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【モブ武将】松下嘉兵衛は、木下藤吉郎を手放さない!~おこぼれの小大名で終わりたくないので、三英傑を手玉に取ってビッグになろうと思います!  作者: 冬華
第2章 駿河・立身編

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第91話 嘉兵衛は、旧知の者たちと再会を果たす

天文24年(1555年)8月下旬 遠江国引間城 松下嘉兵衛


次郎三郎を総大将とする3千の兵に加わり、俺は今川軍の軍監として、懐かしい引間城に入城した。出迎えた方々の中には、かつて世話になった善四郎様や井伊の殿のお姿もあったが、個別の挨拶は後にすることにして、次郎三郎に続いて広間に入る。


おっ!あれは、源左衛門ではないか。はは……睨んでいる、睨んでいる……。


「引間城主・飯尾豊前守にございます。松平殿……お屋形様の命に従い、我ら遠江の衆も加勢いたしますゆえ、何なりとお申し付け下され」


「これはかたじけない。あに……こほん、軍監殿。では、作戦の説明をよろしく頼む」


「承知仕りました」


ただ、今は与えられた役目を果たすべく、俺は次郎三郎に命じられた通り、此度の反乱討伐における作戦の概要を説明した。一先ず全軍で岡崎城に入って、模様眺めを行うと。


「畏れながら、それは些か消極過ぎるのではありませぬか?」


「井伊殿……」


お義父さんの顔を見て、おとわを妊娠させちゃったことをどう伝えるべきか。その事が頭の全てを支配しかけるが、それは後回しにしてこの問いかけに答える。時を待つのもまたいくさであると。


「生意気な事を申しているのは、百も承知しておりますが……いくさに勝つだけでなく、その後に控える戦後処理の事も考えなければなりません。ですので……」


「軍監殿。仰せご尤もではございますが、時をかければ兵糧を費やすことになりましょう」


そのあたりはどうするのかと訊かれて、俺は即答した。此度の兵糧は今川家で負担するから、気にする必要はないと。


「それは……つまり、我らが用意する必要はないと?」


「そうです。この件については、お屋形様よりお許しが出ておりますのでご安心を」


もっとも、無制限というわけではない。約束を取り付けてくれた備中守様からは、「常識の範囲でな」と釘を刺されているのだ。しかし、それをここで言うのは野暮というものだろう。それにお義父さんも引き下がったし、他から質問も出なかったのでこの話題はお仕舞いだ。


そして、それを待っていたかのように、部屋の中へと酒と膳が運び込まれてきた。宴の始まりである。


「そういえば、松平殿はお屋形様の養女となられた瀬名姫様と来年にでも婚儀を挙げられるとか?」


「はあ、まあ……」


「それなら、我らは兄弟も同然ですな。某の妻もお屋形様の養女でして……」


善四郎様が隣にその奥方様を侍らせて次郎三郎と酒を酌み交わしているのを横目に、俺は井伊のお義父さんの下へ向かおうとした。大っぴらに言うわけにはいかないが、来年の春には孫が生まれるのだ。一発殴られるかもしれないけれども、知らせておこうと思って。


「兄上……」


しかし、それは決別したはずの弟……源左衛門によって阻まれる。


「どうした?」


「実は話があって……」


「そうか。だが、俺にはないな」


散々あちらこちらで人が良いと言われるけれども、裏切った身内に手を差し伸べる程甘いわけではない。何か困っている事があるのかも知らないが……知ったことではない。


だから、「兄上!」と呼び止める声を無視して、お義父さんの下へと改めて向かう。しかし、そのやり取りが聞こえたのだろう。開口一番、「いいのか?」と心配してくれた。


「構いません。すでに縁を切っておりますゆえ……」


「そうか……ならば、儂がとやかく言う事ではないが、それでどうした?」


「実は……」


殴られるだろうなと思いながら、覚悟を決めて俺は伝える。子が来年生まれる事を……。


「待て、嘉兵衛。今何と言った?子が生まれる?待て待て……祝言はまだだよな?」


「はい、申し訳ございませ……ぐふっ!?」


そして、気がつけばヘッドロックをかけられて、俺は呼吸困難に陥る。


「く、くる……」


「おまえはアホか!順番を間違えるなよと、何度も言ったよな?井伊谷を出立する前に!!」


「い、言われました……お許しを……」


もちろん、他の者に聞かれたらスキャンダルだから、お互い小声で話し合っているが……許しを請う俺に、お義父さんは条件を突きつけてきた。それは、産まれた子の名を付けさせろと……。


「い、いや、流石にそれは……おとわが何というか」


「おまえが考えた事にしておけば問題はなかろう?いいよな、もちろん異存はないよな?そうよな、嘉兵衛」


「く、くる……し……」


首を絞める力が次第に強くなり始めて、もうこれ以上はと……俺はついにギブアップして要求を受け入れたのだった。


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