属の屋根も、魔来子の電撃は見事に貫いたのだ。もし、ラバの防御呪文が間に合わなかったら、三人とも黒焦げになっていたかもしれない。
発生した火災は自動消火装置と母屋から駆けつけてきた人たちによって消し止められた。しかし消防署や警察の事情聴取など、後始末には散々時間がかかってしまった。やっと外部への説明――それも魔法とは言えず、たんなる不注意による火災ということでごまかしたのだが――を終えると、今度は内部の叱責。ここの全責任を負かされているという家政婦総長のお叱りが待っていたのだ。
「あなたに結衣さまをお任せしたのは間違いだったかもしれません。今からでも――」
「そんなことはありません!」
進み出たのは結衣。
「魔来子さんはあたしのことを心から心配して、大変よく面倒をみてくれています。これはあたしが原因なんです。あたしが魔来子さんに挑んだ結果なんです。だから魔来子さんを許してください」
「……お嬢さま」涙ぐむ魔来子。
ミセス・マイヤは必死で訴える結衣をじっと見つめていた。
「わかりました。お嬢さまがそこまでおっしゃるのであれば、今回の件はそういうことにしましょうか。ただし、条件があります」
「条件……ですか?」
「はい。お嬢さま。この家の修理に入れるのは明日、明るくなってからです。それまで、つまり、今晩はここにお泊まりくださいませ。そして自分達が何をしでかしたのか、十分反省してください。よろしいですわね」
「あ……。はい。わかりました」
結衣、そして魔来子が深々とミセス・マイヤに頭を下げた。それを見て、ラバも慌ててお辞儀をする。
ミセス・マイヤは大きくため息を吐くと、母屋に帰っていった。
三人は星空の見える穴の下、床に腰を下ろした。寒さで震える結衣を囲むように座る。
「すみません。お嬢さま。お嬢さまだけでも母屋のほうにお泊りになっては……」
「いいの。魔来子さん。ほんとにあたしも悪いんだから」
(僕はなにもしてないと思うんですけど)もちろん、口には出せないラバ。その代わりに、
「あの……おなか、空きませんか?」
「あ、結局、夕飯、食べてないんですよね」
「そうでした。なにかないか――この包みは?」
「ミセス・マイヤが置いていったみたいですね」
三人の見覚えのない包みがおいてあった。その中身は――
「お漬物だあ。それとカップ麺!」
三人はポリポリと漬物を噛んだ。そしてさらに結衣さんが沸かしたお湯で寒空に温かいカップ麺。
「おいしいね」
「うん」
「でも、あの、もしかして、これ……これが結衣さんの手料理ってこと?」
「ば、バカにしないで! こんなのを手料理なんて言わないでよ!」
「次は、お嬢さま、ちゃんとしたものを作りましょうね。母屋の料理人に教わって」
「って、魔来子さん、もしかして、料理全然できないじゃないの?」
「全然なんて、失礼な! カップ麺ぐらい作れます」
「それは手料理じゃないです!」
一方その頃、”村”。
クロエが持ってきた小箱を広げていた。そこにはかわいらしいケーキ。
「わあ!」
クロエの母もたくさんのご馳走を持ってくる。
「アンジェリーヌ、いえ魔来子さまから連絡があったの。なんでも今晩は結衣さんがご馳走を造るって張り切ってますから、申し訳ないけど、クロエはこっちに泊めてくださいって。残念かもしれないけど、あたしの料理で我慢してね」
「ううん。お母さんの料理、だーい好きだから」
そういってパクつくクロエ。でもふと、考えた。
(いったい、結衣さんの作るご馳走ってなんだろう……?)
クシュンと結衣がくしゃみをしたのは、それと関係があったかどうかは誰も知る由もなかった。
『魔法少女と呼ばないで』からのお三人様でございます。もし、お暇ならそちらもお読みくださいませ。同じぐらい、バカバカしいかと。
あー、書いてて楽しかった。これまだ、続編が書けそうだな。
次は三人して母屋の料理人のところで修行開始だけど、「冷や奴」で壮絶バトル開始とか。母屋ぶち壊して、追い出される。
次は料理教室に行くけど、そこでもバトル開始で。結局ラバが一番料理がうまくなったりしてね。
いやー、発起人さま、ありがとうございました。感謝申し上げます。
では。